デイリー・アップデート

2025年10月3日 (金)

[日本] 

総務省「労働力調査」によると、8月の完全失業率は2.6%となり、7月から0.3pt上昇した。上昇は5か月ぶりだった。6月は2.5%であり、8月が高いというわけではない。

 

内訳を見ると、就業者数は6,835万人(前年同月比20万人増)、37か月連続で増加した。雇用者数は6,174万人(同34万人増)、42か月連続の増加。そのうち、正規の職員・従業員は3,711万人(同52万人増)、22か月連続増加した。特に、女性は1,362万人(55万人増)となり、比較可能な2013年1月以降で最多になった。また、非正規の職員・従業員数は2,111万人(同16万人減)、8か月ぶりに減少した。 完全失業者数は182万人(同7万人増)、13か月ぶりの増加だった。

 

就業者数の内訳では、製造業(10万人減)や卸売・小売業(20万人減)が減少した一方、不動産業、物品賃貸業(11万人増)や教育、学習支援業(12万人増)、医療、福祉(17万人増)などで増加した。

 

厚生労働省「一般職業紹介状況」によると、8月の有効求人倍率は1.20倍となり、前月から▲0.02ptと2か月ぶりに低下した。新規求人倍率は2.15倍、これも▲0.02ptの低下だった。

 

また、正社員の有効求人倍率は1.00倍、7月から▲0.02ptの低下になった。都道府県別の有効求人倍率(就業地別)では、福井県の1.86倍から神奈川県と大阪府の1.01倍まで全都道府県で1倍超を維持した。厚労省は、最低賃金の引き上げに向けた対応を検討するために、求人を控える動きも一部にあったと説明したという。

[パナマ] 

2025年9月に実施した世論調査によれば、鉱山再開への支持は6月の33.1%から39.5%に上昇し、反対は63.9%から56.6%に減少した。再開への支持が高まってはいるが、依然として過半数が反対しているという状態が明らかになった。主な反対理由は環境への懸念(47.1%)と政府への不信感(13.6%)となっており、また、62.9%の回答者が意見を変えないと答えていることから、短期的な鉱山再開は困難とみられる。

 

中米最大級の露天掘り銅鉱山であるコブレ・パナマ鉱山は、2023年11月にパナマ最高裁が運営契約を違憲と判断したことを受けて閉鎖された。この決定は、環境保護を訴える大規模な抗議活動と、資源ナショナリズムの高まりの中で下されたものであり、パナマの政治・社会に深い亀裂を残した。鉱山の閉鎖は、パナマ経済にとって甚大な打撃となった。同鉱山は国内GDPの約5%、輸出収入の75%を占め、国内労働者の50人に1人を雇用していたとされる。この損失は、2024年末にS&Pがパナマの信用格付けをBBBからBBB-へと引き下げる要因にもなった。

 

2024年に就任したムリーノ大統領は、鉱山再開に意欲を見せ、再開への期待が高まったが、前政権との関係による不信感、経済停滞、環境・移民問題への対応の不透明さ、外交の不安定さなどから支持率は急落しわずか17.7%にとどまっているため、再開に向けた政治力には疑問が残る。ムリーノ政権は、鉱山の社会的・環境的影響を評価する監査を通じて、全国的な議論の土台を築こうとしているが、環境団体や労働組合の反発は依然として強い。特に、2023年の抗議を主導した建設労働組合は再開に断固反対しており、政治的合意形成は容易ではない。

 

国際的な視点では、コブレ・パナマ鉱山は世界の銅供給の約1.5%を占めており、その閉鎖は世界市場に供給制約をもたらした。鉱山の再開は、こうした市場の緊張を緩和する可能性があるが、政治的・法的な障害が解消されない限り、現実的な進展は見込めない。

 

