米国からみた世界情勢

2022年06月22日

住友商事グローバルリサーチ(株)代表取締役社長
住田 孝之

 6月5日から1週間、米国に出張し、ニューヨーク、ワシントンDCなどで日米の有識者と意見交換し、現在の世界情勢に関する米国の見方を感じてきました。何といっても最大の関心事はインフレをどう退治するか、ということです。1ガロン5ドル超のガソリン価格の表示には、確かにギョッとしました。労働者不足がサービス価格を高騰させていることも深刻です。「早急にインフレをある程度コントロールして、中間選挙を迎える」というのが政権の最大命題のようで、国内政策にも国際政治にもそれが反映されます。金利の急速な引上げだけでなく、通商面では東南アジア諸国からの太陽光モジュール輸入に対する関税の免除が行われました。中国との関係でも、トランプ時代に引き上げた関税をある程度元に戻すことが視野に入ってきており、中間選挙に向けて対中強硬姿勢一辺倒、ということではないようです。

 

 また、既にロシアの軍事活動の開始から約4か月が経過したウクライナ問題。ヨーロッパでは、現在のロシアの勢力地域をベースに早期の停戦を図りたい独仏伊と、徹底的にロシアを叩きたい英蘭ポーランドなどとの間で考え方の違いが明確になる中、米国は「必要な武器の供給は行う」といういわば中間的なポジション。戦闘の継続が武器特需を生み米国企業が潤う側面もあるのでしょう。また、中国やインドがロシアからの輸入を増やしロシアの財政を支えてしまうことには米国も苛立っているものの、その流れを塞ぐことで世界のエネルギーや食糧の価格がさらに上昇するのも困りもの、といったところです。「ウクライナが領土の一部を諦めて停戦に向かうとしたらEU加盟を条件にするのでは」といった見方が米国としてもかなり現実的な、痛みの少ない解であるように思えます。中国との関連で懸念される台湾問題ですが、「もしトランプが再選されたら台湾には関心を持たないだろう」というコメントには、改めてハッとさせられるものがありました。米国の側から眺めてみると、やはり世界も少し違って見えてくるものです。

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