デイリー・アップデート

2026年3月27日 (金)

[マレーシア/ホルムズ海峡通過許可を取得] 

3月26日、マレーシアのアンワル首相は、イラン・エジプト・トルコとの協議の結果、マレーシア船籍の船舶が、ホルムズ海峡を通過することを許可されたと発表した。

 

同国は原油・石油の純輸入国である一方で、ガスの純輸出国。石油備蓄日数は60日分とASEAN5諸国の中では低くはないが、原油輸入額について湾岸諸国への輸入依存度が約7割となっているため、湾岸諸国からの原油輸入が停滞し備蓄を放出する場合は、備蓄が急速に枯渇することが懸念される。他方で同国は産油国であり、エネルギー供給量のうち8割以上を自国産の原油にて賄えている。石油についても純輸入国ではあるものの、またHSコード品目(4桁)別では集積回路に次ぐ最大の輸出品目であり、輸出額全体の8%を占める(集積回路は23%)など国内の精製能力も高いことが分かる。

 

同国はオクタン価95のレギュラーガソリン及びディーゼルを対象に、燃料補助金を提供している。原油・石油価格高騰により仕入れ価格が高騰する一方で小売価格を維持する場合は、補助金が増額することになる。3月25日には、財務省がレギュラーガソリン小売価格を1リットル1.99リンギット(約79円)に維持するとの報道が出ている(Malaymail、2026年3月25日付記事)。2025年時点での公的債務GDP比は65.3%と、法定上限である65%を上回水準が継続しており、財政赤字拡大により公的債務GDP比が70%を超過した場合には財政懸念上昇による国債金利高騰も懸念される。

 

他方で、同時に国営石油企業ペトロナスからの配当や石油採掘事業を行う石油メジャーからのロイヤリティ収入などの税外収入や彼らの支払う石油所得税も増加するため、財政赤字拡大幅を抑制できることも期待できる。経済省の調査によると、石油関連歳入は歳入全体の17%程度を占める。なお3月26日に政府は、4月1日よりレギュラーガソリンの月当り購入量を300リットルから200リットルまで引き下げることを決定している。レギュラーガソリンの消費量が多い低所得者の政治的な反対やエネルギー価格高騰を抑えつつ、財政収支悪化も防ぐための施策だと考えられる。

 

米国・イスラエルによるイラン攻撃に関し、外務省は2か国へのイランに対する攻撃と、イランによるサウジアラビア、UAE、バーレーン等の近隣諸国への報復攻撃の双方を強く非難している。また3月26日にはアンワル首相が、同じくムスリム国家で直近では米国・イラン間での停戦仲介を実施しているパキスタンのシャリフ首相と電話会談を実施し、パキスタンによる停戦仲介を称賛している。

[台湾/柯文哲の有罪判決] 

3月26日、台北地方法院(地裁)は、台湾民衆党の元主席で前台北市長の柯文哲氏に対し、都市開発をめぐる汚職や政治資金の不正処理などの罪で有罪と認定し、懲役17年、公民権停止6年の判決を言い渡した。被告側は判決を不服として控訴する見通しである。

 

判決では、柯文哲氏が台北市長在任中に関与した大型都市開発案件において、特定企業に対し建築規制の緩和などの優遇措置を与えた点が特に問題視された。本来の基準を大きく超える開発が認められた経緯について、裁判所は「法的根拠を欠く利益供与」であると判断した。

 

また、政治資金の取り扱いも有罪認定の重要な理由とされた。選挙関連のグッズ販売やイベント収益が実質的に政治献金に該当するにもかかわらず、法定の専用口座ではなく民間会社の口座に入金されていた点が問題視され、公益侵占罪が成立すると判断された。さらに、財団法人の資金を選挙活動に流用したとして、背任罪も認定されている。

 

台湾民衆党は、柯文哲氏の個人的な人気と求心力に大きく依存してきただけに、今回の判決により、第三勢力としての影響力が低下する可能性は大きい。一方、柯文哲氏の支持者の間では「政治的迫害」との見方も根強く、社会の評価は大きく分裂している。

 

柯文哲氏と共闘してきた国民党にも波紋が広がっている。結果として、与党・民進党にとって相対的に有利な政治環境が生まれる可能性もあり、今後の地方選挙や総統選挙を見据えた三党競争の構図が再編される契機となり得る。

