デイリー・アップデート

2024年5月8日 (水)

[パキスタン] 5月3日、民営化委員会が発表した通知によると、国営航空会社のパキスタン国際航空(PIA)の売却に関する関心表明の提出期限が5月18日まで延長された。当初の期限は5月3日であったが、2日の会議を経て、民営化委員会の理事会が期限延長を承認した。同会議に関するプレスリリースには、これまでに既に10社の企業がPIAの株式取得に興味を示しており、これらの企業からの要請により期限が延長されたと記されている。PIAの民営化を決定することは、パキスタンの財政健全性と国際的な信用に重要な意味を持つ。PIAの民営化が成功すれば、国際通貨基金(IMF)とのさらなる議論の道が開け、必要な財政支援へのアクセスを可能にし、持続可能な経済成長を促進することができるとみられる。

[ユーロ圏] EU統計局(Eurostat)によると、3月のユーロ圏の小売売上高は前月比+0.8%と、2月(▲0.3%)から反発、2か月ぶりの増加だった。内訳をみると、食品(+1.2%)とガソリン(+2.0%)が2か月ぶりに増加し、全体をけん引した。また、小売売上高の前年同月比は+0.7%となり、2022年9月(+0.3%)以来のプラスだった。これまで切り下がってきた小売売上高の水準は一旦反転した。足元にかけての原油高が懸念されるものの、物価上昇率も縮小傾向にあるため、小売の逆風は弱まりつつあるようだ。

[パナマ] Marine Trafficのデータによると、2024年4月にパナマ運河を通航した船舶は、前年の1,026隻から739隻に減少したが、2月の692隻からは増加した。運河が使用する貯水池のガトゥン湖は2023年6月に記録的低水位となり、2024年3月までその状態が続いたが、5~12月の雨季には水位は2メートル以上、上昇するとみられている。国際海運に混乱をもたらしたパナマ運河の干ばつについて調査したWorld Weather Attributionの報告書によると、2023年のパナマの年間降雨量は平年を▲26%下回り、過去3番目に乾燥した年だった。干ばつは地球温暖化ではなくエルニーニョに起因し、航行制限は住民への水供給を優先したことも一因となった。今後もエルニーニョの年は海運の制限を余儀なくされる可能性がある。

[ナミビア] 5月6日、世界銀行はナミビアの再生可能エネルギー(RE)プロジェクト向けに、総額1億3,850万ドル(約200億円)の融資を承認したと発表した。プロジェクトは国営電力公社・ナムパワーが実施し、送電線整備、蓄電システムの開発、ナムパワー向け技術支援が含まれる。日本の2.2倍の国土を有するナミビアは、人口密度がアフリカで最も低く(1平方キロメートルあたり3人)、国土のほぼ全土が乾燥地帯のため、豊富な太陽光・風力発電のポテンシャルを有しているものの、現状、電力の6割前後を輸入に依存している。このRE開発の潜在力を背景に、EUおよび欧州企業らは同国でのグリーン水素産業開発におけるパートナーシップを強化している。

[米国] シナジー・リサーチ・グループによると、2024年第1四半期の企業のクラウドインフラストラクチャサービスへの支出は、世界で760億ドルを超え、前年同期との比較で21%増加したという。サービス提供企業の動向からはAmazon、Microsoft(MS)、Googleがビッグ3で、市場シェア最大のAmazonが31%、MSは25%、Googleが11%でそれを追うという構図になっている。Tier2のクラウドプロバイダーの中では、Huawei、Snowflake、MongoDB、Oracleなどの成長が著しい。地理的に見ると、最大市場は米国だがアジア地域が最も力強い成長を遂げており、インド、日本、オーストラリア、韓国はいずれも前年比25%以上増加で成長している。

[米国] 5月6日、ブリンケン国務長官はサンフランシスコにて、これからの米国技術外交について演説を行った。米国の産業競争力、そして国家安全保障上、重要な技術領域として先端コンピューティング、人口知能(AI)、バイオテクノロジーなど6分野を挙げ、これらの利活用をめぐる国際的なガバナンス体制構築に向け、外交努力を傾けると述べた。先端・新興技術が専制主義国によって人権侵害などに悪用されることを防ぐべく、先進民主主義国、グローバルサウス諸国との連携を図る姿勢を打ち出した。

[米国] バイデン大統領は4月24日に米議会で可決された608億ドルの対ウクライナ追加軍事支援等が盛り込まれた総額650億ドル規模の包括的対外支援追加予算案に署名した。同法案は成立し、米国による弾薬、兵器、装備品の対ウクライナ追加軍事支援が再開された。5月4日、サリバン大統領補佐官はワシントン市内で講演し、米国による対ウクライナ追加軍事支援の再開によりウクライナはロシアの攻撃に持ち堪えることができ、2025年に新たな反転攻勢が可能になるとの見解を示した。

[英国] 5月2日に行われたイングランドの地方議会選挙で、最大野党労働党は186議席増やした1,158議席を獲得して勝利した。一方、与党保守党は474議席を失い515議席にとどまり、自由民主党(522議席)に次いで第3位となった。同日行われたイングランド中西部の下院議会の補欠選挙でも労働党候補が勝利し、保守党候補はReform UK(極右)の候補をわずか117票差で下して2位の結果となるなど、保守党の苦戦が続く。

[中国/豪州] 5月6日、オーストラリア政府は、5月4日に中国人民解放軍の戦闘機が黄海の国際水域上空で、オーストラリア海軍のヘリコプターに対し至近距離で照明弾を発射し威嚇したことを明らかにした。アルバニージー豪首相やマールズ豪国防相は「プロとしてあるまじき行為で、容認できない」として、「あらゆるルートを通じて中国に抗議した」と述べた。オーストラリアのヘリコプターは、国連安保理の北朝鮮制裁に関する任務にあたっていた。

[豪州] 5月7日、豪連邦準備銀(RBA)が政策金利を4.35%で据え置いた。据え置きは4会合連続。RBAはインフレの減速ペースが予想より遅いと指摘した。2024年1~3月のCPI上昇率は前年同期比+3.6%と前期(+4.1%)から減速したが、依然として目標レンジ(+2~3%)を上回っている。

[イスラエル/カタール] 5月5日、イスラエルの内閣は、全会一致でカタールの衛星TV局であるアル・ジャジーラのイスラエル国内での活動停止を決定した。エルサレムにある同局の事務所は既に閉鎖され、放送機材などが押収された。イスラエルの国会は4月に、海外メディアの放送内容が国家安全保障に害を及ぼすと首相が判断した場合に、イスラエルでの放送停止や事務所閉鎖などを政府が決定できるとする法律を可決していた。この動きに対して、報道の自由を損なうものとして、国内外から批判の声が出ている。

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