サンパウロ/ブラジル ~ブラジルの未来を創る~

2018年12月18日

ブラジル住友商事会社
松﨑 治夫

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 ここサンパウロでは、「雨が降ると信号機が壊れる」「これからブラジルで売れる車は四輪駆動車だ。洪水に備えないと」など、自国の交通インフラや社会インフラの脆弱さを皮肉る自虐的なジョークがよく聞かれます。また、汚職をした国会議員が他の議員の汚職の規模を聞いて「私はまだまだ未熟だった」と言った、というような政治風土を風刺するネタにも事欠きません。

 

 

●大国ブラジル

ブラジルにおける水事業/リオグランデ・ド・スル州 下水処理場(©Sumitomo Corporation)
ブラジルにおける水事業/リオグランデ・ド・スル州 下水処理場(©Sumitomo Corporation)

 南米大陸の約半分の面積を占めるブラジルは、地平線まで見渡す限り広がる大草原や大農園、アマゾンの熱帯雨林のジャングル、リオデジャネイロに代表される風光明媚(めいび)な海岸線、といった多様性に満ちた国土で世界5位の面積を誇ります。総人口は2億700万人(2017年)で、こちらも南米の約半分です。移民を受け入れ、人種や民族が混ざり合ってきた長い歴史は、楽観的で躍動感に溢れ、感情豊かな国民性の源になっています。また、鉱物資源・エネルギーや豊かな土壌・水資源など、多くの産業の成長に必要な要素を備えており、人材の多様性や温暖な気候と相まって力強い成長の可能性を秘めています。

 

 一方で、政治や経済が一向に安定しない、治安が悪い、一部の富裕層を除くと教育水準が低い、インフラ整備が不十分、といった多くの問題を抱えており、国のポテンシャルを十分に発揮するのは難しいのでは、という意見も、特に海外から、よく聞こえてきます。しかし、現地でじっくりと周りを見わたし、いろんな人達と話をしてみると、多くのブラジル人が真剣に課題に立ち向かい、徐々に変身を遂げようとしていることが肌で感じられます。

 

 

●ブラジルのビジネスリーダーと共に

 ブラジルはこれから情熱にあふれる夏を迎えますが、10月の大統領選では国を挙げて熱戦が繰り広げられました。その結果、過去13年間続いてきた労働者党政権が敗れ、公約に財政健全化、国営企業の民営化などを掲げた保守派のボルソナーロ氏が当選しました。元軍人で極右の危険な人物と見る向きもありますが、主要閣僚に経済や法律などの専門家を積極的に迎え入れるなど、現実に即した柔軟な政治手腕に期待する声も聞こえてきます。予断は許しませんが、国民の間でも、日に日に楽観的な見方が強まってきているように感じられます。

 

ブラジル/サンパウロ州におけるバイオマスペレット製造事業(©Sumitomo Corporation)
ブラジル/サンパウロ州におけるバイオマスペレット製造事業(©Sumitomo Corporation)

 われわれが日頃付き合っているブラジル経済界は、「建国200周年の2022年までの戦略マップ」を策定し、自由貿易の推進、積極的なインフラ投資などを通じて持続的な成長路線を実現しようとしています。住友商事は、地元の有力企業や優秀なパートナー企業と一緒になって、環境・水・農業・鉱物資源・インフラといったさまざまな基幹産業に関連する事業に取り組んでいます。パートナー企業と話をすると、多くの経営者が長期的な視点で新たな価値を創造すべく、諸問題の解決に正面から立ち向っていることが分かります。まさに住友商事の経営理念と合致する姿勢、考え方です。

 

 われわれはこうしたビジネスや事業をブラジルのみならず南米全体に広げていきたいと考えています。南米では期待通りのペースで全てが順調にいくことはまずありません。その国や地域の文化、歴史、ニーズをきちんと理解した上でしっかりと考え、じっくり腰を据えて諸問題を解決しながら、さまざまなステークホルダーと共に持続的に成長してゆきたいと考えています。

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