デイリー・アップデート

2025年5月30日 (金)

[日本] 

経済産業省によると、4月の鉱工業生産指数は前月比▲0.9%と、3か月ぶりに減少した。全15業種中、生産用機械(▲8.7%)、輸送用機械(▲7.0%)、金属製品(▲3.7%)など6業種が低下した。横ばいはその他工業の1業種、上昇は電子部品・デバイス(+5.4%)や汎用・業務用機械(+3.4%)、無機・有機化学(+3.1%)など8業種だった。上昇した業種の方が多かったものの、低下した業種のウェイトや下落幅が大きく、全体として生産指数は前月から低下した。基調判断は「一進一退」であり、7月以降同じ表現が続いている。なお、設備投資の一致指数とされる資本財(除く輸送機械)出荷は前月比▲4.1%と、2か月連続で減少、資本財の荷動きの鈍さから設備投資の弱さがうかがわれた。先行きについて、製造鉱業生産予測指数は5月に前月比+9.0%、6月に▲3.4%となり、当面は一進一退の動きが続きそうだ。 また、商業動態統計によると、4月の小売業販売額は前月比+0.5%と、2か月ぶりのプラスになった。小売業販売の基調判断は「緩やかな上昇傾向にある」だった。

[アルゼンチン] 

政府は、ペソ建ての5年物の国債10億米ドル相当を発行した。アルゼンチンでは、過去にデフォルト(債務不履行)を繰り返し、国際金融市場から締め出されていたが、今回マクリ政権以来9年ぶりの国債発行となり、国際金融市場への復活を果たした。

 

発行された国債の金利は29.5%と、予想(24~27%)を上回った。債券はアルゼンチンの法律に基づき発行され、2027年の総選挙前に行使可能なプットオプション(投資家が任意で国債を売却できる権利)も付与された。今回の国債発行には、主に外国人投資家から約17億米ドルに上る146件の応札があった。カプト経済大臣は、これはミレイ大統領の経済プロジェクトへの信任を反映したものであり、近づく満期債務の借り換えにも資すると指摘している。一方、IMFとの合意の一環として、アルゼンチンは3月末から6月中旬までの間に約44億米ドルの純外貨準備を積み立てることに合意していたが、民間の見積もりでは、その目標を大幅に下回っていることが示されていた。今回の債券発行により、中央銀行の準備金についても増加が見込まれ、7月に満期を迎える44億米ドルの債務返済への懸念も後退し、カントリーリスクの低減にもつながるとみられる。

 

ただし、債券の金利が政府のインフレ予測を大きく上回っていることから、投資家がインフレと為替レート政策に疑問を抱いていることを示唆しているとの指摘もあった。さらに、ミレイ大統領がIMFと合意した外貨準備の積み増しを軽視し、為替市場への介入を継続している点についても、懸念が指摘されている。

[ポルトガル] 

5月18日、投票のポルトガル議会(一院制、定数230)選挙の結果、モンテネグロ首相率いる社会民主党を中心とする中道右派連合が、29議席減の91議席を獲得、過半数には届かなかったものの、かろうじて最大勢力の座は維持した。一方、新興極右シェーガ党が躍進を続け、第2党に浮上した。シェーガ党は初めて主要野党となり、議会で60議席を獲得、また中道左派の社会党は20議席減の58議席と惨敗している。シェーガ党は反移民政策や厳しい刑罰を主張しており、他の極右政党とも連携している。モンテネグロ首相は続投し、来週にも少数与党の新内閣が発足する見通し。

[南アフリカ(南ア)] 

5月29日、南ア準備銀行(SARB)は金融政策委員会(MPC)を開催し、政策金利を25bp引き下げ、7.25%とした。利下げは2会合ぶりとなった。

 

レセチャ・クガニャゴSARB総裁は、直近4月のインフレ率は2.8%と、中銀がターゲットとする3~6%の範囲を下回っており、これは輸入燃料価格の下落と、通貨ランドの上昇によるものと説明。米国の関税政策に伴うサプライチェーンの混乱や、世界経済の減速の可能性などリスクは混在しているが、国内のインフレは適切に抑制されていることから利下げを決定したと述べた。

 

