G7

2023年06月02日

住友商事グローバルリサーチ(株)代表取締役社長
住田 孝之

 

 5月19日から3日間、広島でG7首脳会合が開催されました。これまでに日本で開催されたサミットの中では最も政治的な意味合いが強く、また、世界に与えたインパクトが最も大きかったように思います。経済、安全保障、軍事、エネルギーなどでのG7の結束を示す首脳コミュニケの中で、エネルギー面で、炭素中立の実現に向けて様々な道筋があることが合意されたことは、日本の主張が通った部分です。アジアの諸国をはじめとするグローバルサウスの意見を代弁するような立場に日本が立てたことが、この結果につながっています。

 

 今回のG7では、ゼレンスキー大統領の来日が全体の雰囲気や世界の注目度を大きく変えました。ウクライナ支援でのG7の結束が示されたほか、インド、インドネシアなどの招待国の首脳とゼレンスキー大統領が日本で会談を行ったことも印象的でした。ただ、ロシアへの親近感が強いといわれるブラジルの大統領との面談は実現せず、また、グローバルサウスの理解は広がらなかったと評されています。

 

 岸田首相は、G7首脳、招待国首脳、ゼレンスキー大統領と3回にわたって、かなりの時間をかけて原爆資料館を案内し、これも日本のプレゼンスや平和国家としての意義を世界に示すことになりました。バイデン大統領が国内事情から直後の豪州訪問を取りやめたことで、当初予定されていたシドニーではなく、広島でQUAD首脳会合が開催されたのはサプライズでしたが。

 

 そうした中、中国は、G7の結束や日本のリーダーシップに対抗するためか、ほぼ同タイミングで西安に中央アジア5か国首脳を集め、初めてロシア抜きで中央アジア諸国との対面首脳会談を開催しましたが、ある意味、焦りの表れかもしれません。実に多くの政治的メッセージのある、それだけ世界が注目するサミットになりました。どこまで事前にプランされていたかは別として、結果として日本にとっては満足のいく結果といえそうです。地元開催となった岸田さん、「持ってる」ということでしょう。

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