2022年のEU
社長コラム
2021年12月20日
住友商事グローバルリサーチ(株)代表取締役社長
住田 孝之
ドイツのメルケル首相が引退し、12月8日にショルツ新政権が発足しました。社会民主党、自由民主党、緑の党の3党の連立です。注目されるのは、外務大臣に就任したベーアボック氏など緑の党の動向です。人権、環境などを重視し、さっそく中国との関係では厳しい姿勢を示しています。もともと主張の異なる3党をショルツ首相がうまく束ねられるのか、それによって対外的な発信力も大きく左右されることになります。ドイツだけでなく、EU全体としてもメルケル後のリーダーの候補が確定しない状況が続きます。EUのもう一つの大国フランスでは、マクロン大統領が4月に選挙を迎えますが、支持率は芳しくない状況です。インフレやエネルギー危機が国民生活を圧迫し、再びコロナ感染の状況が悪化する中で、各国のリーダーへの支持が集まりにくい状況になっています。さらに、原子力などのエネルギー戦略をめぐる独仏の違い、EU法と各国法の優先順位をめぐるポーランドやハンガリーの反発など、EU内部での意見の対立も数多くあります。
そんな中、存在感を高めているように感じられるのは、欧州委員会。フォンデアライエン委員長の下、社会価値に重点を置いたルール作りなどで次々と新しい施策や方針を打ち出し、世界の仕組みづくりを先導しようという意図がうかがえます。欧州委員会の中でバランサー的な役割を果たし、また、優秀な人材を送ってきた英国が抜けたことで、合意形成は容易ではありませんが、2024年10月までまだ3年弱ある同委員長の任期の間に大きな成果を上げる可能性はあります。来年前半に、半年交代の議長国となるフランスは、先週、重点項目を発表しました。この期間に、ドイツ人の委員長の下、どこまで独仏間で合意して施策を進められるかがカギとなりそうです。サステナビリティ関連の情報開示、人権関連のルール、グリーンタクソノミーをはじめ、EUの仕組みは、EUと関係する世界中の企業に影響があるとともに、世界のルールに波及するだけに、2022年のEUの動きから目が離せません。
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