気になる数字
2021年05月13日
住友商事グローバルリサーチ(株)代表取締役社長住田 孝之(2025年3月末退任)
子供のころから数字が好きだった私ですが、数字を追いかけていると、逆に数字に追いかけられたり、縛られてしまったり、数字が人々のそして国や組織の行動を振り回したりすることもよくあります。最近の話題で気になる数字に関連するものの一つに、中国の人口の話がありました。4月27日にフィナンシャルタイムズ紙は、10年に1度行われる国勢調査の結果、中国の人口が減少に転じたもようであるということを複数の関係者の話として報じました。これに中国政府は即座に反応。4月29日に国家統計局は、2020年の人口は引き続き増加したと発表しました。もともと昨年の国勢調査の結果は4月上旬に公表される予定でしたが、結局、5月11日に詳細が公表され、2020年で14.1億人、前の年と比較して約1千万人の増加となりました。また、60歳以上の人口は約2.6億人となり、人口の18.7%となって、10年前に比べるとこの比率が5.4ポイント以上も上昇しました。
経済成長によるパイの拡大が安定的な統治のために重要であることはどの国でも同様な面があります。日本の場合も90年代前半に生産年齢人口が減少に転じて以降GDPもピークアウトし、人口減少下ではデフレ傾向が長く続き、厳しい経済運営を強いられています。中国にとっても2010年代前半に生産年齢人口が比率としてはピークを迎え、今後高齢化の進展とともに人口も減少することになれば、大きな懸念材料になりそうです。それだけに、今回の発表については中国政府も神経質になったのでしょう。中国自身が長い目で見た政策の方向を考える上でも、また、他の国が今後の中国をどう認識するか、中国ビジネスをどう考えるかという点でも、大事な数字です。転換点に差し掛かっている可能性は高く、今後どうなっていくのか注目されるところです。
記事のご利用について:当記事は、住友商事グローバルリサーチ株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報に基づいて作成しており、作成にあたっては細心の注意を払っておりますが、当社及び住友商事グループは、その情報の正確性、完全性、信頼性、安全性等において、いかなる保証もいたしません。当記事は、情報提供を目的として作成されたものであり、投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。また、当記事は筆者の見解に基づき作成されたものであり、当社及び住友商事グループの統一された見解ではありません。当記事の全部または一部を著作権法で認められる範囲を超えて無断で利用することはご遠慮ください。なお、当社は、予告なしに当記事の変更・削除等を行うことがあります。当サイト内の記事のご利用についての詳細は「サイトのご利用について」をご確認ください。
レポート・コラム
SCGRランキング
- 2025年7月10日(木)
19:00~、NHK『NHKニュース7』に、当社チーフエコノミスト 本間 隆行へのインタビューが放映されました。 - 2025年7月4日(金)
日本国際平和構築委員会『7月研究会』に、当社シニアアナリスト 足立 正彦がパネリストとして登壇しました。 - 2025年6月27日(金)
日経QUICKニュース社の取材を受け、当社シニアエコノミスト 鈴木 将之のコメントが掲載されました。 - 2025年6月27日(金)
『日本経済新聞(電子版)』に、当社シニアエコノミスト 鈴木 将之のコメントが掲載されました。 - 2025年6月22日(日)
雑誌『経済界』2025年8月号に、米州住友商事会社ワシントン事務所調査部長 渡辺 亮司が寄稿しました。