デイリー・アップデート

2025年5月15日 (木)

[ブラジル] 

ジャイル・ボルソナロ前大統領は、現在クーデター未遂の罪で裁判中であり、公の場では自身が次期大統領選挙へ出馬すると宣言しているものの、実際には出馬は不可能とみられる。

 

そのため、右派の別の候補者への支持を表明することで政治的な立場を維持しようとしている。ボルソナロ氏が推す候補者は、2026年の大統領選挙で現職のルーラ大統領と決選投票での一騎打ちまで進む可能性が高いとみられている。 仮にボルソナロ氏が推す右派の候補者が勝利すれば、ボルソナロ氏は恩赦を得てブラジルの政治舞台へと戻れる可能性もあるため、次期候補者選びを慎重に行っている。候補とされるのは、自身の息子(エドゥアルドまたはフラビオ)か、自身の在職中にインフラ大臣を務めていた現サンパウロ知事のタルシシオ・デ・フレイタス氏といわれている。

 

2026年には大統領選では、同時に州知事選と国会議員選が行われ、上院議席の3分の2が争われる。上院は連邦最高裁判所の判事を罷免する憲法上の権限を有しており、右派が優勢となれば、ボルソナロ前大統領に対する訴訟を主導する現職のモライス判事の弾劾も視野に入る。

 

ルーラ大統領の支持率は現在42%と比較的高水準を維持してはいるが、今後の支持率の変動が、ボルソナロ氏の候補者選びに影響を与えるとみられている。

[南アフリカ(南ア)/米国] 

5月14日、南ア大統領府はシリル・ラマポーザ大統領が5月19~22日に米国を公式訪問すると発表した。ラマポーザ大統領の訪米の発表は、5月12日にトランプ米大統領が「来週、南アの指導者が私に会いに来る」との発言に応じたもの。南ア政府は5月21日にトランプ大統領との首脳会談を行うと報じているが、米国側からの公式発表は行われていない。ラマポーザ大統領の訪米が実現すれば、バイデン前大統領政権下の2022年9月以来、約3年ぶりとなる。

 

トランプ大統領は1月の就任直後から、南アの白人農家が人種差別を受けていると主張し、南ア白人の「難民」認定プロセスを開始。5月12日に南アの白人家族ら59人(49人との報道もある)が米国に到着した。南ア政府は当初、6月15~17日にカナダのカナナスキスで開かれるG7首脳会議の場でトランプ大統領との会談を行う意向を示していたが、米国との緊張緩和を早期に実現したいラマポーザ大統領陣営が急いだものとみられる。

 

南ア政府はトランプ大統領との直接対話により事態解決が進展すると期待している一方、5月14日の米・ワシントン・ポスト紙の報道によると、米ホワイトハウスは、2025年南アが議長国を務めるG20関連の業務を中断するよう米政府職員に指示したとも報じられている。実際に両大統領の会談が実現したとしても、トランプ大統領はパレスチナ問題でイスラエルを非難する南アへの圧力を強化する機会と捉えるとの厳しい見方もある。

[ロシア/ウクライナ] 

5月14日、プーチン大統領は、トルコ・イスタンブールで15日に計画されているロシアとウクライナの直接協議で、メジンスキー大統領補佐官を筆頭とするロシア側代表団のメンバーを承認した。ロシア大統領府が発表した。プーチン大統領自身は協議に出席しない見通しで、ゼレンスキー大統領との6年ぶりの対面での協議は実現しない見通しである。

[米国/シリア/カタール] 

5月14日、トランプ米大統領は滞在中のサウジアラビアのリヤドでムハンマド皇太子兼首相立会いの下、シリアのシャラア暫定大統領との会談を実施した。米国はシリアに対して制裁を課しており、米国とシリアのトップが会談するのは実に25年ぶり。前日13日の米・サウジ投資フォーラムのスピーチで、トランプ氏はシリアに対する制裁解除を電撃発表しており、シャラア氏は会談でトランプ氏に対し、米企業によるシリアの石油・ガス分野への投資を求めた。トランプ氏はシャラア氏に対してアブラハム合意への参加(イスラエルとの国交正常化)を求めたとのこと。米国による対シリア制裁解除の発表は、今後のシリアの復興を大きく後押しする可能性がある。

 

また同日、トランプ大統領はサウジからカタールへ移動。カタールは、米ボーイング社から最大210機のジェット機を購入する契約を960億ドルで交わし、それ以外にも米兵器の購入契約やそのほか投資契約なども結ばれ、同日に米・カタール間で結ばれた契約の総額は2435億ドル(約35.6兆円)に上った。トランプ大統領は、カタールの後、15日には今回の中東歴訪で最後の目的地であるUAEを訪問する予定。

[ドイツ] 

欧州経済研究センター(ZEW)によると、5月のドイツ景気期待指数は+25.2だった。4月(▲14.0)からプラスに転じ、市場予想(+11.9)を上回った。内訳をみると、「改善(improve)」の回答割合が40.5%(+16.1pt)へと上昇した一方で、「悪化(get worse)」が15.3%(▲23.1pt)へと半減した。それに対して、足元の状況を表す現況指数は▲82.0となり、4月から▲0.8ptの小幅に悪化した。この内訳は、「良い(good)」が0.6%で4月から横ばいだった一方、「悪い(bad)」が82.6%(+0.8pt)へと小幅に上昇しており、足元の状況の悪さを印象付けた。

 

ドイツでは、メルツ政権が5月に発足し、財政拡大などを通じた景気の持ち直しへの期待が膨らんだ。また、4月に景気期待指数が悪化した主因だった相互関税についても、上乗せ部分が90日間猶予されたため、過度な警戒感が後退した。先行きの回復期待が持ち直したものの、足元は依然として厳しいままであり、2025年の経済成長率が低位にとどまり、3年連続のマイナスになる恐れも払しょくされていない。

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