賃上げ

2023年02月07日

住友商事グローバルリサーチ(株)代表取締役社長
住田 孝之

 昨年12月の東京都の消費者物価上昇率は前年同月比4.0%で、40年8か月ぶりの伸びになりました。電気代やガス代は、毎月の請求を見るのが恐ろしくなるほどですが、加えて6月からの家庭用の電力料金は東京電力の申請どおりであれば約29%上昇することになります。今の現役世代にとっては、これまでに感じたことのない物価上昇です。

 

 そんな中で、家計が困窮し経済活動が元気をなくしてしまわないためには、「賃上げ」が必須です。連合は、ベア分含めて5%程度の賃上げを要求する方針を昨年12月に決定しました。企業でも、先陣を切るように、日揮ホールディングスが、8年振りのベア含め4月から基本給を約10%引き上げることを昨年中に表明。経団連会長も、賃上げは企業の責務であり、今年の春闘を「構造的・継続的賃上げの起点」としています。ユニクロも給与水準を年収で数%~40%アップすることを1月中旬に発表。国内最多の40万人のパートタイマ―を抱えるイオンも、来月にも時給を平均7%上げる方針であることが先週報じられました。政界も力が入ってきており、「政労使」が一致団結して賃上げを推進するという珍しい状況になっています。

 

 インフレに負けないよう賃上げで消費マインドを維持し、上向かせ、それが企業の業績を押し上げ、さらなる賃上げを生むという好循環が、日本にとって数少ない選択肢です。企業は、投資家への還元を意識することに加えて、従業員への還元を一層充実させることが重要です。もちろん、一度上げた賃金はなかなか下げられない、中小企業は賃金を上げても価格に転嫁できないなど、できない理由もいろいろ言われます。物価スライドのような仕組みを入れるとか、中小企業に発注している大企業などの仕切り価格について下請法も活用してしっかりガイドするとか、一つ一つ工夫して克服していくことで、よいサイクルを早く回したいものです。

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