デイリー・アップデート

2025年5月28日 (水)

[ロシア] 

安全保障を巡る国際会議は5月27~29日にモスクワで開催する。中国や北朝鮮などを含む100か国からの代表者等が会議に参加する予定で、ロシアのショイグ安全保障会議書記が議長を務める。ショイグ安全保障会議書記が27日、モスクワを訪問した中国共産党の治安・司法部門を束ねる中央政法委員会トップの陳文清書記と会談し、治安対策での連携強化の方針で合意した。5月28日から29日にかけて、ショイグ安全保障会議書記はドディク・セルビア共和国大統領や北朝鮮の国家保衛相やイランの国家安全保障最高評議会書記と会談する予定である。

[アフリカ] 

5月27日、アフリカ開発銀行(AfDB)は「アフリカ経済見通し2025」を発表した。AfDBは加盟54カ国の2025年の実質GDP成長率は3.9%で、2024年の3.3%から上昇すると予測。2026年には4.0%に加速するとした。しかし、2月の予測時点から2025年は0.2pt、2026年は0.4pt下方修正した。AfDBはこの理由を世界的な経済活動の鈍化の影響や、米国の関税政策(相互関税、「アフリカ成長機会法(AGOA)」の失効の可能性)を受けたアフリカからの輸出の減少によるものとした。

 

他方で、域内の成長率は世界経済の成長予測(2025年:2.8%、2026年:3.0%)を上回っており、54カ国中21カ国が5%以上の成長を達成するとの見通しを示した。しかし一人当たりのGDP成長率は2025年で1.5%と他地域の新興国グループと比べても低い水準であり、貧困削減に向けてより力強い成長が必要だと強調した。

 

アフリカ域内の地域別成長見通しは以下の通り(北アフリカ、中部アフリカは割愛)。

【東アフリカ】 2025~2026年の平均成長率は5.9%に加速。エチオピア、ルワンダ、ジブチ、ウガンダ、タンザニアの経済の回復に起因。アフリカで最も多様な経済を有し(非資源依存)、「東アフリカ共同体(EAC)」域内での生産と貿易の拡大が外的ショックを緩和している。

 

【西アフリカ】 2025~2026年の平均成長率は4.3%と2024年の4.5%から低下。セネガルとニジェールにおける原油・天然ガス生産の本格化やカカオ豆等主要農産物の付加価値向上が成長をけん引。ナイジェリアは貿易相手国(米中)の需要の変化が成長見通しを難しくしており、2025年は3.2%の予測。

 

【南部アフリカ】 2025年は2.2%、2026年は2.6%成長。ザンビア等3カ国では6%以上の成長見込まれるが米国の相互関税の不確実性が成長予測に影響を及ぼす。南アフリカは米国との貿易の混乱や構造的なボトルネックから2025年は0.8%、2026年も1.2%と低水準が続く見込み。

[フランス] 

フランス国立統計経済研究所(INSEE)によると、5月の消費者物価指数(HICP)は前年同月比+0.6%だった。上昇率は4月と市場予想(いずれも+0.9%)を下回った。内訳を見ると、食品が+1.3%と、4月(+1.2%)から上昇率を拡大させた一方で、エネルギーは▲8.1%と、4か月連続で下落、3月(▲7.8%)からマイナス幅を拡大させた。また、工業財は4月と同じ▲0.2%と小幅に低下したのに対して、サービスは+2.1%と上昇しており、物価上昇のけん引役だった。ただし、サービスは3月(+2.4%)から上昇率を縮小させており、落ち着きも見られつつある。こうした5月の消費者物価指数を踏まえて、ビルロワドガロー・フランス中銀総裁は、「ディスインフレの進行という心強い兆しが示された」と評価した。

 

なお、ユーロ圏全体の4月の消費者物価指数は+2.2%だった。上昇率は、3か月連続で2%台前半であり、ECBの中期目標2%に近づいている。国別に見ると、フランスは2月以降、1%を下回る低い上昇率だった一方、ドイツやスペインは2%台前半を推移していた。足元にかけての物価上昇の落ち着きや今後の景気減速への懸念などを踏まえて、次回6月5日に予定されるECB理事会では、0.25%の追加利下げが実施されると、市場では予想されている。

[米国] 

米国連邦最高裁は、アパッチ族が聖地とするアリゾナ州オークフラットでの銅鉱山開発中止をめぐる訴えを退けた。2024年支援団体であるApache Strongholdが上告していた。問題となっている地域では、リオ・ティントとBHPが出資するリゾリューション・カッパー社が銅鉱山の開発を計画している。連邦所有地であるこの土地は2014年に米国議会により当該企業に譲渡される法案が可決されていた。ここはアパッチ族にとって霊的存在の住まう神聖な地であり、成人儀礼などに用いられてきており、開発により直径2マイルの巨大クレーターが形成されることで、土地に「不可逆的な」損害が生じると主張してきた。連邦裁・控訴裁に続き最高裁でも訴えが退けられた。保守派とされるが、宗教的権利を擁護する立場を取るゴーサッチ判事は信教の自由の軽視と批判している。

 

一方、銅は米国の通商拡大法232条の調査対象となっているように、国家安全保障上重要な戦略鉱物と位置づけられている。企業は「経済・安全保障に貢献する」と主張。先住民族の信仰や権利がその代償とされる構図となっており、開発には常に困難な課題を内包していることを示している。なお、豪州でも先住民の宗教的・文化的権利と資源開発が衝突した事件があり、米国だけの問題ではない。

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