デイリー・アップデート

2026年1月22日 (木)

[欧州] 

2026年の原油相場は、供給過剰による相場下落観測にもかかわらず、強含みの出足。1月21日時点でブレント原油は1バレル65ドル台と、年初来7%強の上昇となっている。年明けから、ベネズエラやイランを巡る地政学的リスクが高まり、石油供給に影響を及ぼす可能性が注目されている。しかし、実際に供給損失が発生しているのは黒海地域。

 

ウクライナによるロシアに対する軍事攻撃で、黒海沿岸のノヴォロシースク港にある積み込み施設が損傷。同施設は、内陸国カザフスタンの巨大油田Tengiz油田で産出される軽質低硫黄原油の主要輸出拠点となっており、供給損失は日量90万バレルにも上るとの推定がある。EUはロシア依存低減の観点から、カザフスタンを重要なエネルギー代替調達先と位置付けてきたが、輸送ルートが戦争当事国ロシアを経由する点が構造的リスクとなっている。加えてTengiz油田で発生した火災も稼働低下の要因となっている。

 

また、グリーンランドを巡る政治的緊張を背景に、米国と欧州の対立も深まっている。EUはロシア産ガスから脱却を進める中で、米国産LNGへの依存を高めてきた。米国にとってもLNG輸出の過半が欧州向けであり、大半は企業間の長期商業契約に基づく供給であるため、即時供給不安が生じるわけではない。しかし、ガス供給を巡る政治的な影響や一国への依存に対するリスクが改めて浮き彫りとなった。

[アルゼンチン] 

国家統計局によると2025年11月の経済活動は前年同月比で▲0.3%となった。10月の+3.2%から、14か月ぶりに前年比でマイナスを記録した。前月比でも、10月に続いてマイナスとなっており、景気の回復基調の足踏みが鮮明となった。

 

経済全体がわずかに縮小する中で、好調な分野と深刻な不振に陥った分野が鮮明に分かれたことも特徴で、国内の消費や公共事業の削減に直結する分野の厳しさが目立ち、漁業が▲25%、製造業が▲8.2%、卸売・小売業が▲6.4%、建設業が▲2.3%となった一方、主に輸出や投資に関わる分野が好調で、金融仲介が+13.9%、農業が+10.5%、鉱業・エネルギーが+7.0%となった。

 

2025年上半期は前年比で5~7%台の力強い成長を見せていたが、11月のマイナス転落により、ミレイ政権の経済改革による「回復の持続性」に疑問を呈する声も出ている。

 

ただし、政府はカントリーリスクの低下や投資の増加を背景に、2026年には再び成長軌道に戻ると予測している。貿易面でも、2025年は112億8,600万米ドルの黒字を記録し、2年連続の貿易黒字となった。財政面でも2年連続の黒字(GDP比0.2%)となったことを先日発表しており、ミレイ政権は「双子黒字」(財政黒字と貿易黒字)を2年連続で達成している。

 

このようなことから、国際通貨基金(IMF)も、アルゼンチン経済に対する楽観的な見通しを改めて示し、2026年と2027年共に+4%の成長を予測している。2024年(ミレイ政権初年度)は▲1.3%のマイナス成長となったが、2025年は+4.5%の成長を記録したとみられており、世界全体や中南米の平均を超える成長が続くとみている。

 

ただし、IMFはアルゼンチンの成長見通しにリスクがあると警告している。国際金利の上昇、金融市場の変動性の高まり、世界貿易の悪化などが経済に悪影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要である。

[中国/アフリカ] 

1月21日、米・ボストン大学グローバル開発センターが発表した報告書によると、2024年の中国からアフリカ向けの融資総額は約21億ドルで、2023年の39億ドルから約半減した。新型コロナ禍の2021~22年の10億ドル前後からは回復しているが、アフリカ向け融資がピークを迎えた2016年の288億ドルと比較すると、10分の1以下に減少している。同センターは、中国のアフリカにおける開発金融モデルの再調整が継続していることを反映していると指摘。政府系金融機関によるインフラ・エネルギープロジェクトへの大規模融資から、民間主導の商業性のあるプロジェクトへの対外直接投資(FDI)にシフトするなど選択的にアフリカにアプローチしていると分析している。

 

2024年は中国から計6件の融資が行われ、中国能源建設(Energy China)が建設したアンゴラのルアチモ水力発電所向けの送電線プロジェクトが最大の案件となった(7.6億ドル、中国輸出入銀行)。その他は、アンゴラの首都ルアンダの不動産・インフラプロジェクト(6.9億ドル)、ケニアの道路改良事業(2.7億ドル)、コンゴ民主共和国(DRC)の道路整備(2.4億ドル)、セネガルの水道事業(8,500万ドル)、エジプト国立銀行への中小企業向け融資の信用供与(7,800万ドル)。

