対ロシア制裁

2022年02月28日

住友商事グローバルリサーチ(株)代表取締役社長
住田 孝之

 

 北京での冬季オリンピックの閉会式が終了するや否や、ロシアが一気にウクライナへの軍事的な侵攻を開始しました。「外交努力」が功を奏することなく、こうして戦争が繰り返されることに、強い憤りを感じます。米国、欧州などいわゆる西側諸国は一致団結してロシアに対する経済制裁措置を講じ、順次その内容を強化しています。一部の国が逡巡していたSWIFTからのロシアの金融機関の排除も合意されました。「中長期的に」ロシアに大きなダメージを与えることは間違いありません。

 

 一方で、これら経済制裁措置が直ちにロシアの軍事行動を変えさせるような即効性は期待薄です。ロシアとしては、東西ドイツの統一時から一貫して、「NATOの東方拡大を許さない」と考えており、NATO軍の活動地域と国境を接したくないのです。それ故ウクライナのNATO加盟はロシアとして認められず、それを目指すウクライナの現政権を倒し、傀儡政権を樹立したい。原油価格高騰もあって財政的なゆとりのある現在のロシアは、少なくとも一定期間は経済制裁にも耐えられる可能性が高いのです。

 

 国際社会が許容できないのは、理由はどうあれロシアが軍事行動に出たことです。だとすれば、一致団結してそれを止めたい。バイデン大統領が「すべての責任はロシアにある」と言っても、ロシアは軍事行動を止めません。欧州の国々も、「一致団結」と言いながら各首脳が一人ずつプーチン大統領と話をしただけで、外交努力の成果はゼロ。「内を向く大国」が国内優先で外交努力や経済制裁をやっていることをアピールするだけで済む問題ではありません。ドイツがウクライナに武器を供給するという大方針転換をしたのには大変驚きましたが、これでは逆に戦争の長期化が懸念されます。「戦争を止める」という共通の目標を今一度再確認し、本当に西側諸国が一致団結して行動し、解除の条件を明確にして効果的な制裁措置を講じながら、プーチン大統領と話をし、解決策を一刻も早く見出すことを期待します。

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