商品:景気停滞と経済変容を映す中国貿易動向 ~中国主要商品貿易動向(2022年4月)~

2022年05月18日

住友商事グローバルリサーチ 経済部
鈴木 直美

 

2022年5月11日執筆

 

 

 中国税関総署が5月9日に公表した貿易統計によると、2022年4月の輸出金額(米ドル建て)は前年同月比3.9%増(前月+14.7%)、輸入金額は前年比変わらず0.1%減となった。内需・経済活動の停滞で輸入は伸びず、新型コロナウイルス感染拡大防止措置に伴う物流や生産の混乱などで輸出も失速した。

 

 

 国際商品の価格は前年同期を軒並み上回っているが、主要原材料の輸出入動向は数量ベースでも公表されており、上述の傾向がより鮮明に表れている。原油輸入量は4,303万トン(日量約1,050万バレル)と3か月ぶりに増加に転じたが、年初来(1-4月期)累計では前年比4.8%減となっている。石油製品輸出は4月は前年比▲44%減、累計でも38%減少している。これは製油所の原油処理量が減少したためで、内需低迷でも製品輸出の増加とはならなかった。 また、建設業や製造業の低迷で金属・鉄鉱石の輸入も伸び悩んでいる。石炭の輸入は前月比43%増となったが、インドネシアが1月に輸出制限した影響で第1四半期の輸入量が少なかった反動だ。アルミは過去2年、輸入量が急増していたが、現在はエネルギー危機・物流混乱で欧米市場の需給が逼迫する一方で、中国市場は内需低迷で相対的に安いため輸入は激減し、輸出が増えている(※4月分のアルミ輸出の数値は未公表)。

 

 

 米中貿易戦争やオーストラリアとの関係悪化に伴う調達先の変更、新型コロナウイルス感染拡大防止措置や景気刺激策のタイミング・規模の違いによる国内外の景況格差・価格差、エネルギー危機、対ロシア制裁を巡る欧米とのスタンスの違いなどさまざまな要因から、中国の原材料貿易の振れ幅は大きくなっている。足元の低迷に対し、2022年半ばから後半にかけては、都市封鎖の段階的な解除や政府による景気刺激策により需要が回復するとの期待もある。

 

 

 ただ、近年、中国政府が石油・金属精製業のCO2排出量削減・過剰生産抑制を進める中で石油製品や鉄鋼・アルミの輸出は減少し、原料輸入も抑えられてきた。言い換えると、中国は原材料を他国に頼って調達し、自国内でエネルギーを消費しCO2を排出してまで、精製品輸出の量的拡大を追求しなくなっている。さらにコロナ危機後は、物流混乱や諸外国との関係悪化を受けて原材料の輸入依存低減の取り組みを強めている。国内での増産や再生可能資源(自然エネルギーや金属スクラップなど)の利用、動物飼料の配合見直しなどの施策が奏功すれば、原料輸入を抑制する要因になるだろう。 中国のゼロコロナ政策、世界的な景気減速、物流混乱の長期化などの状況も踏まえると、年後半も中国の資源輸入量は大きくは伸びないとみられる。

 

 

中国輸出入動向(2022年4月)(出所:Bloombergより住友商事グローバルリサーチ作成)

 

 

以上

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