2026年2月5日 (木)
[米ロ関係] 2026年2月5日、米国とロシアによる核軍縮条約 「新戦略兵器削減条約(新START)」 が失効し、世界の核弾頭の大半を保有する両国の間に核軍縮条約が存在しない状態となった。トランプ大統領は、新たな核軍縮の合意に向けては中国を組み込むべきだと主張しているが、具体的な動きはなく、核兵器をめぐる各国の競争が加速するおそれもある。ロシアのプーチン大統領は 2025年9月、条約を事実上1年間延長することを提案したが、米国のトランプ大統領は 2026年1月、 米国メディア のインタビューで「失効するならそうなるまでだ」と述べ、失効を容認する姿勢を示した。 一方、中国中央電視台(CCTV:中国国営放送) によると、習近平国家主席とロシアのプーチン大統領が 2026年2月4日、オンラインで会談した。米国とロシアの間の核軍縮枠組みである 新戦略兵器削減条約(新START) が5日に失効するのを前に、両首脳は中ロの戦略的連携や意思疎通の強化を確認した。
[中ロ・米中首脳会談] 2月4日、中国の習近平国家主席は、ロシアのプーチン大統領とビデオ会談を行った後、米国のトランプ大統領と電話会談を行った。 米中首脳会談に関する中国側の発表によれば、習近平はトランプに対し、台湾問題は米中関係における最重要かつ最も敏感な問題であり、米国は台湾への武器売却問題に慎重に対処すべきだと述べた。現在、米国政府内で検討されている台湾向けの大規模な武器売却について、中国側が強い警戒感を示しており、特にそれが4月のトランプ訪中前に実施されることに反対する姿勢を示したとみられる。 一方で、中国側の発表には含まれていないものの、トランプが自身のSNSに投稿した会談内容によれば、台湾問題に加え、ロシア・ウクライナ戦争やイラン情勢などについても意見交換が行われたとされている。 トランプとの電話会談に先立ち、習近平がプーチンとビデオ会談を行ったのは、4月の米中首脳会談を見据え、イラン情勢やウクライナ戦争をめぐる認識についてロシアと事前にすり合わせ、対米交渉でより有利な立場を確保しようとする姿勢の表れとみられる。ある中ロ関係の専門家は、今回のプーチン・習近平会談では、特にイラン情勢が主要議題となった可能性が高いと指摘している。エネルギー輸入国である中国と、主要輸出国であるロシアでは、イラン情勢をめぐる利害は必ずしも一致していないが、ロシア側の発表によれば、中ロ両国は「安全保障会議、外務、国防当局を含む常設協議メカニズムの維持・強化」と、「機微な問題を含む迅速な政策調整」で一致したとしている。 他方、米国は同日(2月4日)、ワシントンに55か国を招き、「重要鉱物サミット」を開催した。中国への依存低減と重要鉱物の安定供給確保を目指す国際協調を打ち出すことで、4月の米中首脳会談を自国により有利な環境で進めたいとの思惑があるとみられる。 米中両国は現在、緊張が一時的に緩和された状態にあり、両国首脳とも4月の会談の成功を望んでいるとみられるが、台湾問題や地政学的対立をめぐる根本的な立場の違いは依然として大きく、会談に向けた駆け引きは今後も水面下で激しさを増していく可能性が高い。
[ユーロ圏の消費者物価指数] EU統計局(Eurostat)によると、1月のユーロ圏の消費者物価指数(HICP)は前年同月比+1.7%だった。上昇率は2025年12月(+2.0%)から縮小し、2024年9月(+1.7%)以来の低さになった。また、物価の基調を表す食品とエネルギーを除く指数(コア指数)は+2.2%であり、12月(+2.3%)からやや縮小した。2025年5月以降、2%台前半の上昇率が継続しており、2021年10月(+2.0%)以来の低い伸びになった。 内訳をみると、食品が+2.7%で、12月(+2.5%)から上昇率を拡大させ、9月(+3.0%)以来の伸び率になった。その一方で、エネルギーは▲4.1%と、11か月連続のマイナス。12月(▲1.9%)からマイナス幅を拡大させた。