デイリー・アップデート

2026年2月27日 (金)

[インド・イスラエル/首相会談] 

2月26日、インドのモディ首相は、訪問先のイスラエルでネタニヤフ首相と会談を実施した。同日にインド政府より公表された共同声明の中では、両国の外交関係を「戦略的パートナーシップ」から、新たに「平和、イノベーション、繁栄のための特別戦略的パートナーシップ」へと引き上げることを決定した。防衛・安全保障対策面では、2025年11月に署名された防衛協力に関する覚書の内容を歓迎した上で、特にサイバーセキュリティ分野での人材育成・研究での協力に合意した。経済面では、2025年9月に締結された二国間投資協定の内容を歓迎した上で、第1回目の交渉が実施されたFTAについて締結に向けた交渉を加速させることに合意した。治安対策面では、両国ともにイスラム過激派によるテロに悩まされていることもあり、テロ対策での協力に合意した。

 

インドは冷戦期には非同盟中立の立場をとり、パレスチナ国家の建設を強く支持していたことから、イスラエルとの間では正式な外交関係が樹立されていなかったが、その後は冷戦終結を契機に1992年に外交関係を樹立。防衛や技術の分野を中心に徐々に関係を深めた。2014年にヒンドゥー至上主義を掲げるモディ政権が発足以降、2017年のモディ首相によるイスラエル訪問時には、両国の外交関係を「戦略的パートナーシップ」へと格上げすることを決定するなど、両国の関係は深まっている。

 

インドにとりイスラエルは、第49位の輸入相手国であり、輸入額も2024年時点で16.4億ドルと絶対額こそ小さいものの、近年はそれまで最大輸入先であったロシアに代わり、中国やパキスタンとの国境監視に使用されている大型偵察ドローンや自爆型ドローン、空対地超音速ミサイルなどの防衛装備品の輸入を増加させるなど、防衛面での関係性が深化している。

 

なお2022年には、両国とUAE及び米国を加える形で、エネルギー、交通、宇宙、健康、食糧安全保障など幅広い分野での協力を促す「中東版Quad」であるI2U2が設立されているほか、2023年にインドが議長国となったG20の場で発表された、インド・中東・欧州を結ぶ経済回廊「インド・中東・欧州経済回廊(IMEC)」構想において、イスラエルはパキスタンを迂回してインドからモノを輸送するための流通路の一部となっているなど、イスラエルはインドによる「ルックウェスト」外交の重要なハブとなっている。

[メキシコ/FDI増加] 

2025年のメキシコにおける海外直接投資(FDI)は、前年比10.8%増の約409億ドルに達し、通年で過去最高を更新した。投資の内訳を精査すると、再投資が全体の67.7%と依然として大部分を占めた。しかし、2025年は新規投資も急増している。前年比133%増の74億ドルに達し、総流入額に占めるシェアは前年の8.6%から18%へと一気に倍増した。これは、多国籍企業がメキシコをニアショアリングの戦略拠点として再定義している実態を示している。最大の投資国は依然として全体の約40?43%の米国だが、その他の主要国の勢力図に変化が見られた。金融およびエネルギー分野での大型案件を背景にスペインとカナダが投資額を伸ばす一方で、これまで上位を維持してきた日本は自動車産業のEVシフトへの投資を継続しているものの、順位を5位(約23億ドル)に下げた。また、中国からの投資も増加しており、米国による関税障壁を回避する動きが加速している。セクター別では、全体の約37%を占める製造業のみならず、金融サービスが26%という大きなシェアを記録した。これは、ニアショアリングに伴う旺盛な資金需要と、デジタル決済への急速な移行が投資を強力にけん引したと考えられ、スペインのサンタデールなども新規投資を拡大したもよう。

 

