2023年の経済
社長コラム
2022年12月15日
住友商事グローバルリサーチ(株)代表取締役社長
住田 孝之
今年も残すところ、2週間少々になりました。ロシアのウクライナ侵攻など、今年もまた「激動の一年」になりました。経済面では、ロシアからのエネルギーの流通量が減少したことなどから、世界中で40年振りとなるインフレに見舞われ、各国がその沈静化に向けて金利を引上げました。ようやくインフレ率の上昇が一段落してきた地域もありますが、上昇した金利が経済をシュリンクさせ始めています。
このため、2023年の経済見通しは、極めて悲観的なものになっています。これまで経済の過熱を懸念してハイスピードの利上げを続けてきた米国では、インフレを反映して賃金水準が大幅に上昇したこともあり、ハイテク関連企業の大規模なレイオフに代表されるような厳しい状況が出てきました。2023年の成長率は1%程度と見込まれています。
多くの人が口をそろえて最も心配するのが欧州の経済。10月にIMFは1%未満の成長と予測しましたが、その後さらに悲観論が台頭し、EU全体でマイナス2%程度と予測する人もいます。もともとインフレの原因の多くの部分がエネルギーや食糧の供給不足による価格高騰であり、需要が強いわけではなかったので、金利引上げを受け止めるだけの体力がなく、既に低成長あるいはマイナス成長モードに入っています。この冬は何とか確保できたガスも、2023年はさらにロシアからの供給が減り、再びエネルギー価格が高騰して経済の足を引っ張ることが心配されています。
リーマンショックの時には救世主的な存在となった中国も、今回はむしろ世界経済の懸念要因となっています。ゼロコロナ政策による供給の途絶、引締め政策による不動産不況の影響は深刻です。ようやく緩和され始めたゼロコロナ政策が、再び感染拡大を招くようなことになると、経済活動が急減速しかねません。習近平政権の新体制の中に、国全体の経済運営の経験者が見当たらないことも心配です。
軍事的な紛争に加えて、経済面でも多難な1年になりそうです。
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