金利をどう考える?

2021年06月21日

住友商事グローバルリサーチ(株)代表取締役社長
住田 孝之

 コロナ禍への対応として、世界各国政府が金融緩和で資金を供給するとともに大規模な財政措置を講じたことで、世界的なインフレへの懸念が高まってきました。そんな中、6月16日に行われた米国の連邦公開市場委員会(FOMC)は、ゼロ金利政策の解除がこれまでより1年前倒しされ2023年になるとの見通しを公表しました。そこで注目を集めたのは、各委員の今後の金利予想を単純に表にした「ドットチャート」。これを見て、今後2段階での利上げが行われるとの見方が広がりました。テーパリング(金融緩和の縮小)の時期は明示されなかったため債権市場の反応は薄く、今後の利上げを見込み短期金利は上昇しましたが、インフレへの機動的対応を評価され長期金利は安定しています。一方、18日には、インフレが加速すれば2022年後半にも利上げがあるとのセントルイス連銀総裁の発言で株式相場が大きく下落しました。市場参加者が他人の予想に乗っかったり、右往左往したりする毎日です。

 

 数字・データや政策変更が市場や経済に与えるインパクトの評価は、あくまで予測であり、いくつもの仮説が成り立ちます。過去の似たようなケースがそのまま当てはまる場合もあれば、似て非なる部分を軽視したために予想が大きく外れることもあります。事業においても、今後どうなるかという予測を含む数字は不可欠です。「〇〇の数字は今後どうなるのか?」という答え=予想をビジネスパーソンならだれでも欲しくなるものです。それも自分に都合がよさそうな数字を。しかし、まずは自分なりに考えた上で、専門家の意見を参考にする場合にも、その意見の背後にある前提・ロジック・分析結果を正しく認識・検証し、自分の思い込みや他人の思い込みにも惑わされないようにしながら、結論を出していくことが大事だと考えています。

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