非エネルギー工業財は+0.4%であり、12月(+0.3%)からおおむね横ばいと、2か月連続で0%台前半になった。サービスは+3.2%で12月(+3.4%)から縮小し、9月(+3.2%)以来の伸び率だった。 国別にみると、ドイツが+2.1%で、12月(+2.0%)から横ばい、2%前後で推移している。イタリアは+1.0%と、12月(+1.2%)から縮小し、10月以降1%台前半を推移してきた。フランスは+0.4%、12月(+0.7%)から縮小、4か月連続で1%割れだった。スペインは+2.5%、8月以来初めて3%を下回った。ユーロ圏21か国の中で、フランス(+0.4%)が最も低く、イタリア(+1.0%)がそれに次いだ。反対に最も高いのはスロバキア(+4.2%)であり、クロアチア(+3.6%)、ラトビアとアイルランド(それぞれ+2.6%)が続いた。 この物価動向を踏まえて、2月5日に開催される欧州中央銀行(ECB)の理事会では、政策金利が据え置かれると予想されている。据え置きとなれば、5会合連続になる。
[米国・中国の大豆貿易] 2月4日、米中首脳は長時間にわたり電話会談を実施。トランプ大統領のSNS(Truth Social)投稿によれば、貿易・軍事・地政学・4月の訪中計画など幅広い議題を協議した。 そのなかで、トランプ大統領は、中国が2026/27年度の米国産大豆購入量を1,200万トンから2,000万トンに引き上げる可能性に言及。2026/27年度は既に2,500万トン購入のコミットメントがあるとし、全体として「非常にポジティブ」と評価。個人的関係も良好と強調した。中国の米国産大豆購入について、中国側からは公式確認・発表は出ていないが、シカゴ大豆先物価格(2026年3月限)は終値で前日比2.5%上昇し、1ブッシェル10.9225ドルで取引を終えた。 これとは別に、中国国務院は2月4日に公表した「2026年中央一号文件」で、2026年の農業基本方針を示している。共産党で農業部門を指導する韓文秀氏は、この指導文書について、農業貿易と生産の調整を促進することが政策の主軸にあると説明。非主食も含めた国内農業生産の安定的な発展を図り、農業の品質・効率・競争力を高めて国内供給を確保すると同時に、優位性のある特色ある農産品の海外展開を推進するとした。 また、超大規模市場の優位性を発揮して国際農産物貿易に深く参画し、国内で不足している農産物の輸入拡大を進める方針も示した。大豆・油糧種子については「国内生産強化+輸入依存低減」路線は維持しつつ、輸入元の多元化を推進するとみられる。
[チリ 財政収支は期待外れに] チリの12月の財政は、歳出が大幅に増加する一方で歳入は予想を下回った。歳入は前年同月比で6.0%減少し、4か月連続の縮小となった。これは景気に左右されやすい非鉱業部門の税収が低迷したため。政府収入の約8割を占める非鉱業税収は前年比9.2%減となり、国内需要の弱さを裏付けた。銅価格が比較的堅調であったにもかかわらず、収入は政府の見通しを大きく下回った。 一方で、鉱業関連の収入は部分的に下支えとなった。民間鉱業の税収は前年比21.2%増加し、国営企業コデルコの利益も30.2%増加した。これは銅価格と新しいロイヤルティ制度の恩恵を受けたためである。しかし、生産量の減少や供給の一時的混乱により、財務省が期待した水準には届かなかった。 歳出面では、資本支出と人件費の増加が中心となり、12月の実質支出は前年比8.0%増加した。とくに教育分野での人件費は9.0%増と大きく伸び、公共事業や緊急住宅計画を反映した資本支出は25.0%増と急増した。歳出の強い伸びと景気敏感な収入の弱さが重なり、2025年の通年赤字はGDPの2.8%となり、財務省の予測値である2.0%を大きく上回った。また、構造赤字も約3%に達するとみられ、これにより財政規律は3年連続で違反することになり、政策への信頼性が低下している。 今後については、新政権が歳出削減を進め、景気回復に伴う税収改善が遅れつつも、2026年には財政再建が徐々に再開される見込みである。ただし、リスクは依然として上下両方向に存在する。非鉱業収入は弱い水準からの出発となるが、銅価格やリチウム価格が上昇すれば、国家財政の緩衝力回復に寄与する可能性がある。 今後の注目は、3月11日に発足する新政権が最初の90日間で示す財政方針であり、特に4月1日に予定される法人税減税を含む税制改革の発表が焦点となる。
