サッカー欧州選手権 とコロナ禍

2021年07月05日

住友商事グローバルリサーチ(株)代表取締役社長
住田 孝之

 特に欧州に在住経験のある人にとっては、4年に一度のサッカー欧州選手権(通称「ユーロ」)は楽しみの一つではないでしょうか? 昨年開催が予定されていた「ユーロ2020」はコロナ禍のため1年延期されて先月始まり、7月11日の決勝に向け大詰めを迎えています。今回は11か国の会場で試合が行われていますが、その会場の選定基準として欧州サッカー連盟が4月下旬に「最低25%の観客動員を保証」するよう求めたのには少し驚きました。エキサイティングな試合は大いに盛り上がり、テレビの前でもその興奮が伝わってきます。しかし、そのサポーターの様子には、いささか不安を感じます。有観客でもマスクをして距離を取り拍手で応援という日本とは異なり、マスクなし、一部満席、大声を出し、抱き合い、応援歌を歌うという以前と全く同じような光景です。アジアを含め世界中で、今も新型コロナウイルス感染拡大が多くの問題を生んでいるのに……。

 

案の定、サンクトペテルブルクで行われた試合の後、フィンランドのサポーター300人の感染が判明したほか、同市ではデルタ株での感染が急増。スコットランドでも競技場やパブでの観戦者2,000人近くが感染と報じられています。新型コロナウイルスは人間を試しているようにも思えます。ワクチン接種の進んだ国で少し状況がよくなったと思って油断したり、調子に乗ったりすると、コロナはすぐにまた勢いを盛り返します。日本人らしい慎重さは、結果的に吉と出るかもしれません。出遅れたワクチンの接種に対しても、日本では「接種しない」と言う人は11%と相対的に低い水準です。職域接種のような新しい官民協力には力強さがあります。人に迷惑をかけないことを軸として、協力して個々人の行動を変えていくという日本らしいやり方が一つの道なのかなとも思います。サッカーを楽しむだけでなく、いろいろ学びのあるユーロ2020になりました。

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