リスクを序列化する

2023年12月19日

住友商事グローバルリサーチ(株)代表取締役社長
住田 孝之

 年末が近づき、来年の世界情勢・経済見通しを発表・ご説明する時期になりました。東京以外も含めていろいろな方々に説明し、議論しながら、気づいたことの一つは、このコラムにゴーストライターがいるのではないか疑惑?が意外にあること。いつも苦労しながら自分で書いているのですが、「コラム」という名前のわりにちょっと固めなので、そんなふうに感じる方がいるのかもしれない、というのが反省点です。今後また工夫してみます。

 

 説明の中でも強調していますが、来年の経済は世界中で低成長となり、戦争も国際政治も新局面、各国政治も選挙で変わり目、気候変動もスピード調整かということで、世界は転換点を迎えそうです。これが来年の見通しの幹の部分です。経済が下向きなので、ただでさえ事業リスクが多くなりがちな中、転換点にあるということは、様々なビジネス環境が変わる、それも予測が難しいということで、気にしないといけないリスクがますます増えるように感じられます。もちろん、社内でもそれぞれの立場から心配な部分をつつかれるし、取引先などからもさまざまな観点からの指摘があるでしょう。とても対応しきれない、と投げ出したくなる人もいるかもしれません。

 

 そういうわけにはいかないので、リスクと上手につきあうことを考えましょう。そのためには、説明の中でも強調しているのですが、リスクを序列化してみることが大事です。さまざまなリスクや変化要因を自分のビジネスにとっての重要度に応じて、例えばA, B, Cの3段階に区別してみる。これができれば、あとは、緊急時医療行為におけるトリアージと同じように対応することが可能になります。ほんとに真剣に取り組まなければいけないリスク事象への対応に十分に注力する。リスクが顕在化しても影響があまり大きくないものは、確かに100点満点ではないけれども、あまり手をかけない。大いに効率的に仕事ができます。リスク部門や取引先などへの説明においても、この序列化がしっかりしていれば、自信を持って説明できるでしょう。

 

 この点について、各方面への説明を通じて、かなり多くの方に共感いただけたという感触があります。ますます難しい時代、ぜひ、ここをしっかりして、思い切ったビジネスを展開してまいりましょう。

 

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