[南ア第二政党・党首辞任] 2月4日、南アフリカ(南ア)第二政党「民主同盟(DA)」のジョン・スティーンヘイゼン党首(兼・農業相)は4月に行われるDAの党首選に出馬しないと表明した。スティーンヘイゼン氏は2019年から2期にわたり党首を務めてきたが、党首辞任の理由として国内で拡大する口蹄疫問題に対処するため、農業相の職に専念するとしている。DAは国内の白人農家を支持基盤としていることから、口蹄疫対策の失敗をめぐりスティーンヘイゼン氏に対する支持者からの反発が高まっていた。 DAは1994年に初めて南アで行われた全人種参加型選挙以降、常に野党第一党として故ネルソン・マンデラ元大統領率いる最大政党「アフリカ民族会議(ANC)」と政策論争を繰り広げてきた。しかし、アパルトヘイト廃止から30年が経過する中、経済成長の伸び悩みやANCの汚職、インフラの荒廃、ANC内部の分裂などを受けてANCの人気は低下し、2024年の総選挙でANCの支持率は40.18%と過去最低を記録。はじめてANCは単独過半数の座を失った。一方で、親ビジネス派でクリーンな政治をモットーとするDAは同選挙で21.80%の票を得てANCとの票差を大きく縮めた。ANCとして連立政権の構築が必須となった中、歴史的にANCに対抗してきたDA内での反対派を振り切って国民統一政府(GNU)への加入に踏み切ったのがスティーンヘイゼン党首だ。DAの加入により、ANCへの監視機能が働き、企業信頼感が増したことを受けて南ア経済は回復の兆しをみせている。スティーンヘイゼン氏は自身が決断したGNUへの加入をDA党首としての最大の成果だと公言している。ANCのラマポーザ大統領からの信頼も厚く、2025年5月にホワイトハウスで開かれたトランプ大統領との首脳会談の際にもスティーンヘイゼン氏を同席させている。同氏は白人の立場から、白人のみを特定した虐殺は行われていないとする事実関係をトランプ氏に伝えている。 他方で、今回のスティーンヘイゼン氏の党首辞任について、「農業相の職に専念したい」という理由は見せかけのものに過ぎず、党内での信用失墜が理由だとの意見が多くみられる(2月3日、4日、Daily Maverick紙等)。DAの財務責任者を務め、スティーンヘイゼン氏への反発を強めていたディオン・ジョージ環境相が2025年11月の内閣改造により辞職に追い込まれたが、この背後にスティーンヘイゼン氏がラマポーザ大統領に解雇を要請したと報じられている。その直後にジョージ氏は、スティーンヘイゼン氏本人名義のクレジットカードの未払い債務問題により裁判所で判決を受けていたこと、また、同氏が党所有のクレジットカードを利用してUber Eatsの利用料を私的に流用したなどと告発。結果的に党内の調査でスティーンヘイゼン氏の疑惑は晴らされ、ジョージ氏がDAを離党する形で決着した。しかし、DAの有権者への最大の売りは「金銭的不正がないこと」であることから、この金銭トラブルによりスティーンヘイゼン氏は党の重鎮であるヘレン・ジル前党首ら党内有力者や支持者の批判を買い、農業相の職を維持することを引き換えにDA党首の座を譲る決断を行ったとみられている。 スティーンヘイゼン氏の公認候補としては、DAの最大の支持基盤であるケープタウンの市長を務めるゴーディン・ヒル=ルイス氏と目されている。ヒル=ルイス氏はスティーンヘイゼン氏を「長年の友人」と評し、党首選への出馬の意欲を示していなかったが、同氏の辞任により道が開かれる。また、ヒル=ルイス氏は、ジル氏がDA党首を務めていた時の首席補佐官を務めていたことから、事実上ジル氏の側近とみられている。