核融合

2022年02月08日

住友商事グローバルリサーチ(株)代表取締役社長
住田 孝之

 最近、話題になることが増えた「核融合」。先日はSCGRセミナーに九州大学の小菅准教授をお招きしてお話を伺い、卒論のテーマが核融合だった兵頭社長も加わってディスカッションを行いました。「核」と聞くとアレルギー反応のある方も多いのですが、夢の技術であることは間違いありません。地球上に太陽を作るような話で、アニメ「ガンダム」シリーズにも登場しました。エネルギー関連の資源に恵まれない日本にとっては、実現すれば実にありがたいものです。

 

 原子力発電の場合は、質量の大きな元素から放射線を発生させ、連続的な「核分裂」反応を起こしてエネルギーを取り出すのに対して、核融合では、小さな元素を複数融合させ、新たな元素に変化する際に出るエネルギーを活用するものです。その反応のために、1億度をはるかに超える温度でプラズマ状態を作り、それを磁場の中に閉じ込めたり、核融合の際に高速で飛び出してくる中性子に耐えられる材料で周囲を囲むなど、技術的なハードルは高いものです。一方で、燃料をつぎ足さずに連続反応を起こす原子力発電と異なり、原料の重水素や三重水素の注入をやめれば反応が止まるので制御しやすいという面はあります。

 

 昨年策定された新たな「エネルギー基本計画」では、長期的視野からの活動の推進につき言及されました。年明けには、岸田政権として、核融合発電ができる国産実証炉の2050年運転開始を目指し、今年夏までに戦略を策定することが発表されました。米国などでは核融合関連で多くのベンチャー企業が活躍しつつあり、マイクロソフトをはじめ多くの先進企業がそれらベンチャーへの投資を行っています。以前は日本企業が、関連する特許の大半を占めていたのですが、今は特許出願もまばらになってしまいました。30年先の技術といわれる核融合ですが、カーボンニュートラルへの大転換が世界で図られつつある今、いよいよ本格的に投資が行われ、大きく進展するかもしれません。材料関連技術や小型化技術など、日本が得意とする分野での力を活かせる部分も多く、新たなビジネスチャンスもたくさんありそうです。好奇心と構想力で未来を切り開いていきたいところです。

 

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