こうしたマクロ的な潮流の中、2月26日には米コカ・コーラ社による60億米ドル(約9,000億円)の大規模投資計画は、今後のメキシコ投資の将来性を象徴する事例といえる。この計画は、内需拡大に対応する生産能力の増強、水資源管理や脱炭素化を軸としたサステナビリティの追求など、人口増加と所得向上を背景とした巨大な自国消費市場としての側面をとらえたものと考えられる。FDIの増加は、米中対立や物流リスクを受けた「ニアショアリング」の加速と、USMCAの恩恵であり、メキシコ産製品が米国市場へ無関税または低関税でアクセスできるという比較優位は、企業にとって決定的な魅力となっている。製造業投資の約半分が自動車や航空宇宙といった輸送用機器分野に集中しており、北米の製造ハブとしての地位を盤石なものにしている。

 

しかし、こうしたポジティブな構造要因がある一方で、外部環境には依然として無視できない不透明感が漂っている。足元の好調なFDIデータには、2026年に控えるUSMCA再交渉という不透明な未来を見据えた「先取り投資」の側面が含まれており、今後の展望には、対米関係を軸とした地政学的リスクがある。政府の予測では、対米関係の不確実性が緩和されれば投資はさらに加速するとされているが、2026年という時間軸においてその不透明感が完全に解消される見込みは低い。

[日本/生産・小売・物価] 

経済産業省によると、1月の鉱工業生産指数は前月比+2.2%と3か月ぶりに上昇した。基調判断は「一進一退」に据え置かれた。この表現は2024年7月から継続している。内訳を見ると、全15業種中、自動車(+9.1%)やプラスチック製品(+8.1%)など13業種が上昇した。自動車では普通乗用車(+22.9%)や駆動電動・操縦装置部品(+14.3%)などが増加した。一方で、低下したのは生産用機械(▲2.0%)とパルプ・紙・紙加工品(▲0.1%)の2業種だった。生産用機械では半導体製造装置(▲12.7%)、フラットパネルディスプレイ製造装置(▲54.4%)が減少した。先行きについて、製造工業生産予測指数は2月に▲0.5%(補正値▲1.9%)、3月に▲2.6%であり、2か月連続で生産が減少する可能性がある。

 

経済産業省によると、1月の小売業販売額は前月比+4.1%と、2か月ぶりに増加した。12月(▲2.0%)の低下幅が大きかったため、その反動も表れた。基調判断は「緩やかな上昇傾向にある」とされた。また、前年同月比の上昇率は+1.8%となり、2か月ぶりのプラスになった。内訳を見ると、百貨店は前年同月比+2.2%と2か月ぶりにプラスに転じ、スーパーは+2.6%でプラスが継続している。衣料品が減少した一方で、飲食料品が増加した。スーパーは+2.6%で、食堂・喫茶(+4.8%)も増加したため、客足は増えていたとみられる。また、コンビ二は+1.8%、13か月連続で増加した。ファーストフード及び日配食品を中心に商品の販売が底堅かった。家電大型専門店は+9.6%となり、6か月連続で増加した。情報家電や通信家電がけん引した中で、季節家電や理美容家電の販売も底堅かった。ドラッグストアは+4.0%と増加し続けている。食品や健康食品、ビューティ―ケアなどが増加した。物価高の中で節約志向が続いているものの、人の動きが活発な状態も垣間見られた。

 

総務省によると、2月中旬速報の東京都区部の消費者物価指数(総合)は前年同月比+1.6%だった。上昇率は1月(+1.5%)からやや拡大したものの、2か月連続で2%を下回った。内訳を見ると、食料(+3.8%)や被服及び履物(+3.7%)などの上昇が目立った。その一方で、光熱・水道(▲6.6%)や、保育所保育料(▲60.4%)など諸雑費(▲3.8%)が低下した。ガソリン暫定税率廃止や電気・ガス支援などによってエネルギーが▲0.26pt押し下げられた。

[米国/求人状況] 

