インドネシア経済の現状(15年8月)
調査レポート
2015年08月03日
住友商事グローバルリサーチ 経済部大西 貴也
◇ 内需
消費は旺盛だが、燃料補助金改革(補助金削減)、経常赤字に起因するルピア安、ラマダン及びその後のレバラン(ラマダン明け休日)の季節要因から足下のインフレ率が高まり、消費拡大の重しとなっている。
また、実質GDP成長率が6.0%を下回って以降、若年層失業者が増加に転じている事、自動車販売台数の伸びに頭打ち感が見られる事、実質賃金上昇率がマイナス転換している事などから、購買力は低下傾向。
なお、消費者信頼感指数はボックス圏内で推移しているものの、基準値(=100)は超えた状態を維持している事から今後も消費は堅調に推移するものと思われる。
◇ 外需
商品価格下落で、原油、天然ガス、石油関連製品など輸出の大半を占める1次産品の金額が減少。特に米国以外で輸出金額が減少。反発の兆しがみられない商品市況や、輸出相手国の成長率見通しの減速傾向、あるいは下方修正されている現状を踏まえれば、短期的な輸出の伸びは期待できない。
石油精製品輸出は原油輸出を大きく下回っている事、化学製品の輸出総額は1次産品に比して小規模である傾向から、資源国である強みを生かしつつ、市況変動に耐えうる付加価値型(資源精製や川下部門)の産業分野の育成が急務。
なお、近年はわずかながら自動車輸出が存在感を示しており、輸出先は中東のイスラム国向けが多いとの現地企業の説明あり。
また、国内の景気減速を反映して、輸入は年初来減少傾向。ただし、国内の経済活動の持ち直しにより輸入が増加した場合、貿易収支が悪化に転じる可能性が大きい。
◇ 投資
2015年(1~12月)予算において、インフラ開発予算を前年比5割増しとしたことは評価された。しかし、与野党間調整・政府内調整の難航、補正予算案審議が2015年2月まで長引いた事、2015年の省庁再編、KPK(汚職撲滅委員会)の摘発を恐れ事務手続きが厳格化されている事などから予算執行が遅滞している(第1四半期末での進捗率はわずか1%)。現地有識者の声として、予算執行は例年年末に加速し90%台で着地するが、2015年は70%を下回るという悲観的な見方もある。
今後について、引き続き内需が堅調に推移し、予算執行が2015年後半に加速すれば、成長率が持ち直す可能性がある。
以上
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