トロント/カナダ ~カナダの文化・経済の中心地と言われるほど、活気に満ちた多様な都市~

2023年06月06日

住友商事株式会社 トロント本社
マドゥ・シカンド

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CNタワーを中心とするトロントの高層ビル群、オンタリオ湖からの眺め (撮影:Madhu Sikand)
CNタワーを中心とするトロントの高層ビル群、オンタリオ湖からの眺め (撮影:Madhu Sikand)

 トロントは、人口293万人を超えるカナダ最大の都市で、北米では4番目に大きな街です。人口の半数近くが移民で、世界的に有名なグラミー賞受賞ラッパーであり、最も有名なトロント・アンバサダーでもあるドレイクが作った'6ix'という愛称でも知られています。またこの愛称は、合併してトロントになった6つの行政区と、都市のエリアコードである416、647のことも意味しています。

 

 

 トロントの沖合に浮かぶいくつかの島々は、現在はフェリーや2015年に開通した歩行者用トンネルで相互通行可能ですが、もともとは陸続きの半島でした。1852年と1858年の2度にわたる強烈な嵐の際、本土から切り離され、現在イースタン・ギャップと呼ばれる水路が形成され、複数の島になったものです。

 

【経済、教育】

トロント市内中心部2(Photo on Unsplash)
トロント市内中心部2(Photo on Unsplash

 トロントは、カナダのGDPの約20%を占める国内最大の経済圏であり、世界的にも重要な経済の拠点です。トロント周辺の地域も含めると、カナダの工業製品の半分以上を生産しています。トロントは、2009年以降、毎年+2.4%のGDP成長率を記録しており、カナダの全国平均を上回っています。トロント証券取引所は、北米で3番目の規模を誇ります(当社調べ)。

 

 この街は、テクノロジー分野で大きな成長を遂げています。Shopify、Apple、Amazon、Google、Uberなど、大企業の半数が周辺地域を含むトロントに本社を置いています(2019年の「フォーブス・フォーチュン500社」のうち、13社がトロントを拠点にしています)。これらの成長が雇用機会の増加につながり、多様な人々がこの街に集まってきています。

 

 トロント大学(U of T)は、カナダの最高峰の大学であり、コンピュータサイエンスを含む6科目でQS(世界大学ランキング)の科目別ランキングで10位以内に入ります(当社調べ)。教授陣にはロボット工学の分野で世界的に有名な人たちも在籍しています。「タイムズ・ハイヤー・エデュケーション」(高等教育関連のニュースを伝えるイギリスの雑誌)は、トロント大学を「オックスブリッジやアイビーリーグのようなレベルの大学に追いつき、追い越す可能性が最も高い」53校のグループに入れました。

 

【観光スポット】

トロントCNタワーとロイ・トンプソン・ホール(撮影:Madhu Sikand)
トロントCNタワーとロイ・トンプソン・ホール(撮影:Madhu Sikand)

 トロントの有名な電波塔であるCNタワーには、「世界一高所の」ワインセラーがあります。地上351メートルにありますが、地下に作られる一般的なワインセラーのように設計されており、1997年の開業時にはギネスブックに掲載されました。CNタワーは現代世界の七不思議の一つといえるでしょう。

 

【自然と文化】

 近代的な建築物が建ち並ぶ個性的な都市景観の中、トロントには1,000万本以上の樹木があり、自然の息吹が感じられます。最も古いものは、ノースヨーク地区にある樹齢300年のレッドオークであるといわれ、最近、この木が生えている土地を含む住居が売りに出され、メディアで話題になりました。この木を守るために、トロント市が介入しました。

 文化面では、オンタリオ美術館や王立オンタリオ博物館など多くの博物館や美術館があります。トロント国際映画祭をはじめとする各種の祭典の開催地としても知られています。

 トロントは、バスケットボール、フットボール、ホッケー、野球、ラグビー、サッカー、ラクロスの7つのメジャースポーツのチームがあるカナダで唯一の都市であり、スポーツファンにおすすめの都市です。2023年には、2019年のNBAチャンピオンであるトロント・ラプターズを讃える18フィート(約5.5メートル)の像が市役所に建立されました。

 また、トロントは音楽産業でも活況を呈していて、ドレイク、ショーン・メンデス、ジャスティン・ビーバー、ザ・ウィークエンドなど、カナダ国内はもとより世界的に有名なアーティストが数多く活躍しています。

 

【日本とのつながり】

 トロントと日本は深くつながっています。近年、トロントでは日本食や日本文化への関心が急速に高まっており、日本食レストランが充実しています。トロントには、カナダ初のミシュランガイドで2つ星を獲得した卓越した寿司職人、齋藤正樹氏の店をはじめ、10軒以上のミシュランの星付きレストランがあります。ミシュラン1つ星を獲得した12軒のうち、4軒が日本料理の店です。

 市内には、1963年に設立された大規模な日本人コミュニティがあります。日本文化の発信地である日本カナダ文化センターには、博物館、図書館、日本庭園があります。また、トロントが属するオンタリオ州と日本との貿易関係を見てみると、2022年の貿易総額は、約136億カナダドル(約1兆4,212億円)で、これは日本とカナダとの貿易総額の約39%を占めています(カナダ統計局のデータより)。

CNタワーの夜景(Photo on Unsplash)
CNタワーの夜景(Photo on Unsplash

 トロントは、スポーツ、多様な文化、そしてCNタワーや王立オンタリオ博物館などの世界的水準の建築物と、トロントを象徴する自然公園のハイパークやトロントの沖合に浮かぶ島々があいまって、個性的なたたずまいを醸し出しています。また、絶大な人気がある日本食レストランなど、娯楽や「食」も充実しています。NBAトロント・ラプターズやMLBブルージェイズを熱狂的に応援するスポーツシーンの存在や、多岐にわたる活発な娯楽シーンを堪能することができるトロントの文化は、多様なコミュニティをひとつに結びつけています。

以 上

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