カルガリー/カナダ ~今後も伸びゆく資源の街~

2021年11月26日

カナダ住友商事会社 カルガリー支店
安田 雅哉

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カルガリーとは

カルガリー近郊で見えたオーロラ(筆者撮影)
カルガリー近郊で見えたオーロラ(筆者撮影)

 カルガリーはカナダ西部のアルバータ州に属し、州都のエドモントンに並んで100万人以上の人口を誇る都市です。カナディアンロッキーへの玄関口ともいえる位置にあり、近郊には世界的に有名なバンフやジャスパーがあります。1988年には冬季五輪が開催され、フィギュアスケートの伊藤みどり選手が活躍した地です。例年なら9月頃に初雪が降り、本稿執筆時点(11月)には雪が積もってスキー場もオープンし始める頃ですが、2021年は少し様子が異なり、初雪は10月までずれ込み、執筆時点で2度雪が降っただけで、少し冬の訪れが遅いようです。高緯度(北緯51度)に位置し地球の極に比較的近いため、極北まで行かずともタイミングが良ければオーロラを見ることができます。先日筆者も夜空に揺らめくオーロラを目にすることができました。

 

 

在留日本人

朝のカルガリー(筆者撮影)
朝のカルガリー(筆者撮影)

アルバータ州に在留している日本人は7,735人(在カルガリー日本国総領事館統計、令和元年)で、そのうちの約半数の3,812人がカルガリー市内に住んでいるそうです(外務省「海外在留邦人数調査統計」令和元年)。カルガリー市内には、筆者のような日本から駐在している日本人は日本領事館員を含めても50人ほどで、その家族を含めても数は大きくなく、さまざまな理由で当地に在住する日本人がいかに多いか推し量れます。日本人会館では、在住日本人を中心に、日本の伝統的な踊りを練習する活動などが定期的に実施されています。

 

 

 

 

 

天然資源の宝庫

カルガリータワー(筆者撮影)
カルガリータワー(筆者撮影)

 カナダは天然資源の宝庫です。その中でも原油や天然ガスはカナダ西部に集中しており、石油・ガス産業はアルバータ州の重要な基幹産業です。一方で、世界の潮流が脱炭素へと環境への配慮に大きくシフトする中で、化石燃料はそのありかたが問われ、ビジネスの変革を求められています。この潮流の変化をビジネスチャンスと言わんばかりに、再生可能エネルギーや天然資源を扱うベンチャー企業も当地には数多く誕生しています。まるでかねて存在する超大企業に挑戦するかのようです。その大企業も時代の変化を感じてビジネスモデルを変えようとしています。企業それぞれが、思い思いの夢を描き行動するそのさまは、変わりゆくカルガリーという街のダイナミズムを感じます。州政府や連邦政府も強力に民間企業を後押ししています。

 

 

連邦政府と州政府

 カナダは連邦国家です。世界2位の広い国土に13の州、準州があり、各州で独自の政策を実行しています。オタワにある連邦政府と各州政府の間には、上下関係があるわけではなく、役割を分担しあっています。2021年11月時点で連邦政府は自由党、アルバータ州政府は保守党が政権を担っており、ときには反目し、ときには協力しながらそれぞれの政策を実施しています。連邦政府、州政府それぞれが内閣や議会をもち政治を進めていく様子は、日本のように東京を頂点に一極集中した中央集権体制を見てきた筆者にとっては非常に興味深いところです。

 

 

未来に向けて

 カルガリーは2015年ごろからの世界経済減速、特に2020年からの新型コロナウィルスのあおりを受けて長らく経済が低迷していました。その結果、商業ビルのオフィス空室率は全カナダの中でトップ、失業率も8%を超えるなど、厳しい状況が続いてきました。しかしながら、最近は大手流通企業がこの地にデータセンターを開き、大手IT企業が本社を設置することを決めるなど、街の経済活性化にとって明るい材料も少しずつ出始めてきています。

これからのカルガリーに大きく期待できそうです。

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