他方で、SARBは、2025年の実質GDP成長率予測を前回会合時点の1.7%から1.2%に下方修正した。その理由として国内の鉱業・製造業の不振、失業率の上昇、また世界経済の鈍化の可能性などを挙げている。また、南ア経済は引き続き脆弱性を抱えており、4月2日の米国の相互関税の発表と連立政権(GNU)内の対立を受けて、一時通貨ランドが対ドルで最安値(1ドル=19.93ランド)を更新するなど為替の急落が起こり得る点を指摘。自国通貨安によって経済成長率が低下する一方で、インフレ率が上昇するスタグフレーションのリスクが浮き彫りになったことから、引き続きマクロ経済安定化のために金融引締め政策を継続すると述べた。クガニャゴ総裁は現在のインフレ率推移の見通しに基づくと、年内にさらなる利下げが行われ、政策金利は6%台まで低下するとの予測を示している。

 

利下げの発表後、インフレが適正に管理されていることが市場で好感され、通貨ランドは前日比で1%程度高い1ドル=17.80ランド前後で取引されている。

[米国/シリア/トルコ/カタール] 

5月29日、シリア政府は長年の内戦で荒廃した同国の電力部門の復興を目指し、カタール、トルコ、米国の企業連合と70億米ドル相当の外国投資による大規模発電プロジェクトのための覚書に署名した。同企業連合はカタールのUCCコンセッション・インベストメンツが主導し、トルコのエネルギー企業2社と米企業1社が参加している。署名式は首都ダマスカスの大統領官邸で、シリアのシャラア暫定大統領とバラック駐トルコ米国大使兼シリア担当特使の立ち合いのもと、シリアのバシール・エネルギー相と各企業会長およびCEOとの間で執り行われた。

 

同発電プロジェクトは計5,000メガワット(MW)の発電を目指しており、シリア中部と東部の4か所にガス火力発電所(総発電容量4,000MW)を建設し、シリア南部に1,000MWの太陽光発電所を建設する計画。最終合意と資金調達完了後に建設が開始され、ガス発電所は3年以内、太陽光発電所は2年以内で完成予定。シリアは14年間の内戦で送電網や発電所が破壊され、市民は最大1日20時間の停電に見舞われている。同プロジェクトが完成すれば、シリア国内の電力需要の50%以上を賄うことができると期待されている。

 

トランプ米大統領は、今月半ばのサウジ訪問時に対シリア制裁の全面解除を発表し、シャラア暫定大統領を「若くて魅力的な男だ」と評し、握手をした。トルコとカタールの両国は、旧アサド政権下で弾圧されてきた反体制派(シャラア氏やその団体も含む)を長年支援し続けてきた過去があり、アサド政権崩壊後の新体制との関係構築も最も早かった。これらの国々は、今後のシリア復興関連でかかわりが大きくなるとみられる。

[中国] 

オーストラリアLowy Instituteの調査によれば、世界の発展途上国はこれまでに、中国から積極的な資金提供を受けてきたが、2025年にはその債務返済として過去最高の220億ドルを行うことになる。中国は戦略的および資源調達の点から特に重要なパートナーに対し資金提供を続けてきた。融資の最大の受益者として、パキスタン、カザフスタン、モンゴルや鉱物やバッテリーメタルの重要な輸出国であるアルゼンチン、ブラジル、コンゴ民主共和国、インドネシアといった新興国が挙げられている。かつては総額の5%ほどの小規模な貸与者だった中国だが、2015年には40%を超えるようになり、途上国向け二国間融資の最大の供給者となっている。中国の融資は、「一つの中国」政策を採用するための手段として、外交取引においても利用されているのが特徴だ。台湾から中国に承認を切り替えてから18か月以内に、ブルキナファソ、ドミニカ共和国、ソロモン諸島、ニカラグア、ホンジュラスへの新規融資が発表された。

 

「債務の罠」政策を反映しているという指摘もあるが、一帯一路構想の貸付急増がその目的であったことを示す証拠は多くはない。しかし、多数の国々で債務持続可能性に関する問題の中心にいることは確かだ。そうした中で、中国はいまジレンマに直面している。返済を強く迫ると築き上げてきた外交関係は棄損するが、資金や資本が不足している中で未払いの回収をするための圧力が増している状況だ。

[ロシア] 

深刻な人手不足や中央アジア諸国からの移民管理の強化を背景に、ロシア政府は現在、インドやバングラデシュ、ベトナムなどからの労働者を誘致することを計画している。既に国内の一部の地域では、他国からの労働者のために、入国の手続きと国内における登録を簡素化し、現地における受け入れ施設などを用意するパイロット・プロジェクトが実施されている。

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