[テクイントがRIGI適用] 

アルゼンチンの産業コングロマリットであるテクイントが、政府が導入した大規模投資インセンティブ制度(RIGI)の適用を受けることを目的として、バカ・ムエルタに位置する非従来型鉱床へ総額24億米ドルを投資する計画を発表した。投資の中心は、同鉱区北部にあるロス・トルドスIIエステ油田であり、日量7万バレルの原油と、日量450万立方メートルの随伴ガスの生産を目指すとしている。

 

この計画は、RIGIが承認された昨年以降に示されたバカ・ムエルタ上流部門への投資案件としては2件目にあたる。最初の案件は、Pampa Energiaがリンコン・デ・アランダ油田の開発に向けて提示した45億米ドル規模の投資提案であった。RIGIは、6億米ドルを超える大規模プロジェクトを対象とする制度であるが、制度開始当初は案件の動きが鈍かった。しかし現在では約40件のプロジェクトが審査段階にあり、制度の期限とされる2027年半ばまでに、さらに15?20件が提出される見通しとされている。加えて、米国の石油大手シェブロンも、2件の投資プロジェクトを検討していると報じられている。

 

バカ・ムエルタは、近年アルゼンチンの原油・ガス輸出を拡大させる原動力となっており、同国経済の成長期待は新規投資の拡大に大きく依存している。一方で、投資環境や規制を巡る不確実性は依然として大きく、とりわけ国際的な石油メジャーは慎重な姿勢を崩していない。実際、エクソンモービルは2024年に同地域から撤退しており、他の企業もこれまでのところ投資を大幅に拡大する動きには至っていない。現在の原油の生産量は、日量およそ40万~45万バレル、天然ガスは日量8,000万~9,000万立方メートル程度だが、今後インフラ拡充と投資が続けば成長余地は大きく、政府の中期シナリオでは、原油生産は2030年前後に日量70万~80万バレル規模に達する可能性があるとされている。

 

今回のテクイントの発表は、こうした状況下でRIGIがどこまで民間投資を呼び込めるかを見極める試金石となる。 なお、テクイントについては、国営エネルギー企業YPFが進めるパイプラインおよび関連インフラ向け鋼管の調達(入札)をめぐり、ミレイ大統領との対立が注目されていた。ミレイ大統領は、長年続いてきたアルゼンチンの国家主導・保護主義的な産業政策を根本から転換しようとしており、その旧来モデルの中で成長してきたのがテクイントであり、国家プロジェクト、公共投資、エネルギー政策と密接に結びついてきたが、実際、アルゼンチンにとって、外貨獲得と輸出拡大のためには、テクイントのような大企業の投資が不可欠であり、理念的には対立しつつも、実利面では相互依存関係にあるといえる。

[日本/需給ギャップ] 

日本銀行は3月26日、2025年第3四半期(Q3)の需給ギャップが+0.45%だったと発表した。今回、推計方法を見直したことで、2022年Q1以降、15四半期連続のプラスになった。従来は22四半期連続のマイナスであり、大幅に見直しになった。

 

これまで人手不足から、労働投入に関連する部分は、需要超過(プラス)の状態だった。それに対して、 生産設備の稼働率などから算出する資本投入は需要不足(マイナス)だった。しかし、推計方法が見直され、鉱工業生産指数の数量ベースから付加価値ベースに変更されるなど、実体に即したものになった。その結果、製造業の稼働率が上方修正され、特に2021年以降の上方修正が大きくなった。この点については、2010年代以降の海外生産移管の流れの中で、相対的に低付加価値な製品の生産工程が海外に移り、高付加価値な製品の生産工程が国内に残ったことが影響しているとみられる。

 

いわゆるデフレ脱却の4条件を見ると、消費者物価指数は2021年Q4から前年同期比プラス、2022年Q2から2%超で推移している(足元では政策効果もあって2%割れ)。GDPデフレータは2022年Q1からプラス(ただし、22年Q2~Q3はゼロ%)になっている。単位労働費用は2023年Q2からプラスを継続してきた。この中でGDPギャップ(需給ギャップ)のみが条件を満たしていなかった状態だった。

 

