ボゴタ/コロンビア ~ゴルフ場からみたコロンビア社会~

2015年02月27日

コロンビア住友商事会社
美藤 斗志也

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ボゴタの街 ~正面中央(やや左)が当社の入っているビル~ (筆者撮影)
ボゴタの街 ~正面中央(やや左)が当社の入っているビル~ (筆者撮影)

 コロンビアといえば、昨年のFIFAワールドカップで日本のグループリーグ敗退を決定づけた試合を思い出される方が多いかもしれません。昨年、日本の現職内閣総理大臣として初めて安倍首相がコロンビアに来訪され、また、皇室として初めて高円宮久子様も、お越しになりました。官民の人事交流は盛んになっていますが、一般の人にとってコロンビアは未だ、遠い国との印象が強いと思います。

 

 コロンビアは、南米の北端に位置し、北はパナマ、南はエクアドル、ペルー、ブラジル、東はベネズエラの5か国に接しています。人口は、南米第2位で4,800万人、一人当たりのGDPは8,394ドル(2014年IMF推計)。同国の首都が、私が駐在しているボゴタ市です。ボゴタは、アンデスの山に囲まれた2,600メートルの高地にあり、雨期と乾期はあるものの、四季はなく、年間を通して、気温が摂氏15度程度の常春です。

 

 

 

 ボゴタはゴルフ天国です。空気が薄く、飛距離が出るため、誰もが、ロングヒッター気分が味わえ、300ヤードも夢ではありません。ボゴタ近郊に、15以上のゴルフ場があり、1年12か月ゴルフが楽しめます。土日のビジターのプレー代金は、おおよそ70ドル程度ですが、当国においてゴルフはまだまだ庶民には敷居が高いスポーツです。

 

標高2,600mでの爽やかなゴルフ (筆者撮影)
標高2,600mでの爽やかなゴルフ (筆者撮影)

 当地のゴルフ場は、敷地内に入る際に、まず、身分証明書を提示が求められ、身分確認を行います。敷地内に入ると、ゴルフ場のほか、乗馬のための馬場、テニス場、プールやジム、レストラン、美容室・理容室など様々な施設があり、まさに富裕層の社交場となっています。

 

 ゴルフは、通常、カートは使用せずプレイヤー一人に、キャディーが一人つきます。キャディーには、1等から3等までの等級があり、シングル・ハンディキャップを持っているような者もいれば、バッグを担いでもらうのが気の毒なくらいのお爺ちゃんもいます。キャディーフィーは、おおよそ20ドル程度で、時給換算3~4ドル程度です。すべてのキャディーに共通していることは、たとえマナーの悪い人がいても、プレーが遅い人がいても、注意しないこと。また、ゴルフ場内に、高級な玩具を持ち、レストランのテラスやゴルフ場敷地内を走り回り、遊びまわっている子供がいても、従業員が注意をすることもほとんどありません。わがままなメンバーとトラブルが生じれば、職を失う可能性すらあるからです。

 

 

 

モンセラーテの丘から臨んだボゴタ市街 (筆者撮影)
モンセラーテの丘から臨んだボゴタ市街 (筆者撮影)

 日本でも、近年は、格差拡大が指摘されていますが、南米では、日本よりもはるかに格差が大きく、ゴルフ場においても、この社会問題を垣間見ることができます。「駕籠に乗る人、担ぐ人。そのまた草履を作る人」という言葉のごとく、これを役割分担を基礎とする調和社会と捉えることもできますが、貧富の格差はコロンビア経済の大きな問題のひとつで、社会の安定を確保していくうえでも政府にとって大きな課題となっています。コロンビア政府は、治安を回復し積極的に外資を取りこむなどして経済を活性化し、失業率を下げ、教育の充実を図り、低所得者層に無償あるいは安価で住居を提供するなどの政策を実施し、一定の効果が出たと発表していますが、格差の解消は容易なことではありません。

 

 

 このような格差の問題はありますが、コロンビアは今、昔日のテロや暴力の問題を国民の力を結集して乗り越えつつあり、欧米やアジアの国々と自由貿易協定を結び、恵まれた石油・石炭をはじめとする鉱物資源を利用して、高度経済成長を実現しようとしています。しかし、何と言っても、コロンビアの魅力は、コロンビア人であり、私たちのような外国人にでも、誰もが、気軽に、優しく接してくれることです。 

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