2025年5月12日 (月)
[日本]
「国際収支統計」によると、3月の経常収支は3兆6,781億円となり、前年同月から黒字額を拡大させた。内訳をみると、貿易収支と第一次所得収支の黒字が拡大した。貿易収支は、輸入以上に輸出が増加したため、5,165億円の黒字だった。第一次所得収支は、直接投資収益と証券投資収益の黒字がともに拡大したため、3兆9,209億円の黒字だった。それに対して、サービス収支は▲192億円の赤字だった。旅行収支が5,561億円の黒字だった一方で、輸送収支は▲580億円、その他サービス収支は▲5,173億円へと赤字を拡大させた。特に、通信・コンピュータ・情報サービスとその他業務サービスの赤字拡大が目立った。
2024年度の経常収支は30兆3,771億円の黒字となり、比較可能な1985年度以降で過去最高の黒字額だった。貿易収支とサービス収支、第二次所得収支の赤字が縮小した一方で、円安効果と金利上昇の影響などから、第一次所得収支の黒字が41兆7,114億円まで拡大した影響が大きかった。なお、サービス収支では、旅行収支が6兆6,864億円の黒字まで拡大したものの、その他サービス収支の赤字が▲8兆5,322億円まで拡大していた。
[ガーナ]
5月9日、大手格付け会社のS&Pグローバルは、ガーナの外貨建て長期ソブリン債格付けを「選択的デフォルト(SD)」から「CCC+」に引き上げた。同社は2022年12月にガーナがデフォルトに陥って以降、SDを維持していた。
今回の格上げの理由についてS&Pは、2024年10月にガーナ政府が民間債権者団体とユーロ債の交換に合意したことや、2025年1月に二国間債務の再編に関する各国との合意を取り付けるなどガーナ政府の信用力の回復に基づくものとしている。
また、ガーナの好調な金輸出が外貨準備の積み増しや、経常黒字の拡大(2024年は対GDP比で4.4%)につながり、外部指標の改善を支えていると評価した。金輸出は価格の上昇と輸出量の増加の双方の影響により2024年は前年比53.2%増加し、海外からの送金も好調で前年比34.1%増となった。
他方でS&Pは、債務再編や財政再建の取り組みは2025年1月に誕生した新政権の下でも進められているものの、選挙の実施年だった2024年の財政赤字は支出の増加により対GDP比で4.9%に悪化。公的債務は同68.2%、利払いも政府歳入の25.1%と引き続き高い水準にあると指摘した。
また、インフレ率は中銀による金融引き締め政策、エネルギー価格の世界的な下落、通貨セディの回復により低下基調にあるが、依然として20%台と高いことから、物価高による国民の不満を和らげるために政府は歳出拡大を行う可能性があり、それが財政再建を遅らせる可能性に言及している。
なお、大手格付け3社の中で唯一、フィッチ・レーティングスがガーナの外貨建て長期債格付けを「制限付きデフォルト(RD)」で維持している。
[ロシア/ウクライナ] ウクライナの停戦交渉を巡る駆け引きが激しくなっている。ロシアのプーチン大統領は、5月15日、トルコのイスタンブールでウクライナとの「直接協議」を開催することを提案した。それに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領と同国を支援する有志国(英・仏・独・ポーランドの欧州4か国)は5月12日(月)からの無条件停戦をロシアに要求している。これを受けて、ゼレンスキー大統領5月12日、自分のSNS(交流サイト)に「トルコでプーチンを待っている。戦争を終わらせるために話す用意がある」と投稿し、直接交渉を受け入れる方針を示した。
[中国/CELAC]
5月11日、中国外交部報道官は、5月13日に開催される中国・中南米カリブ海諸国共同体(CELAC)フォーラム第4回閣僚会議の開幕式に習近平国家主席が出席し、重要演説を行うと発表した。 米中間の戦略的対立が深まる中、ラテンアメリカ・カリブ地域(LAC)も両大国の影響力争いの場となっている。
中国はグローバルサウスとの関係強化に一層力を入れているが、多くの国は米中どちらかを明確に選択することに躊躇(ちゅうちょ)しており、LACもその例外ではない。例えばブラジルは、中国を排除しようとする米国の働きかけに対して慎重な姿勢を示し、中国との安定的な関係を維持しようとしているが、ルーラ大統領が今年(2025年)3月にベトナムと日本を訪れた際には中国を訪問せず、トランプ米政権に対する配慮を示した(その後、CELACフォーラム閣僚会議に合わせて、5月11日から5日間の予定で中国を訪問している)。また、アルゼンチンのミレイ大統領も、中国に対する発言をより現実的な路線へとトーンダウンしており、現在の米中対立の中でバランスを取ろうと努めている。
2014年に中国・CELACフォーラムが設立されて以来、共同行動計画が複数作成され(2015~19、2019~21、2022~24)、政治協力の深化や経済・金融パートナーシップの促進、インフラ、技術、文化分野における協力の推進に重点が置かれてきた。しかし、2025年に新たな協力計画が策定されるのか、あるいは中国・CELACフォーラムの内部機構が改革されて制度化が推進されるのかは不明である。現在、CELACは常設の議席や国際機関としての正式な特徴を欠く非公式の多国間協力メカニズムにとどまっており、中国は同メカニズムの制度化推進を目指しているが、2024年4月にホンジュラスで開催されたサミットでは、米国の関税政策に対する批判的な文言をめぐり参加国の意見が割れ、共同声明が採択されなかった。5月に開催される閣僚会議でも、戦略的に重要な合意が達成される可能性は小さいとみられる。
他方で、同地域はリチウム(アルゼンチン、チリ、ボリビア、ペルー、ブラジル)や銅(チリ、ペルー、アルゼンチン)の埋蔵量が豊富であり、中国企業の当該地域での採掘・精製をめぐる新たな協力などが打ち出されると予想される。
[米国/イラン] 5月11日、ウィトコフ中東特使率いる米国代表団とアラグチ外相率いるイラン代表団は、オマーンの首都マスカットで核問題に関する間接協議を行った。核協議は4月12日に再開しており、今回で4回目。協議後、イラン外務省報道官は「困難だが有益な会談」だったと発表。協議に先立ち、10日にはアラグチ外相はサウジアラビアとカタールを訪問し、本件に関する協議を実施。なお、ウィトコフ氏は12日にイスラエルを訪問する予定で、13日からはトランプ米国大統領による中東3か国歴訪が始まる。
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