内閣府の推計によるGDPギャップは前回の推計で2024年Q4からプラスを維持するように改定された(ただし、2025年Q3はゼロ%)。日銀推計の需給ギャップは2020年Q2以降22四半期連続のマイナスから、今回の推計で2022年Q2からのマイナスは2021年Q4で終わり、2022年Q1から2025年Q3まで15四半期連続のプラス(2025年Q4はまだ発表されていない)という姿に変わった。GDPギャップ、需給ギャップは推計方法などに相違があるものの、経済全体の需給バランスが足元にかけて1年以上の期間にわたってプラス(需要超過)になっている点は共通している。こうした点を踏まえると、デフレ脱却宣言にまた一歩近づいたこと、日銀が追加利上げを実施する根拠が増えたことは事実だと考えられる。

[ロシア/産業家企業家連盟での大統領演説] 

2026年3月26日、プーチン大統領は首都モスクワで行われたロシア産業家企業家連盟(RSPP)の総会で演説を行った後、非公開で執行委員会のメンバーや実業家らと会談した。会談は約2時間に及び、RSPPのショヒン会長は、「プーチン大統領は、イスラエル・米国とイランの対立はおそらく今後3~4週間以内に解決するだろうと述べた」と表明した。一方、ロシア独立メディアによれば、プーチン大統領はウクライナ侵攻について継続する方針を明言し、「ドンバス(ウクライナ東部)の境界まで進む」と述べ、ロシア大手企業側に対し、国家予算への「自主的」拠出を求めた。そして、原油・資源価格の高騰による「超過利潤への過信を戒める」姿勢を表明し、企業・国家財政ともに「穏健で保守的な対応」を求めた。

[米EU貿易合意に向けたEU側の進展] 

3月26日、欧州議会は2025年7月に米国と合意した貿易協定の関連法案を賛成多数で承認した。本手続きは、米国連邦最高裁がトランプ政権の関税措置を違憲としたことや、米側がグリーンランドの領有権を主張したことへの反発から、これまで保留されてきた。

 

法案は、欧州連合(EU)が米国産の工業製品や農水産物の関税を撤廃・削減するとともに、6,000億ドルの対米投資や7,500億ドル規模の米国産エネルギー購入を行うことなどを内容としている。しかし、米国側はEUからの輸入品への関税を最大15%に維持するため、不均衡な協定であるとの批判も議員から上がっていた。

 

米側への不信感から、欧州議会は米国に合意の順守を確実にするための複数の厳格な条件を法案に盛り込んでおり、米国が合意を履行して初めて新関税が発効する「サンライズ条項」や、米国がEUの領土保全を脅かしたり、合意を超える追加関税を課したりした場合に優遇措置を停止できる「停止条項」が追加された。さらに、2028年3月末を失効期限とする「サンセット条項」や、輸入急増による域内産業への被害を防ぐセーフガード(緊急輸入制限)も規定されている。今後は2026年4月13日からEU加盟国と最終的な交渉が始まり、2026年6月以降に最終承認に向けた投票が行われる見通し。

[米国/イラン発電所への攻撃の再度延期を発表] 

トランプ米大統領は、イランとの戦争終結に向けた交渉が進展していることを理由に、イランの発電所などエネルギー施設への攻撃期限を再び延期し、4月6日午後8時(米東部時間)まで延長した。これは既に2度目の延期であり、当初はホルムズ海峡が48時間以内に開通しなければ攻撃すると警告していたが、その後「建設的な対話」が進んでいるとして段階的に猶予を与えている。トランプ氏は、交渉は順調だと強調し、イラン側が交渉を否定しているとの報道を批判しつつ、イランは実際には合意を求めていると主張している。

 

一方で、イランは米国が提示した「15項目の停戦案」に対し正式に回答したと報じられており、現在は米国の返答待ちの状態にある。どのように回答したかは不明。なおイランは、「侵略や暗殺の完全停止」や「賠償金の支払い」、「地域全体での戦闘の終了」などイラン側が求める5つの条件をすでに提示している。現在進んでいるとみられる米・イラン間の間接交渉の仲介にはパキスタン、トルコ、エジプトなどが関与しているとされており、対話継続に向けた調整も行われている。

 