仕事バイト探しはIndeed。傘下のIndeed Hiring Labの調査によると、米国の求人におけるサインオンボーナス(入社一時金)は減少傾向だが、コロナ前より高水準な状態が続いていると指摘している。 2025年12月時点で、Indeed上の米国求人の約3%がサインオンボーナスに言及している。これは2022年のピーク(約5.6%)からは低下した一方、2019年平均(1.8%)を上回っている。

 

賃金上昇率は鈍化が目立つ一方でこのボーナスは粘着的な動きをしている。 Indeed Wage Trackerでは、求人掲載賃金の前年比伸びが2022年初めの9.5%から一貫して減速し、2025年12月は2.1%まで低下している。賃上げよりも「一度きりの支払い」で採用競争力を確保する動きが労働市場の一部で続いている可能性を示す。

 

サインオンボーナス利用率が高い職種トップ10のうち7職種が医療・社会支援に属するとされ、特に医師・外科医へのボーナス提示は前年よりもやや低下しているが10.6%と高い伸びを維持している。一方で、看護職はボーナスも賃金の伸びも後退。 看護職のボーナスは2024年12月の13.5%から2025年12月の8.4%へと大きく低下しており、求人時の賃金の伸びも2.3%から1.0%へ鈍化している。なお、医療関係以外では運転・配送、会計、設備などの設置・保全などの職種が上位に含まれているという。

 

こうしたボーナスの水準は職種や条件によってさまざまだが、別の報道によれば、おおむね年報の5~10%が一つの目安であるようだ。とくに医療関連では職種や夜勤の有無、不足など緊急度で条件が跳ね上がることもある。契約期間のコミットメントは2年までという条件が多く、ボーナスはその期間内に分割支給というパターンもあって、入社時の後は、1年後、2年後の支払いなども見られている。もちろん、米国の雇用なので経営環境によっては突然の解雇もあり得るが、医療や運送などは高齢化の進展や移民制限もあって人手不足感が強まっており、人材確保が優先されている状況だ。

[ロシア/年次総括報告] 

2月25日、ミシュスチン首相はロシア下院で政府活動に関する年次総括報告を行い、「厳しい外部的課題(制裁)に直面する中でも、2025年のロシアの国内総生産(GDP)は1%成長し、過去3年間で10%成長を達成した」と述べた。さらに、2025年の鉱工業生産は前年比1.3%増を達成したとも語った。2026年からの取り組みについては6つの国家優先課題を提示し、特に人口の維持・増加を最重要課題と位置づけ、政府の使命は「国民を守り、その数を増やしていくこと」だと強調した。

 

一方、2026年に直面する課題としては、インフレ圧力、制裁強化および財政赤字の拡大リスクが挙げられた。特に石油・ガス収入の減少という現実を直視し、2026年の財政赤字はGDP比1.6%を見込んでいるが、この水準を上回る可能性があるという。

[米・イラン/第3回核協議が終了] 

2月26日、イランと米国の第3回高官協議はスイス・ジュネーブで午前10時からお昼の休憩を挟んで約6時間にわたって行われ、これまでで最も長く激しい交渉となった。協議はこれまで同様間接形式で、仲介役のオマーンのバドル外相が双方の主張を取り次ぎ、IAEAのグロッシ事務局長も技術的観点から参加したとのこと。核問題と制裁解除を巡り、双方は「創造的で前向きなアイデア」を交換。イラン外務省は、いくつかの論点で理解が形成された一方、依然として意見の隔たりもあると説明した。今後は3月2日にオーストリア・ウィーンで技術チームが詳細を協議し、その後第4回交渉が再度ジュネーブで開かれる見通しである。

 

イラン側は一時的なウラン濃縮の停止やIAEAの監視強化、備蓄ウランの希釈に応じる可能性を示唆している。ただし核施設の解体や高濃縮ウランの全面的な国外搬出には応じない姿勢だ。これに対し米側は、フォルドゥ、ナタンツ、イスファハンの3つの核施設の解体、全ての高濃縮ウランの米国への引き渡し、期限のない「ゼロ濃縮」合意を要求している。制裁解除に関しては、段階的かつ限定的とする立場で、イランが求める全面解除とは大きな隔たりがある。

