デイリー・アップデート

2025年5月26日 (月)

[ガーナ/ザンビア] 

5月23日、ガーナ中央銀行(BOG)は金融政策委員会(MPC)を開催し、政策金利を28.0%で維持すると決定した。ガーナ中銀は前回3月のMPCで28.0%に利上げしたが今回は据え置いた形だ。

 

ジョンソン・アシアマ総裁は、インフレ率は年初の23.8%から、直近4月には21.2%に低下し、これは中銀の緊縮的な金融政策姿勢と、通貨セディの安定などによるものだと説明。マクロ経済は安定化の方向に進んでおり、2025年第1四半期の経常黒字は、金とカカオ豆の輸出増、海外送金の流入増により、過去最高の2.1億ドルを記録したと述べた。外貨準備高は輸入の4.7か月分まで増加しており、市場心理の回復によりセディは対ドルで、過去1年で24%上昇したと強調した。

 

他方で、インフレ率は中銀のターゲットである8%(誤差±2%)を引き続き大幅に上回っていることから、ディスインフレプロセスを強化するために全会一致で政策金利の据え置きを決定したと述べた。

 

同日、ザンビア中央銀行(BOZ)もMPCを開催し、政策金利を14.5%に据え置くと決定した。ザンビア中銀は直近4月のインフレ率が16.5%と、前月の16.8%から低下したが、依然として下方リスクが優勢であることから現在の金融政策の継続が適切であるためとした。

 

2020年にザンビア、2022年にガーナが相次いで債務不履行(デフォルト)に陥り、信用の低下から自国通貨が大幅に減価。その後ザンビアでは一時24%、ガーナでは50%を超える高インフレに見舞われたが、両国とも「G20共通枠組み」の下での債務再編や金融引締政策を進めた結果、徐々にインフレ率は低下しつつある。しかし、サブサハラではほかにも、ナイジェリア、アンゴラ、エチオピアなどで、自国通貨の切り下げ等を背景に、依然としてインフレ率・政策金利ともに2桁台の国が少なくない状況が続く。

[ロシア/ウクライナ] 

5月25日、ロシア国防省は、ウクライナとの5月16日の直接協議で合意した1,000人ずつの捕虜交換を完了したと発表した。捕虜交換は5月23~25日にウクライナとベラルーシの国境で行われた。ロシア側は近く停戦に向けた見解を提示する覚書を発表する予定だが、双方の主張の隔たりは大きく、停戦の行方は依然として見通せない状況が続く。両国は先週末、互いにミサイルや無人機で攻撃を続けて、戦闘が激しさを増している状況が続いている。

[台湾/米国] 

台湾メディアは、台湾積体電路製造(TSMC)が米商務省に送付した書簡の内容を報じている。トランプ米政権は、米国通商拡大法232条に基づく半導体輸入関税の導入を検討しており、米商務省の意見募集に対し、TSMCが5月5日付で書簡を送っていたが、内容の詳細は明らかにされていなかった。

 

TSMCは、「新たな輸入制限は、競争の激しいテクノロジー業界における米国の現在の優位性を脅かし、TSMCアリゾナ社によるフェニックスでの大規模な投資計画を含む、米国内の多くの半導体プロジェクトに不確実性をもたらす」として、関税導入に反対する立場を示している。

 

同社は、アリゾナ州において3つの先端ウェハー工場を建設するため、総額650億ドルを投資している。第1工場はすでに生産を開始しており、第2工場の建設はほぼ完了、そして第3工場の起工式は先月(4月)実施された。

 

さらに、TSMCは2025年3月、同州に追加で1,000億ドルを投資し、3つのウェハー工場、2つのパッケージング・テスト工場、ならびに研究開発センターを建設する計画を発表した。書簡の中で同社は、これらのプロジェクトの成功と適時の完了は、主要な米国顧客からの需要増加を前提としているが、最終製品価格を押し上げる関税は需要を減退させると指摘している。その上で、「TSMCは、本調査(232条)に基づき課されるいかなる是正措置も、半導体を含む下流の最終製品および半製品に及ばないよう要請する」と述べている。

 

また、アリゾナ州での投資計画に関連し、「関税やその他の輸入制限は、現実的な調整期間を設けずに課すべきではない」と主張。米国内での調達が困難な部材や、国内移転に時間を要する場合には、エコシステム内の既存サプライヤーからの輸入品に対して関税免除措置が必要であると訴えている。

 

TSMCの書簡について、中国の『環球時報』や台湾の中国寄りのメディアは、「毅然と主張をするTSMCに対し、米国の顔色をうかがってばかりの頼清徳政権」として、米国や台湾政府への不満を煽るような報道をしている。

[米国] 

日本でもコメの価格上昇が大きな話題となっているが、米国でも、日常生活にとても大切な存在であるファストフードの価格上昇が大きな問題となっている。求人情報会社oysterlinkの調査によれば、アメリカ人は毎月平均で148ドルをファストフードに支出している。こうした支出は地域によって異なっており、オンライン金融サービス会社LnedingTreeによれば、ファストフードへの支出単価が高い地域は、サンフランシスコ、ニューヨーク、ロサンゼルスだった。一方でインディアナポリス、ヒューストン、ナシュビルなどでは支出は低めになっている。また、同社がアメリカの成人を対象にした調査によれば、消費者の78%がファストフードを「贅沢品」とみなしている。大切ではあるが、身近な存在であるとは既に言えなくなっている。また、ファストフードで働いている多くの人も、自分たちが提供するフードを買う余裕がないという。「ファストフードはもはや手頃ではない……。2つのバーガーとフライドポテトに40ドル……。」というSNSへの投稿も話題となった。

 

2025年、約3,300億ドルのファストフード市場は、年平均では6.1%のペースで成長し、2029年には4,360億ドルへと拡大するとみられている。ただし、米国のCPI統計でファストフードが含まれる「Limited service meals and snacks」が、2020年1月からこれまでのところ、年平均では6.8%のペースで価格が上がってきたことが高い見通しの裏付けとなっていることや、庶民から遠い存在になりつつあることには留意が必要だ。

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