デイリー・アップデート

2025年7月24日 (木)

[米国/南アフリカ(南ア)] 

7月22日、米下院外交委員会は「2025年米・南ア二国間関係見直し法」を34対16の賛成多数で可決した。同法案は、南ア政府と最大政党「アフリカ民族会議(ANC)」の主要メンバーを、人権侵害や汚職に関与したとして「グローバル・マグニツキー人権問責法(注)」に基づいて制裁を課すことを想定したもの。第2期トランプ政権発足後から、トランプ氏は中国、ロシア、イランと緊密な関係を築き、パレスチナ問題でイスラエルを批判する南アを、「米国にとっての安全保障上の脅威」と位置づけ、対外援助の停止や30%の相互関税を課すと発表するなど「標的」としてきた。

 


同法案はトランプ氏支持者であるテキサス州選出のロニー・ジャクソン共和党員により提出された。共和党員は28人全員が賛成。親南ア派党員が多い民主党は、16人が反対したものの6人は賛成に回った。同法案は米議会の夏季休会後の9月に下院で本会議に提出される見込み。下院で採択される可能性は高いとの見方が多い。法制化には下院通過後に上院での可決が必要となるが、上院でも共和党が多数派を占めているため可決される可能性はある。

 


アフリカを対象とした米財務省外国資産管理局(OFAC)によるグローバル・マグニツキー法に基づく経済制裁は、直近では2025年1月に内戦が続くスーダンの紛争当事者らに対して、また2024年にジンバブエのエマーソン・ムナンガグワ大統領らに対して行われた。南アでも2019年に「国家収奪」に関わった政商・グプタ氏らに対して発動されたが、南ア政府やANC党員に対する措置は前例がない。5月のトランプ大統領と南ア・ラマポーザ大統領との二国間対談でトランプ氏に対して直接南アの実情を説明するなど、これまで南ア政府は米国との関係改善に努めてきたが、仮に同法案が法制化することとなれば、両国間の関係のさらなる悪化は免れない。

 

(注)グローバル・マグニツキー人権問責法:2016年に成立した米国法。人権侵害や汚職に関与していると特定された外国人に対して、米国への入国禁止や米国内の資産凍結を行う権限を大統領に与えるもの。

[ウクライナ/ロシア] 

7月23日、ウクライナとロシアの代表団は、トルコ・イスタンブールで直接交渉し、双方が6月に提示した和平案などについて協議をしたが、立場の隔たりは大きく、停戦で実質的な進展はなかった。今回の交渉は5月以降3回目。交渉でウクライナ側は、無条件の停戦と8月末までの首脳会談の開催を要求した。それに関して、ロシア側は負傷者を収容するため、前線で24時間または48時間の停戦実施を主張。首脳会談については、和平条件の詳細な検討が先決だとして難色を示し、「首脳会談は協議のためでなく、署名のためにある」とし、否定的な姿勢を示した。一方、ロシア側は政治・人道・軍事問題に関する3つのオンライン作業部会の設置を提案し、双方は少なくとも1,200人ずつの捕虜交換で合意したと述べた。また、ロシアは3,000人のウクライナ兵の遺体引き渡しも持ちかけたという。結局、双方は接触継続では合意したが、第4回協議が実現されるかどうか未知数である。

[米国] 

7月23日、ギャバード米国家情報長官が会見を行い、オバマ元民主党政権が情報を操作し、2016年米国大統領選の結果について、国民に疑念を抱かせるよう工作を行ったと主張した。ギャバード氏によると、オバマ元大統領および当時の政府高官は、その根拠が薄弱であるにも関わらず、ロシアが選挙干渉を行い、かつロシアはトランプ候補の勝利を志向していた、と言い立て、国民を混乱させたと非難した。そして、これはオバマ政権によるインテリジェンスの武器化・政治化であるとして、司法省に通告したことも明らかにした。


ロシアによる選挙干渉については、当時のトランプ陣営がロシア側として共謀し、かつ司法妨害すら図ったのではないかとの疑惑が持ち上がり、2017年には特別捜査官が任命され、司法省の下で捜査が行われたが、最終的に共謀はなかったと結論付けられている。

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