米農務省:作付意向面積および四半期在庫

2017年04月06日

住友商事グローバルリサーチ 経済部
舘 美公子


 

 

◇作付意向面積

 

 3月31日に米農務省が発表する作付意向面積は、3月上旬に実施した農家へのヒアリングを基に作成される最初の作付け見通し。実際には作付け時の天候や需給動向により、最終的な作付面積と乖離することも少なくないが、相場を方向づけるイベントとして注目される。

 

 今回、主要作物の総作付面積は前年比▲2.3百万エーカーの316百万エーカーと2011年以来の低い水準となった。豊作によって農産品価格が低迷し、農家の資金繰りも悪化するなか、休耕を選択する農家が増えていることがうかがえる。

 

 作物別で作付面積の増減幅が大きかったのは、大豆・綿花の計8.1百万エーカー増、トウモロコシ・小麦の計▲8.1百万エーカー。他作物に比べて生産マージンが高い大豆作付けを選好する農家が多く、プレーンズ地域農家による小麦から大豆への作付けシフト、中西部農家によるトウモロコシから大豆への作付けシフトが目立った。飼料穀物の競争が厳しくなるなか、トウモロコシ・小麦・ソルガム・大麦・オーツなどの飼料穀物の作付けの減少も顕著。なお、綿花価格の回復期待から、テキサス州を中心とした南部では綿花の作付け意向が増加した。

 

 

主要8作物の米国作付面積(出所:米農務省より住友商事グローバルリサーチ作成)

 

 

 

◇四半期在庫

 

 米農務省が発表した3月1日時点の在庫残高は、トウモロコシ・大豆・小麦ともに前年同期を大きく上回る結果となった。トウモロコシについては、在庫増減から試算される穀物年度上期(9月~2月)の飼料需要が前年比3.7%増の37億7,600万ブッシェルと、米農務省が予想する通年の需要伸び率8.2%増を大きく下回った。このため、米農務省は4月以降の需給報告でトウモロコシの飼料需要見通しを下方修正する可能性が高い。だが、上期の消費全体では前年比25%増と飼料・エタノール・輸出ともに堅調であり、決して弱気一辺倒な内容ではない。

 

 大豆は、農場内在庫が前年比で減少しており、12~2月にかけて大豆価格が10ドル超の高値を維持するなか、農家が売却を進めたことがうかがえる。なお、大豆はトウモロコシと異なり毎月比較的正確な消費データが入手できるため、市場予想と在庫残高に大きな乖離が見られることは少ないが、今回は市場予想を50百万ブッシェル上回る在庫が報告された。このため、米農務省が1月に発表した大豆生産確定量よりも実際の生産量が多かった可能性が指摘されている。

 

 小麦在庫は、前年比21%増の大幅増。消費は決して悪くなく、第3四半期を終えた需要量は13億6,200万ブッシェルと前年同期を25.6%も上回っている。飼料需要で競合するトウモロコシに対する価格割安感から需要が伸びたもので、米農務省の2016/17年度消費予想の87%を既に達成済み。

 

 

四半期在庫報告(出所: 米農務省四半期在庫報告-2017年3月31日発表-より住友商事グローバルリサーチ作成)

 

 

以上

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