デイリー・アップデート

2025年7月2日 (水)

[南アフリカ(南ア)/米国] 

7月1日、南アのパークス・タウ貿易産業競争相は、7月9日に一時停止期限を迎える米国の相互関税について、90日間の停止期限の延長を求めていると発表した。4月2日の相互関税の発表を受けて南アは31%の追加関税が課されることとなり、自動車・部品の追加関税(25%)とあわせ米国政府との交渉を続けてきた。5月21日に米ホワイトハウスで実施された南アのラマポーザ大統領とトランプ大統領との対談の機会にあわせ、南ア政府は米通商代表部(USTR)に対して相互の貿易・投資関係を強化するための「枠組み協定(Framework Deal)」を提出。この協定を通じて自動車・部品、アルミニウムなど、主要な輸出品の一部をセクション232の関税対象(相互関税)から除外する代わりに、米国からの液化天然ガス(LNG)の輸入の拡大を提案していた。

 

その後、目立った進展が報じられない中、6月23~25日にアンゴラで開催された「米国・アフリカビジネスサミット(6月25日デイリー・アップデート参照)」の機会にタウ大臣はコニー・ハミルトンUSTRアフリカ担当補佐官と対談を実施。その会談においてUSTRは南アを含むアフリカ諸国向けに相互関税の交渉用の「テンプレート」を準備していることが明らかになったことから、アフリカ各国がそのテンプレートに沿って提出できるようタウ氏はさらに90日間の延長を米国側に提唱したとのこと。米政府内の承認手続きが完了次第、テンプレートはアフリカ各国に共有される予定だとタウ氏は述べているが、これに関して米国側から公式な発表はなされていない。

 

しかし、米国にとってアフリカは輸入、輸出ともに世界全体の1%程度に留まるため、アフリカ各国との交渉の優先順位は低いとみられる。6月27日にベッセント米財務長官は、主要な貿易相手国10~12か国と(7月9日の期限までに)合意でき、残り20の重要な貿易相手国とは9月1日の労働祭までに交渉を終了させられるとの見通しを示している(Politico紙等)。南アは米国にとってアフリカの最大の貿易相手国であり、2024年に米国は88億ドルの貿易赤字を計上している。南アにとっても米国は中国に次ぐ貿易相手国だが、米国の輸入相手国としては29位、輸出は42位(2024年米国側統計)であることから、ベッセント米財務長官が言及した計30か国程度の「重要な貿易相手国」の中に含まれるか微妙なライン上にある。

[タイ] 

7月1日、憲法裁判所は上院議員の団体からのペートンタン首相の解職の請願を受理し、最終的な判決を言い渡すまでの間、首相職務の一時停止を命じた。上院議員の団体は、ペートンタン首相が6月15日のフン・セン首相との電話会談でカンボジアの要望を優先し、タイ軍幹部を貶(おとし)めるものであり、重大な倫理違反だと主張した。ペートンタン首相には15日間の申立て期間が与えられる。首相職は暫定的にスリヤ副首相が代行する。ペートンタン首相は内閣改造に向けた閣僚名簿を国王に提出し、6月30日付で承認されており、7月3日に第2次内閣が発足する。ペートンタン首相は文化相も兼務するため内閣にとどまる見通し。憲法裁がペートンタン首相を解職する判決を言い渡した場合、下院で新首相選出のための投票が行われる。

[米国/イスラエル/パレスチナ] 

7月7日に、イスラエルのネタニヤフ首相が米国のホワイトハウスを訪問することが発表された。同首相のホワイトハウス訪問は、第2期トランプ政権発足以来だけでも2月と4月の訪問に続き3回目。ガザでの停戦やイラン、シリア情勢などについての協議が行われる予定。

 

ネタニヤフ首相の訪米への地ならしとして、現在同首相の右腕ともいわれるデルメル戦略問題担当相が訪米しており、7月1日にはヴァンス副大統領やルビオ国務長官、ウィトコフ中東担当特使などとの協議を行ったとされている。

 

なお、デルメル氏とウィトコフ氏の会談後にトランプ大統領が自身のTruth Socialアカウントへの投稿で、イスラエルがガザでの60日間の停戦の条件を受け入れたことを発表した。同投稿でトランプ氏は、停戦期間の60日間のうちに、すべての当事者と協力して戦争を終わらせるよう働きかけると述べており、同提案を仲介国のカタールとエジプトがハマスに届けることにも言及。トランプ氏は、これ以上条件が良くなることはなく悪くなるだけだとして、同合意を受け入れるようハマスに迫っている。

[ユーロ圏] 

EU統計局(Eurostat)によると、6月の消費者物価指数(HICP)は前年同月比+2.0%となり、市場予想通りだった。上昇率は5月(+1.9%)から0.1pt拡大したものの、ECBの中期目標の2%と一致した。2025年2月以降2%前後の上昇率が継続しており、2%目標の達成にまた一歩近づいた。

 

物価の基調を見る上で重視されている食品・エネルギーを除くいわゆるコア指数は+2.3%であり、5月と同じだった。2か月連続で2%台前半となり、物価の基調も落ち着きつつあるようだ。

 

内訳を見ると、食料品は+3.1%と、5月から0.1pt縮小したものの、ここ3か月連続で3%台とやや高止まりしている。また、エネルギーは▲2.7%と、5月(▲3.6%)からマイナス幅を縮小させたものの、下落は3月以降4か月連続となった。財(エネルギー以外)は+0.5%であり、ここ半年程度+0.5~0.6%のレンジで安定している。サービスは+3.3%となり、5月から0.1pt拡大した。2か月連続で3%台前半であり、上昇ペースは鈍化してきた。

 

国別にみると、キプロス(+0.5%)、フランス(+0.8%)が1%を下回った一方、エストニア(+5.2%)やスロバキア(+4.6%)、クロアチア(+4.4%)は高めの上昇率になった。また、ドイツ(+2.0%)やスペイン(+2.2%)、イタリア(+1.7%)は2%前後を推移している。

 

6月の消費者物価指数も2%上昇となったため、7月のECB理事会では政策金利の据え置きという見方が一層強まった。

[中国] 

7月1日、習近平総書記は中央財経委員会第6回会議を主宰し、「全国統一大市場」の建設強化と「海洋経済の高品質な発展」を中心に議論を行った。

 

会議では、「5つの統一、1つの開放」を新たな基本方針として掲げ、市場基盤制度、インフラ、行政行為の基準、市場規制と法執行、要素資源市場の「統一」を推進するとともに、国内外への「開放」を同時に進めることが強調された。

 

特に注目されるのは、価格を引き下げる企業間の過度な競争の取り締まりや、時代遅れの産業能力しか持たない企業を段階的に市場から退出させ、ビジネス環境の改善を図るべきだとされた点である。

 

また、会議では海洋経済の発展にも重点が置かれた。海洋経済とは、海上風力発電、遠洋漁業、海洋バイオ医薬、海洋観光、現代海運業など多様な海洋産業に加え、港湾資源の統合活用、湾区経済の発展、海洋生態系の保護、海洋カーボンシンク(炭素吸収源)などを含む。これらの分野に関して、トップレベルの計画設計、社会資本の参入促進、海洋科学技術の革新力強化、国有企業および「専精特新」(専門性・精密性・特色・新規性を備えた中小企業)への支援を行っていくことが提起された。

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