 

一方、米国は軍事的圧力も強めており、中東地域に最新鋭戦闘機や迎撃システムを配備。イラン支援のイラク民兵組織カタイブ・ヒズボラは米国のイラン攻撃をけん制しており、また米国内でも強硬的な発言が相次ぐなど、外交と軍事が並行する緊張状態が続いている。交渉は進展の兆しを見せつつも、合意への道筋はなお不透明である。

[エチオピア・イスラエル関係] 

2月25日、イスラエルのヘルツォグ大統領はエチオピアを8年ぶりに公式訪問し、タィエ大統領、アビィ首相と会談を行った。ヘルツォグ大統領はエチオピアを「アフリカ大陸におけるイスラエルの重要なパートナー」だと強調。両国は科学、水管理、農業、エネルギー分野での協力を深めていくことを発表したと報じられている。

 

ヘルツォグ大統領のエチオピア訪問前となる2月22日、イスラエルのネタニヤフ首相は中東地域の過激派対策のための「同盟の六角形」構想を発表。同氏はインド、ギリシャ、キプロスのほか未公表のアフリカ・アジア諸国が含まれると説明したことから、今回の首脳会談でエチオピアが同盟に加入するか注目されたが、それに関する言及はなかった。また、2025年12月にイスラエルが国家承認したソマリアの国連未承認国家ソマリランドに関しても言及はなかったが、これが両国間の主要な議題となった可能性が高いとの見方が多い(2月26日付、Africa Report紙等)。内陸国のエチオピアは2024年1月にソマリランドの港湾の軍事利用等と引き換えに、ソマリランドを国家承認する意向を示したものの、主権侵害だとしてソマリアやアラブ諸国の反発を受けて一旦は引き下がった。しかし、米国と緊密な関係を築くイスラエルがソマリランド独立を承認したことはエチオピアに再考の余地を与えるとの見方もある。

 

イスラエルとエチオピア間の交流の歴史は紀元前にさかのぼるほど深い。現在、イスラエル国内には17万人のエチオピア系ユダヤ人が居住しており、その多くは1980~90年代のエチオピアの混乱の際にイスラエルに逃れた家族と言われている(2月25日付、The Times of Israel)。その一方で、イスラエルがこのタイミングでエチオピアとのさらなる関係強化に乗り出したのは、紅海およびバブ・エル・マンデブ海峡の安定がイスラエルにとって国家安全保障上の重要事項であること、また、同地域における中東諸国の覇権争いが過熱しているためとの見方がある(2月25日付、Al Jazeera紙)。前者に関しては、イスラエルと敵対するイエメンのフーシ派がソマリアの過激派組織アル・シャバブやイランと連携していることがイスラエルにとっての脅威となっている。そのため、イスラエルはイエメンの対岸にあるソマリランドに軍事拠点を設けてフーシ派対策を強化したい狙いがあるとみられる。また、後者に関しては、イスラエルと断交状態にあるトルコのエルドアン大統領が2月17日にエチオピアを訪問。トルコがエチオピアとの関係をさらに強固にすべく動いていることも、直後にヘルツォグ大統領がエチオピアを訪問した動機となった可能性がある。なお、エルドアン大統領はエチオピア訪問中にイスラエルによるソマリランドの国家承認に強く反対している(2月18日付、BBC)。

 

エチオピアはナイル川の水資源問題をめぐってエジプトと、港湾アクセスをめぐって隣国のエリトリアとソマリアとの緊張関係が続いている。しかし、アフリカ第二の人口規模となる1億3,000万人を有し、高い経済成長の潜在性のほか、アフリカ連合(AU)の本拠地がある政治的資本は域外の勢力を惹きつける力となっている。周辺国との対立はありながらもエチオピアはアフリカの角地域での存在感、影響力を徐々に強めている。

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