さらに、鉱山の所有者であるカナダのファースト・クアンタム・ミネラルズ社は、パナマ政府に対して最大300億ドル規模の損害賠償を求める国際仲裁を申し立てており、交渉は複雑化している。その後、申し立ては取り下げられたが、法的・政治的な不確実性は依然として残る。ムリーノ政権は新たな契約法の制定を否定し、外国企業による利権支配ではなく、国による運営と技術的パートナーシップを模索していることも、海外投資家にとって不確実性を高めている。

 

コブレ・パナマ鉱山の再開問題は、環境保護、資源管理、経済再建、国民の信頼回復という課題が絡み合っており、再開への支持が徐々に高まっているとはいえ、ムリーノ政権がこの難題を乗り越えられる見通しは立っていないといえる。

[南アフリカ/中国] 

10月1日、南ア自動車製造者協会(NAAMSA)のビリー・トム会長は、2025年上半期の新車販売台数は前年同期比で14%増加し、新型コロナ禍以前の水準を上回る見通しだと発表した。2019年の新車販売台数は53万6,612台だったが、昨年2024年は51万5,850台と、これまで2019年の水準を上回ったことはない。NAAMSAは2025年通年の新車販売台数を54万5,000台と予測している。トム会長は特に自動車の輸入が前年同期比で30.2%増となり、特に手ごろな価格帯のモデルが流入していると販売台数の増加の理由を示している。

 

サブサハラ・アフリカのGDPの約2割を占め、アフリカ全体でも新車販売台数は2位モロッコの17万6,401台の3倍近い自動車市場を持つ南アだが、過去10年の平均成長率は0.7%で、一人当たりGDPは2011年の約7割に留まっている。長引く経済の低迷から、安価なエントリーモデルの乗用車を嗜好する消費者が増加していることを背景に、中国製の乗用車輸入の需要が高まっている。2025年5月にNAAMSAが発表したレポートによると、商用車をあわせた乗用車販売台数のシェアトップはトヨタの24.9%で45年連続首位。トヨタと同じく南ア国内にCKD(完全ノックダウン生産)工場を持つ、独・フォルクスワーゲンが12.9%、そしてインドのマルチ・スズキからの輸入が拡大しているスズキが11.6%と上位シェアを占める。しかし、2024年は中国メーカーのシェアがはじめて10%を突破。内燃機関車では特に奇瑞(チェリー)、長城汽車(ハバル、GMW)、電気自動車では比亜迪汽車(BYD)の人気が高く、英FT紙によると中国自動車ブランドは過去10年で2社から16社に増加したと報じている。

 

一方で、安価な輸入中国車の流入が続く状況に対して、国内で乗用車のCKD生産を行う主要7社の目は厳しい。トヨタ・南アフリカ(TSAM)のアンドリュー・カービーCEOは、2018年から2023年までに現地生産車のシェアは6.5%pt低下して43%となった一方、中国製輸入車のシェアは645%増加して市場全体の7%となったと指摘。輸入車の増加から南ア政府が自動車政策で向上を推し進めてきた平均現地調達率は4割を切っており、南アのGDPの約5%を占める自動車製造業の弱体化を招くと、国内でCKD生産を行っていない中国企業を暗に批判している(25年1月IOL紙)。

 

南ア国内の自動車生産台数は、需要の低迷と電力供給の不安定化等による生産面での課題等により2019年の63万1,921台にピークを記録して以降、伸び悩みが続いている(2024年は59万9,754台)。追い打ちをかけるのはトランプ2.0政権による自動車・部品向け関税(25%)と、相互関税(30%)、そして9月30日に失効した「アフリカ成長機会法(AGOA)」だ。南アの米国向け自動車輸出台数は2024年で286億ランド(約2,288億円)。ドイツ(791億ランド)、ベルギー(298億ランド)に続く主要輸出先である。EU諸国向けには「南部アフリカ開発共同体(SADC)・EU経済連携協定(EPA)」を活用して無税で完成車を輸出できる状況は続くが、米国向けの輸出は新たに課される関税が大きな障害となる。国際貿易センター(ITC)はAGOAの失効により、南アからの自動車を含む米国向け製造業輸出は17%減少するとの見通しを示している。こうした事業環境の変化を受けて、9月にフォードは南ア国内2工場で474人のリストラを発表した。これは国内製鉄最大手アルセロール・ミタル・南ア(AMSA)の4,000人の解雇の発表に次ぐ規模となる。また、2024年の自動車生産台数では、欧州向けの輸出を伸ばしているモロッコが55万9,645台と南アを追い上げており、2025年には南アを抜くとの見方も強い。モロッコは米国の相互関税は最低税率の10%であることから、この点でも生産・輸出面で南アより比較優位に立てる。

