2025年5月8日 (木)
[ブラジル/ロシア/中国] ルーラ大統領は5月8日から10日までロシアを、5月12日から13日まで中国を訪問する。ロシアでは戦勝記念日の祝賀会へ出席し、プーチン大統領との会談も予定される。ブラジルはロシアと安定した外交関係を維持しており、貿易においてもロシアからの肥料に大きく依存している。ブラジルの主要産業である農業における肥料の85%は海外から輸入するが、うちロシアからは最大の2割強を輸入している。ルーラ大統領はロシア/ウクライナ問題の解決策についても模索し続けることを表明するとともに、中国とともに、ロシアも加盟するBRICSの連帯を強める考えも明らかにしている。ブラジルは1月にロシアからBRICSの議長国を引き継いでおり、域内における貿易や投資を促進する方向性を示している。 また、中国訪問では、中国・ラテンアメリカ・カリブ諸国共同体(CELAC)の団結と関係強化を目指しており、「グローバル・サウス」としての存在感を高める方向を示している。中国では商業的な関係強化も議論されるとみられるが、特に農作物においては、ブラジルは米国の代替供給国として、アジア市場での存在感を拡大することを目指しており、中国政府からの投資拡大を求める。 ブラジルはそのほかにも、2024年ようやく合意したEU・メルコスール貿易協定の発効を狙っており、ヨーロッパとの関係も強化する見込みだ。 米国との関係は関税賦課などをめぐって冷え込みが続いており、鉄鋼輸出においても、割当の復活など交渉の進展もみられていない。そんな中、ブラジルは第三国との関係強化を模索していくとみられる。
[スーダン/アラブ首長国連邦(UAE)] スーダン国軍(SAF)が拠点とし、政府機能が集中するポートスーダンで4日間にわたりドローン攻撃が続いている。SAFは2023年から交戦を続けている準軍事組織「迅速支援部隊(RSF)」による攻撃だと非難している。SAFの影響下にあるスーダン政府は、このRSFによるドローン攻撃をUAEが支援しているとして、5月6日に国交の断絶を発表した。UAE政府はかねてからRSFへの軍事支援を否定している。5月7日、UAE外務省は、SAFが率いるスーダン政府は合法的な政府ではないことから、スーダン側の一方的な外交断絶の決定を「承認しない」と応酬した。
[米国] 5月8日、連邦準備理事会(FRB)は、連邦公開市場委員会(FOMC)を開き、政策金利(FF金利)の誘導目標レンジを4.25~4.5%に据え置くことを決定した。据え置きは3会合連続で、市場予想通り。声明文では、前回3月会合と同様に、米国経済や労働市場の堅調さ、物価上昇率の高止まりを指摘された。また、今回、不確実性がさらに高まっているとの表現に修正され、失業率と物価上昇率が高まるリスクが上昇していると警戒感も示された。市場では、パウエルFRB議長の発言も踏まえて、次回6月会合でも政策金利が据え置かれると予想されている。
[ロシア] 5月7日、ロシア国防省は、過去24時間で524機のウクライナ軍の無人機を撃墜したと発表した。過去最大規模とみられる。モスクワ中心に空港では遅延や欠航が発生し、空路が混乱した。プーチン大統領は、ウクライナに対し5月8日から3日間の停戦を一方的に宣言したが、ウクライナ側はそれに応じない構えで、今回の停戦の宣言も十分に機能しない可能性がある。
[米国/中東] トランプ米大統領は、5月13~16日の日程でサウジアラビア、カタール、UAEを訪問する予定。同大統領がこれら3か国を最初の外遊先に選んだことは(ローマ教皇の葬儀参列のためのバチカン訪問は除く)、トランプ政権の外交政策にとってのこれら3か国の重要性を表している。なお、トランプ政権1期目の最初の外遊先もサウジアラビアだった。今回イスラエルは訪問先に入っていない。訪問中には、米国とこれら3か国との大きなビジネス取引や、イラン、イエメン、シリア、パレスチナ問題などさまざまな国際・地域問題が協議される予定。
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