しかし軍事的緊張は依然として高く、イスラエルはイラン革命防衛隊の海軍司令官を殺害したと発表し、双方の攻撃と報復は続いている。さらにホワイトハウスは地上作戦の検討も進めているとされ、事態のさらなる悪化も懸念されている。すでにイラン国内では約1,500人以上が死亡し、米軍にも死者が出ている。

 

また、イランによるホルムズ海峡の封鎖は世界経済に大きな影響を与えており、エネルギー輸送の要衝である同海峡の航行は一部を除きほぼ停止状態にある。トランプ大統領は同盟国に再開支援を求めているが、各国の反応は慎重である。なお、エネルギーインフラへの攻撃は、そもそも国際法上「戦争犯罪」とみなされる可能性があり、人権団体からも強い批判が出ている。

[南アフリカ/政策金利] 

3月26日、南アフリカ(南ア)準備銀行(SARB)は金融政策委員会(MPC)を開催し、政策金利を6.75%に維持すると決定した。決定は全会一致で、金利の据え置きは2会合連続となった。

 

レセチャ・クガニャゴSARB総裁は、冒頭で前回1月のMPC以降に起きた最大の出来事は中東での紛争勃発だったと言及。情勢は依然として極めて不透明であるものの、短期的にはインフレ率が上昇することは明らかだとした上で、インフレ率は直近2月の3.0%から間もなく4%台に上昇すると予測。特に石油・原油の純輸入国である南アでは、燃料インフレ率が第2四半期(4~6月)には18%増になるとの見通しを示した。

 

他方で、インフレ率は2027年末にSARBが目標としている3%に再び収束すると予測。中東での紛争勃発からまだ数週間しか経過していないことにも鑑み、今回は政策金利の維持を決定したと述べた。SARBは南アの実質GDP成長率について、見通しのリスクは下方にあるものの、今後数年間で2%程度まで上昇するとの見通しも示した。

 

また、SARBは今回のMPC開催にあたり、インフレ率上昇の予測に用いたベースラインよりも「厳しい」前提条件を置いたシナリオ案を2つ考慮したと説明。第1のシナリオは、中東での紛争が2か月続き、原油価格が1バレル=100ドル付近で推移し、南ア通貨・ランドが対ドルで5%下落するケース。さらに厳しい第2のシナリオは、紛争が1年以上続き、原油価格が1バレル=100ドルを上回り、ランドが10%下落する場合だ。SARBによると第1のシナリオの場合は、インフレ率は現在の3%から4%以上に加速し、2026年中に政策金利の利上げが1回必要となるが、2027年中にインフレ目標(3%)に戻る。第2のシナリオでは、インフレ率が5%を超え、年内に数回の利上げが行われることに加え、目標値への回復は2028年中に遅れるとするものだ。いずれの場合も経済成長は初期の段階で鈍化し、その後ある程度回復するとの見通しを示している。

 

中東紛争勃発前まで油価が低水準だったことを受け、南ア含めサブサハラ・アフリカ(サブサハラ)の多くの国々でインフレ率が低下し、金融緩和(利下げ)サイクルが続いていた。しかし、ナイジェリアを除きほとんどの国がエネルギー純輸入国であるサブサハラでは、短期的には油価高騰によるインフレ上昇を避けられないとの見方が多い。紛争が長期化し、油価高騰が長引くほどに、インフレ抑制のために各国が金融引き締め(利上げ)の方向に舵を切らざるを得ない状況に陥る可能性が高い。また、インフレの上昇は国民の中でも特に若者や貧困層への打撃が大きいことから、政治的不満を高めやすい点にも注視が必要だろう。

記事のご利用について:当記事は、住友商事グローバルリサーチ株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報に基づいて作成しており、作成にあたっては細心の注意を払っておりますが、当社及び住友商事グループは、その情報の正確性、完全性、信頼性、安全性等において、いかなる保証もいたしません。当記事は、情報提供を目的として作成されたものであり、投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。また、当記事は筆者の見解に基づき作成されたものであり、当社及び住友商事グループの統一された見解ではありません。当記事の全部または一部を著作権法で認められる範囲を超えて無断で利用することはご遠慮ください。なお、当社は、予告なしに当記事の変更・削除等を行うことがあります。当サイト内の記事のご利用についての詳細は「サイトのご利用について」をご確認ください。

30人が「いいね!」と言っています。