 

国内の生産企業からの批判の声を受け、南ア政府も中国企業らの現地生産を呼びかけている。9月2日にパークス・タウ貿易産業競争相は、現在南ア国内でSKD(セミノックダウン)生産を行っている北汽集団やインドのマヒンドラ&マヒンドラがCKD生産に移行するとの確約を得たと発表。ほかにも南ア政府は中国企業のハイブリッド車・電気自動車生産工場の投資を呼びかけている。

[チェコ議会選] 

2025年10月3~4日、議会選挙(下院200議席、任期4年)が実施される。複数の世論調査によると、バビシュ前首相が率いる最大野党の右派「ANO2011」が支持率30%で首位を維持している。フィアラ首相率いる中道右派3党連合「SPOLU」が、20%でこれに続く。反移民、反欧州連合(EU)を主張する東京生まれ・チェコ育ちの日系人でトミオ・オカムラ氏が率いる極右派ポピュリスト政党「自由と直接民主主義」(SPD)が13%で3番目となっている。

 

今回の選挙では「ANO2011」が優勢とみられるが、仮にANOが勝利したとしても、1党で過半数を獲得するのは難しく、ほかの政党との連立が不可欠となる。いずれにしても、EU懐疑派のバビシュ氏が政権を握った場合、フィアラ現政権の親EU路線に修正が出てくることが予想される。また、ウクライナ支援政策の見直しも避けられないとの見方もある。

[中国] 

中国政府は外国の若手理工系人材を誘致するため、10月1日から新たに「Kビザ」を導入した。このビザの取得には現地雇用主の保証は不要で、このビザを所持することで、複数回の入国が可能となり、滞在期間も従来より長くなる。

 

これに対し国内では、失業率の上昇や新卒者の就職難について不満や懸念を抱く人々の間から反発の声が上がり、中国のSNS「微博」では「Kビザ」がトレンド入りした。その後、国営メディア『人民日報』は、「世界の英知を集めることは中国の高品質な発展に資する」と強調し、労働市場への悪影響を否定する論評を掲載した。

 

米国ではH-1Bビザ(外国人科学技術人材が多く申請する)の費用が年間10万ドルに設定され、一部大学への資金凍結などの措置も取られている中で、従来より柔軟な運用のビザを打ち出すことで、中国は外国人理工系技術者にとって、より魅力的な選択肢となることを狙っている。しかし、国内で若年層の失業率が8月に18.9%と2年ぶりの高水準に達したこともあり、「自国の学生を優先すべきだ」との不満がSNS上で噴出した。

 

中国は伝統的に移民の受け入れを抑制しており、2020年時点での外国人居住者は人口のわずか0.06%にとどまっている。今回のビザ制度は、人材交流のテストケースと位置づけられているが、適用基準の詳細はまだ公表されておらず、中国外交部は近日中に大使館・領事館を通じて明らかにするとしている。

[米国] 米メディア報道によると、トランプ政権は農家支援策を検討している模様。支援規模は100~140億ドルという数字が報道されているが、議会共和党では350~500億ドル規模の支援策検討も行われているとのこと。農務省の商品金融公社(CCC)の基金を用いる策や、一連のトランプ関税による関税収入を農家支援に充てる策などが議論されているが、関税収入を流用するには議会による立法措置が必要になるとみられており、年度予算をめぐって党派対立が深まっている中で議会が速やかな措置を講じることは困難視されている。

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