 

アンゴラは中国融資の最大の借入国であり、2000年から2024年に中国からアフリカに融資した総額1,808億ドルの約4分の1(490億ドル)を受け入れてきた。うち177億ドルはアンゴラ国営石油公社(ソナンゴル)向けの融資であり、2016年に同社がコモディティショックにより経営危機に陥った際に100億ドルの債務救済措置(recapitalization)を国家開発銀行が行っている。2000年以降、原油調達の多角化を中国が進める中で、アフリカ屈指の産油国であるアンゴラと築いてきた緊密な関係が、2024年に至るまで中国からの融資額に表れているといえる。

 

同報告書では中国が融資するセクターについては、依然として運輸、送電、上下水道、金融サービスなど従来から融資している分野に「基本回帰」している一方で、化石燃料(エネルギー)プロジェクト、発電、情報通信技術(ICT)への追加融資は停止しているとトレンドの変化を指摘している。また、債務負担に苦しむアフリカの懐事情と、中国経済の減速を受けたリスク回避志向の高まりを受けて、これまでの大規模なドル建てのソブリン融資に変わる手段として、人民元建て融資や、FDIとの組み合わせを進めていると指摘。事実として、米・ジョンズ・ホプキンス大学が発表した報告書によると、2024年の中国企業によるアフリカへのFDI(フロー)の総額は33億ドルと、2024年の融資額(21億ドル)を上回っている。中国の最大のFDI受入国(ストック)は南アフリカ(63億ドル)で、銅などの重要鉱物が豊富なDRC(42億ドル)、産油国のナイジェリア(27億ドル)と続く。中国が開発金融とFDIを組み合わせながらアフリカ各国に根を張っていることを示している。

 

なお、中国のアフリカ向け融資総額1,808億ドルのうち、1,431億ドルが中国輸出入銀行、国家開発銀行ら政府系金融機関からの融資で占められる。中国銀行や中国工商銀行ら商業銀行からの融資は160億ドルに留まっていることからも、商業性の乏しいアフリカでの資源周りのインフラプロジェクトなどにいかに中国政府がリスクマネーを供給しているか見てとれる。その一方で、ボストン大学の報告書では、中国の金融機関からの融資は2018年(176億ドル)以降に急減し、世界銀行(約260億ドル)やアフリカ開発銀行(約50億ドル)にも満たない20億ドル台に低下している点を指摘している。

[米国/ウクライナ/ロシア] 

1月22日、米国のウィトコフ特使は、トランプ大統領の娘婿であるジャレッド・クシュナー氏と共にロシアを訪問し、ウクライナでの戦争を終わらせるための最新の和平案をプーチン大統領と協議すると明らかにした。ロシアのペスコフ大統領報道官も、プーチン大統領が1月22日に米国のウィトコフ特使などと会談すると明らかにした。事情に詳しい関係者によれば、プーチン氏は1月初めに、ウクライナおよび欧州諸国との間で調整された和平計画草案を、側近のドミトリエフ特使を通じて受け取った。この文書はウィトコフ、クシュナー両氏のモスクワ訪問を前にプーチン氏が対応を準備できるよう、非公式にロシア側に手渡されたという。ロシア関係者はこの提案について、最終合意には至らないが重要な前進と捉えていると述べた。ロシアにとって関心の高い多くの問題が扱われておらず、また満足のいかない形となっている部分もあるが、そうした論点が、正式に交渉プロセスに取り込まれ始めたこと自体を前向きな兆候とみなしているという。

[米国/欧州/グリーンランド] 

1月21日、トランプ米国大統領はスイスで開かれている世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)で演説し、デンマーク自治領グリーンランドの米国による領有が必要だと改めて主張。武力行使は否定したものの、速やかに交渉に応じるよう欧州に要求するなど強硬な姿勢を維持した。

 

その後のルッテNATO事務総長との会談後、トランプ大統領はソーシャルメディアの投稿で、「グリーンランドに関する将来の合意の枠組みを形成した」と述べ、グリーンランド獲得推進に反対する8か国に課すとしていた10%の関税を撤回すると発表。

 

米国のミサイル防衛システム「ゴールデンドーム」の計画についても、欧州側と交渉が進められ、同交渉はヴァンス副大統領、ルビオ国務長官、ウィトコフ特使が主導する予定とみられる。

 

トランプ大統領のグリーンランドに関する強硬な発言などにより米国株式相場は急落していたが、新たな関税の可能性が回避されたことで、一転して急反発した。

[インドネシア] 