南アでは11月から2027年1月の間に「統一地方選」が実施される予定で、その中でも最大都市ヨハネスブルグ市長選に注目が集まるが、ジル氏が立候補を表明し、DA初の勝利を目指している。仮にジル氏が勝利することになれば、DA次期党首として目されるヒル=ルイス氏との連携強化は必須となり、ジル氏の党内での影響力もさらに強化される見込みだ。 英FT紙は、スティーンヘイゼン氏が辞任しても、GNUの安定性は一定程度保たれるだろうが、投資家たちは今後のビジネス環境への影響を注視するだろうと指摘。他方で、2027年に実施されるANC総裁選でラマポーザ大統領の後継者を選ぶことが決まっている中、仮にポール・マシャティレ副大統領が選出されれば、DAはGNUから離脱するとの見方もある(2月4日付、Africa Report紙)。
[EUの対ウクライナ支援策] 2月4日、EU理事会は、2026年から2027年にかけてウクライナに対し900億ユーロの融資を提供する法的枠組みについて合意。2025年12月に開催された欧州理事会で合計900億ユーロの融資で合意されていたが、その詳細について調整が続いていた(チェコ、ハンガリー、スロバキアは本融資に不参加)。 本融資策は、ロシアによる侵略戦争が続く中でウクライナの緊急の財政ニーズに対処するため、同国の一般予算および国防上の必要性を支援することを目的としている。理事会は欧州議会との迅速な合意を目指しており、2026年第2四半期の早い段階での支払開始を目標としている。 本融資策はEUが資本市場で借り入れを行うことで賄われ、EU予算によって裏付けられるが、返済義務が生じるのはロシアがウクライナに賠償金を支払った後のみとされている。資金の提供はウクライナ自身が策定する資金調達戦略に基づいて決定され、法の支配の遵守や汚職対策等が条件とされている。 提案された枠組では、300億ユーロは通常予算の支援のため提供され、残りの600億ユーロは防衛産業能力への投資や軍事装備調達の目的で提供される。防衛製品の調達は原則としてEU、ウクライナ、またはEEA-EFTA諸国の企業に限定されるが、緊急の軍事ニーズがある場合や、特定の条件を満たす第三国に関しては例外措置が認められる。
[ミャンマー総選挙] 2月3日、ミャンマー軍事政権下の選挙管理委員会は、1月25日に投票が終了した総選挙の最終集計を発表した。今回総選挙では、上下両院計644議席のうち、憲法で定められた軍人枠166議席、及び内戦の影響を踏まえ投票を見送った78議席を除いた420議席が争われた。このうち、国軍系のUSDP等が339議席(約81%)を獲得した。なお、投票率は55%と軍事政権が事前に目指していた目標値50%を上回ったものの、2020年の前回総選挙での投票率(7%)を大きく下回った。 これにより、軍人枠と合わせ、上下両院で計505議席(約76%)を獲得した。 今後は3月の第3週に新議会を招集し、大統領を選出する予定である。具体的には、上院、下院、軍人議員から各々議長団を選出し、三名の中から大統領を選出する流れが想定されている。残りの2名は副大統領に就任する。 2月3日、軍事政権は新大統領に対し、立法や国防、司法等について助言や調整を担う連邦諮問評議会を新設すると発表した。現行憲法では国軍トップが大統領を兼任することはできないため、仮にミンアウンフライン総司令官が大統領に選出された場合は総司令官を辞任すると見込まれる。一方でその場合も、本評議会の議長職を兼任することで国軍への影響力を維持するとの見方がある(Channel News Asia、2026年2月4日付記事)。 なお国営紙は、連邦諮問評議会は国家レベルの政策および制度運用について助言と調整を行うことを目的とした法定機関であり、立法権や行政権を直接行使する権限は持たず、憲法に基づく政府および議会の権限を代替するものではないと説明している。
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