デイリー・アップデート

2025年5月21日 (水)

[タイ/マレーシア/フィリピン] 

2025年1~3月期のタイ、マレーシア、フィリピンの実質GDP成長率(前年同期比)は、それぞれ、+3.1%、+4.4%、+5.4%だった。タイは米国の高関税を見越した輸出の前倒し、マレーシアとフィリピンは内需の好調により、おおむね堅調な伸びとなったが、今後、米国の関税政策の影響が及ぶことが見込まれる。いずれも物価は落ち着いており、中銀は金融政策の緩和で景気の下支えを続ける見通し。

[日本] 

財務省「貿易統計」によると、4月の貿易収支は▲1,158億円の赤字だった。赤字は3か月ぶり。内訳を見ると、輸出額は9兆1,572億円(前年同月比+2.0%)で、7か月連続の増加で増加した。また、輸出数量指数も+0.5%と、2か月ぶりに増加した。中国などアジア向けに半導体等電子部品(+13.2%)、米国や中国、韓国など向けに食料品(+18.4%)、米国やEU、中国向けなどに医薬品(+13.2%)などの増加が目立った。その一方で、EUや中国向けの自動車(▲5.8%)、米国やEU、中国向けの鉄鋼(▲12.3%)、船舶(▲26.2%)などが減少した。

 

それに対して、輸入額は9兆2,730億円(▲2.2%)と、2か月ぶりに減少した。ただし、輸入数量は+2.8%と、2か月連続で増加しており、輸入価格が低下した影響が総じて大きかった。実際、品目を見ると、石炭(▲38.6%)や原粗油(▲10.1%)など、価格低下の影響が大きかった品目の減少が目立った。

 

また、米国との貿易では、輸出が1兆7,708億円(▲1.8%)と4か月ぶりに減少した一方で、輸入が9,902億円(▲11.6%)へと減少しており、貿易黒字は7,706億円へ拡大した。3月に鉄鋼・アルミニウム製品への追加関税、4月に相互関税や自動車への追加関税が始まっているものの、これまでのところ目立った動きは見られていないようだ。

[ナイジェリア] 

5月19~20日、ナイジェリア中央銀行(CBN)は金融政策委員会(MPC)を実施し、政策金利を27.50%に維持すると決定した。金利の据え置きは2会合連続となった。CBNは、ナイジェリアのマクロ経済指標は改善しており、直近4月のインフレ率は前年同月比で23.71%と、3月の24.23%から緩和傾向にあると説明。しかし、世界的な原油価格の低下や、不確実性の高い外部環境の変化に対して適切な政策対応をとるため、全会一致で金利の維持を決定したと述べた。

 

CBNによると、2024年第4四半期(2024年10~12月)の実質GDP成長率は3.84%で前期の3.46%から加速した。これは石油部門と非石油部門(サービス部門)の双方の成長によるもので、なかでも原油生産量は2021年ぶりの水準となる170万バレル/日前後に回復している(OPECの生産割当量は150万バレル/日)。また、国内での石油精製品の供給増(ダンゴテ製油所の稼働)により石油輸入が前年比で20%強減少。海外からの送金も堅調なことから経常黒字が続き、外貨準備高は輸入の7.6か月分をカバーする水準だとした。

 

こうした状況から油価が1バレル60ドル台で推移してもナイジェリアの経常黒字は当面続くとの見方がある。一方で、歴史的に油価が下落すると通貨ナイラも下落する傾向にあるため、再び輸入コストが上昇してインフレ率が高止まりすることにより、利下げサイクルの開始が第3四半期まで遅れるとの指摘もある(Capital Economics)。

 

また、遅れて3月に発表されたナイジェリアの2025年度予算(2025年1~12月)上では、原油価格の基準値は1バレル75ドル、原油生産量は日量206万バレルを前提にしていることから、現在の低油価、生産量の水準が続けば、今年度は120億ドル程度の歳入減に見舞われるとの見方もある(5/5付 Nairametrics紙)。同予算では年間の国家歳入は約228億ドルと見積もられていることから、歳入の約7割を占める原油の価格低迷はナイジェリアの財政に悪影響をもたらす恐れがある。

[ロシア/中国] 

5月12日、中国の格付け大手機関(CCXI)は、ロシアのソブリン格付けを「BBBg+」と格上げし、見通しは「安定的」と発行した。ロシアによるウクライナ侵攻以来、海外金融機関による初めてのロシアのソブリン格付けの発表となる。欧米の格付け会社は現在、ロシアの調査を行っていない。CCXIは調査レポートで、地政学的リスクが緩和される中、ロシア経済はショックに対する回復力を示し、徐々に制裁に適応してきたと説明している。一方、ロシアにおける高い政府支出、労働力不足、および高インフレの圧力の強化を背景に、需要と供給の不均衡のリスクを懸念している。

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