過去最高を記録した企業向けサービス価格

2026年01月28日

住友商事グローバルリサーチ 経済部
鈴木 将之

日本銀行によると、2025年の企業向けサービス価格指数は前年比+3.0%となった。2025年の企業向けサービス価格指数は2024年(+3.2%)に続き、2年連続で3%台の伸び率になった。3%台が続いたのは1989年(+4.5%)、1990年(+4.1%)、1991年(+3.0%)の3年連続以来のことだった。企業向けサービス価格はB to Bのサービス価格、すなわち川上のサービス価格であり、この企業間取引価格はその後、川下の消費者物価指数に転嫁されるため、その動向が注目されてきた。

 

2025年の企業向けサービス価格指数(2020年=100)の水準図表 物価指標(111.0)は1993年(110.7)を上回って、32年ぶりに過去最高を更新した。過去を振り返ると、この価格指数は1993年に一旦ピークをつけてから低下に転じて、底になる2012~13年(ともに92.5)まで16.5%下落した。販売価格であるサービス価格を低下させるためには、生産性が向上したり、原材料の費用、とくに賃金が低下したりすることが必要になる。この間、生産性の向上がなかったとは言わないものの、雇用環境が悪化したり、非正規労働者比率が上昇したりしており、サービス価格低下の原因はあまり好ましいものではなかった。

 

企業向けサービス価格は2023年から上昇に転じてから、その傾向が続いている。現行の基準である2020年の100に至るまで2013年の底から+8.2%上昇した。さらにそこから2025年にかけて+11.0%上昇して過去最高を更新した。足元にかけてサービス価格の上昇は、2022年にかけての円安・ドル高の為替要因や原材料高に加えて、それ以降の賃上げペースの加速によってもたらされたと言える。

 

原材料価格の上昇ペースには一服感が見られるものの、原料高の悪影響が足元では残っている。企業向けサービス価格指数が+3.0%で同じになった1991年と2025年を比べると、企業向けサービス価格指数のうち生産額に占める人件費率が相対的に高い「高人件費率サービス」は1991年に+4.5%、2025年に+3.3%だった一方で、「低人件費率サービス」はそれぞれ+2.2%、+2.6%だった。足元の方が高人件費率サービスの価格上昇ペースは緩やかなものにとどまっており、足元の賃金上昇ペースやその販売価格への転嫁は1991年ほどではない。一方で、低人件費率サービスは足元の方が高く、原材料高の影響が相対的に大きくなっている。実際、B to Bのモノの価格である国内企業物価指数は1991年に+1.0%、2025年に+3.3%と足元の方が高かった。

 

今後、原材料高の物価上昇圧力は弱まると予想される。円相場がコロナ禍後のように1ドル=110円前後から150円超まで円安・ドル高になったような下落は、今後期待し難い。また、原材料高が継続するとみられるものの、2022年のような高い伸び率にはならないだろう。

その一方で、原材料高の販売価格への転嫁や賃上げがどの程度継続するのかが注目される。日銀「短観」から、企業が販売価格の引き下げに前向きな姿勢を維持していることがうかがえる。その一方、2026年度春闘でも高めの賃上げが期待されるとはいえ、大幅に上昇するわけではないと予想されている。2026年も企業向けサービス価格が上昇傾向を保つものの、2025年から上昇ペースが減速する可能性がある。デフレ脱却への道筋はなかなか見通し難い。


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