タリバン
2021年09月08日
住友商事グローバルリサーチ(株)代表取締役社長
住田 孝之
8月にアフガニスタンでは、あれよあれよという間に首都カブールが陥落し、武装勢力タリバンが支配する状況となりました。この問題は、8月末で軍の撤退を完了した米国のみでなく、アジア・中東・欧州など世界中の国々に影響があります。中国、ロシアがタリバンと接触しているということで欧州も複雑な動きをしています。一つのピースが動いたことで、世界の国々がそれぞれの思惑で右往左往する、国際政治の縮図のようです。
国だけでなく、一連の混乱の中、自爆テロ関連で久しぶりに名前が出てきた「イスラム国」(IS)や、タリバンの行動を称賛したアルカイダのようなテロリスト組織にとっても大きなインパクトがあります。米国による締付けの限界が明確になって、彼らに勢いが出てきたことが多くの国にとって脅威であるとともに、タリバンが、米軍が残した大量の武器を手にしたことも懸念材料です。
また、アフガニスタンは多くの国と国境を接していることから、とりわけ難民問題は、イラン、欧州諸国、中国などさまざまな国にとって深刻な問題です。そんな中、難民ではありませんが、東京パラリンピックでは、開会式には来られなかった二人のアフガニスタンの選手が、競技に参加することができました。当初予定の競技の終了後だったため、別の競技で自己ベストを出したことも話題になりました。
米軍の撤退については、米国内でも諸外国からも多様な評価がありますが、今週末には同時多発テロからちょうど20年となる9月11日を迎えるだけに、心配も尽きません。まずは、あのような悲劇が二度と起きないよう祈りたいと思います。
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