ウクライナ危機からの学び
社長コラム
2022年03月22日
住友商事グローバルリサーチ(株)代表取締役社長住田 孝之(2025年3月末退任)

ロシアのウクライナへの侵攻が開始されてから、約1か月が経過しました。経済面でも、西側諸国による対ロシア制裁、それへのロシアの対抗措置、ブラックリストによるレピュテーションリスク、分断に伴う穀物や資源、材料などの需給ミスマッチによる市場変動など、ビジネスにも大きな影響が出てきます。長期化すればなおさらです。この先どうなるか見通しが立ちませんが、ここまでの段階での気付きを経済面に限定せずまとめてみました。
戦闘行為そのものに関しては、
- 諜報機関による事前の情報公表が戦況に影響を与え、相手の準備が不十分な段階での奇襲で一気に決着させることができなくなる。
- 核兵器が実際に使われるリスクは、想像していたよりも大きい。
- サイバー攻撃は、一回使ってしまうと準備されてしまって次に使えなくなるので、実質的に使うことが難しい。
といったことがあります。
また、次々と強化されていく制裁措置に関連しては、
- 経済規模の大きな国々が結束して科す経済・金融制裁の力は大きい。
- 経済制裁は、即効性は十分ではなくても、時間が経過するほど効果が大きくなる。
- 国による制裁だけでなく、メディアなどを通じた活動によるレピュテーションリスクも重大。
- 西側諸国の常識や価値観は、アジア・中南米・中東などでは必ずしも共有されない。
などが実感されます。
何とか戦闘状況が一刻も早く終わって欲しいと願うばかりですが、
- 戦闘が起きてしまうと、国際機関を含め、それを止める手段が容易には見つからない。
- これまでは米国の軍事介入があることが国際秩序を保ってきた面がある。
ということのようです。
そのほか、
- 有事になると、国際的な動きの原動力は、経済より安全保障の方が強い。
- それ故、ドイツ含め急に方針を転換してでも西側諸国は結束する。
- グローバリゼーションを通じ地球規模で経済活動の効率化が進んだ後で分断が起きると需給の不均衡が至るところで生じる。
なども全体を通して感じるところです。
そして、今後の中国と台湾の関係においても、これらを含め今世界が経験していることが、大きなインパクトをもたらすことになりそうです。
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