1月21日、インドネシア中銀は、政策金利である7日物リバースレポ金利を4.75%に据え置くことを決定した。2022年以降、高インフレや米国金利上昇を踏まえたインドネシア・ルピア減価を踏まえ政策金利を3.5%から6.25%まで275ベーシスポイント(bps)引き上げたが、その後は4.75%まで150ベーシスポイント(bps)引き下げていた。2025年10月以降は4会合連続で据え置いている。中銀は声明で、今般の決定は為替レートの安定性を維持するための取り組みの一環であると表明している。

 

インドネシア・ルピアは足元にて対ドルで減価が続く。1月8日に公表された2025年度の財政赤字GDP比(速報値)が、プラボウォ大統領の下で実施された無料給食給付プログラムによる歳出増加も踏まえて2.92%と、コロナ禍を除き過去10年間で最大であったことや、1月19日に辞任を発表したジュダ・アグン中銀副総裁の後任候補にプラボウォ大統領の甥であるトマス・ジワンドノ氏が含まれていることも受け、財政政策・金融政策の信認低下が海外投資家に懸念されたことを踏まえたものとみられる。ルピアの対ドルレートは1月20日に史上最安値である1ドル1万6,985ルピアに下落しており、年始より2%減価している(ロイター通信、2026年1月20日付記事)。

 

中銀はこれまでにオフショア為替市場でのノン・デリバラブル・フォワード取引(NDF:差額決済の為替先物取引)や、国内為替市場でのNDF取引、スポット市場への介入を通じてルピアの減価幅・スピードを抑制してきた。中銀は声明で、経済成長を促進するために、インフレ率を目標圏内(1.5~3.5%)に抑えつつ、更に利下げを実施する余地もあると表明しているが、今般はルピアの急激な減価とそれにより輸入インフレが進行する懸念を踏まえて据え置きを決定したものと考えられる。

[日本] 

財務省「貿易統計」によると、2025年の貿易収支は▲2兆6,507億円の赤字だった。赤字は2021年から5年連続。貿易赤字は2022年に20.3兆円まで拡大し、過去最大を記録した。それ以降、毎年ほぼ半減してきており、2023年に9.5兆円、2024年に5.6兆円、2025年に2.7兆円へ縮小した。

 

輸出額は110兆円4,480億円(前年比+3.1%)であり、5年連続で増加した。また、これは比較可能な1979年以降で過去最高の金額だった。ただし、数量は▲0.1%と4年連続で減少しており、価格上昇の影響が大きかった。内訳を見ると、半導体等電子部品(+8.2%)や食料品(+16.2%)、原動機(+5.6%)などが増加した一方で、鉄鋼(▲10.5%)や自動車の部分品(▲7.7%)、自動車(▲1.7%)などが減少した。

 

輸入額は113兆987億円(+0.3%)と、2年連続で増加した。2022年(118.5兆円)につづき、歴代2位の金額だった。数量が+3.7%と、4年ぶりに増加したのに対して、エネルギーなどを中心に価格が低下した影響が大きかった。電算機類(+18.1%)や通信機(+11.7%)、原動機(+17.2%)が増加したのに対して、原粗油(▲11.5%)や石炭(▲26.3%)、液化天然ガス(▲8.5%)などの減少が目立った。

 

2025年を振り返ると、エネルギー価格の低下が目立った。例えば、原粗油の輸入額は▲11.5%、数量は+0.3%なので価格が▲11.8%と低下した計算だ。また、液化天然ガスの輸入額は▲8.5%、数量は▲1.4%なので価格は▲9.9%、石炭の輸入額は▲26.3%、数量は▲2.5%なので価格は▲23.8%であり、それぞれ価格低下の影響が大きかった。

 

関税が引き上げられたこともあり、米国向け自動車輸出額は▲11.4%、数量は▲1.1%と減少した。この差である▲10.3%が価格低下したことになる。また、米国の半導体・装置規制を控えて増加していた中国向け半導体等製造措置輸出額は▲12.2%(数量▲4.5%)と、減少に転じている。ただし、アジア全体では+6.6%(数量+3.7%)と増加しており、中国向けの減少分を韓国や台湾向けなどの増加で補った。なお、円相場は2024年の1ドル=150円97銭から2025年には149円69銭へ0.8%円高だった。

記事のご利用について:当記事は、住友商事グローバルリサーチ株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報に基づいて作成しており、作成にあたっては細心の注意を払っておりますが、当社及び住友商事グループは、その情報の正確性、完全性、信頼性、安全性等において、いかなる保証もいたしません。当記事は、情報提供を目的として作成されたものであり、投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。また、当記事は筆者の見解に基づき作成されたものであり、当社及び住友商事グループの統一された見解ではありません。当記事の全部または一部を著作権法で認められる範囲を超えて無断で利用することはご遠慮ください。なお、当社は、予告なしに当記事の変更・削除等を行うことがあります。当サイト内の記事のご利用についての詳細は「サイトのご利用について」をご確認ください。

30人が「いいね!」と言っています。