世界の食料価格動向(FAO食料価格指数、2022年3月)

2022年04月20日

住友商事グローバルリサーチ 経済部
鈴木 直美

2022年4月12日執筆

 

新高値更新

 

 国連食糧農業機関(FAO)が4月8日に公表した月次の食料価格指数は、2022年3月平均で159.3ptと、2か月連続で過去最高を更新した。 前月比での上昇幅は+17.9pt(12.6%)と極めて大きく、既に価格高騰が顕著だった中で、ロシアのウクライナ侵攻がもたらしたショックの大きさを物語っている。また、異常気象や国際原油相場の上昇も、食料価格高騰の大きな要因となっている。

 

 特に上昇が大きかったのは植物油(248.6pt、前月比+46.9pt)。ヒマワリ油・パーム油・大豆油・菜種油の価格上昇にけん引された。植物油価格指数はコロナ禍でのボトム(2020年5月)77.77から3倍以上になっている。パーム油は主要生産国(インドネシア・マレーシア)の供給逼迫で、大豆油は南米の干ばつによる大豆生産不調などで、既に価格が上昇圧力を受けていた。その上、ロシア・ウクライナ戦争によりヒマワリ油の輸出量が大きく減少する見通しとなり、世界的に他の植物油の需要が高まったことも価格を大きく押し上げた。国際原油価格の上昇も、植物油価格の下支えとなった。

 

 次いで、穀物(170.1pt、前月比+24.9pt)も大きく上昇。小麦・粗粒穀物(トウモロコシ・大麦・ソルガム)いずれも記録的な高値となった。小麦は2021年、ロシア・米国・カナダがいずれも不作だったことから価格は高値圏で推移していたところ、戦争により黒海地域からの輸出が減少する見通しとなった。米国では干ばつの影響で2022年夏に収穫される冬小麦の作柄不良が伝えられている。トウモロコシは主要輸出国であるウクライナからの供給減少に加えて、エネルギーや肥料のコスト上昇も価格高騰の大きな要因となっている。下げ基調だった砂糖価格も反発。来季のブラジルで砂糖よりエタノール生産が優先されるとの見通しを反映した。

 

 FAOは2021/22年度の世界穀物貿易量の予測を下方修正、期末在庫の見通しを上方修正した。世界在庫の増加は朗報とは言えない。ロシア・ウクライナの輸出減少により両国内の在庫が増えるが、入手可能性の低下と高価格で一部の輸入国では在庫減少が予想されており、低所得国の食料不足が強く懸念されている。

 

 

FAO食料価格指数(出所:FAO(2022.4)より住友商事グローバルリサーチ作成)

 

 

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