2026年2月24日 (火)
[米・イラン/核協議]
米国とイランが2月26日にジュネーブで3回目の高官協議を行う予定であることを、仲介国であるオマーンが明らかにした。2月6日、17日に続く協議で、イランが核合意に向けた詳細な提案を示す見通し。トランプ政権は2月24日までに提案書を受け取る想定で、今回が「最後の外交機会」となる可能性が高い。
米側はイラン国内でのウラン濃縮「ゼロ」を基本要求とする一方、核兵器への道を完全に断つ証明があれば「象徴的濃縮」を検討する余地も示唆しており、暫定合意の可能性も排除していない。これに対しイランは、濃縮の全面放棄は不可と強調。報道では、3年間の濃縮停止や高濃縮ウランの国外搬出案を提示したが、大きな進展はなかった。
トランプ大統領は2月19日に、和解期限を「最大15日」と警告し、決裂すれば核・ミサイル施設攻撃や要人排除を含む軍事行動も辞さない構え。イスラエルは先週末の攻撃を想定していたが延期された。米国はレバノンの大使館員退避を命じ、中東に空母や航空戦力を増強。攻撃確率は上昇しているとの分析もある。
ただし米軍制服組トップは長期紛争化のリスクに慎重姿勢を示しており、トランプ政権内でも意見は割れている。世論も対イラン戦争に否定的とされる。イラン国内では学生デモも続く中、交渉が妥結できるか、軍事衝突に発展するかが重大な分岐点となっている。
[インド・ブラジル/首脳会談]
2月21日、インドのモディ首相は、ニューデリーで開催されていた「AIインパクト・サミット」出席を機に訪印したブラジルのルーラ大統領と会談を実施。同日にインド政府より公表された共同声明の中では、両国の貿易総額を2024年度(2024年4月~2025年3月)時点での約152億ドルから2030年までに300億ドルまで倍増させることを目指すとした。また今後10年間にわたり、①防衛・安全保障、②食料安全保障、③気候変動リスク・脱炭素対応、④デジタル技術、⑤産業の5つの分野での協力に合意した。
特に③に関し、両国政府間で「レアアースおよび重要鉱物に関する協力に関する覚書」が調印された。インドはレアアースの埋蔵量が世界3位である一方、ブラジルも中国に次いで世界2位の埋蔵量を誇る(Amicus Growth Advisors)。直近では、世界最大の埋蔵・生産国である中国による輸出規制措置を踏まえ、インド国内の自動車産業(特にEV製造工場)などで生産ラインが一時停止するなど、中国によるレアアースの「武器化」が経済活動に直接的な影響を及ぼしている。2025年度にはレアアースを使用した磁石で、EV用モーターや風力発電用タービンなど再生可能エネルギー関連製品に広く使用されるレアアース磁石を製造する企業向けに、設備投資・売上高に応じて補助金を供与するレアアース永久磁石製造スキームを公表したほか、2026年度予算案ではレアアースの埋蔵量の特に多い南東部4州に探査・採掘・精錬を支援する「レアアース回廊」の新設を公表しており、レアアースの脱中国依存を図っている。今回の覚書では、レアアースの探査・採掘から精錬・リサイクルまでの工程における両国の協力が確認されている。
このほかでは「鉄鋼サプライチェーンのための鉱業分野における覚書」が調印されており、(鉄鉱石など)鉄鋼関連の鉱物資源にかかる探査・採掘分野で両国が協力することに合意した。ブラジルは世界有数の鉄鉱石生産国である一方、インドはインフラ整備も追い風に鉄鋼需要が拡大しているため、インドとしてはブラジルからの鉄鉱石輸入拡大を狙っていると考えられる。
両国が加盟するBRICSに関し、2026年はインドが議長国であり、第18回BRICS首脳会議をインド国内で実施する。共同声明の中では、モディ首相はルーラ大統領を会議に招待する意向であることも表明されている。
[中国/EV価格競争力の要因]
米調査機関ロジウム・グループは、中国製EVが低価格である理由について、政府補助金による不公正競争だけが原因ではなく、サプライチェーンの高度な統合、巨大市場による規模の経済、技術革新、激しい国内競争といった構造的要因によるものだとするレポートを公表した。中国では中央・地方政府による補助金、税制優遇、研究開発支援、低利融資などの政策支援が行われてきたが、価格優位の本質はそれだけではなく、産業構造全体に根差した競争力にあると指摘している。
特に重要なのが、バッテリーや重要鉱物の加工、主要部品の製造までを国内で担う高度に統合されたサプライチェーンである。寧徳時代(CATL)や比亜迪(BYD)に代表される企業群を中心に垂直統合が進み、調達・物流コストの大幅な抑制が実現している。
また、中国は世界最大のEV市場を有しており、大量生産による規模の経済が固定費を分散させ、価格引き下げを可能にしている。加えて、国内市場における激しい競争が、企業の効率化と技術革新を強力に促している。EV専用設計や部品点数の削減、バッテリー構造の簡素化など、設計段階からコスト最適化が図られている点も大きな特徴である。
他国が単純に関税引き上げや保護主義的措置を講じるだけでは、競争力の格差は埋まらず、バッテリー供給網の強化、重要鉱物の確保、研究開発投資の拡充、国内生産基盤の整備といった包括的な産業政策こそが必要であるとしている。
[ブラジル/多角的外交戦略]
ブラジルのルーラ大統領は、インド、韓国へ訪問し、複数のパートナーシップの構築を目指す外交戦略を進めた。ブラジルは特定の大国への依存を減らし、新興経済国との結びつきを強化して、より広範な外交・経済的選択肢を確保しようとしている。
インド訪問は、貿易やAI、製薬、さらに世界的に重要性が増している重要鉱物分野での協力を進展させる。 まず、締結された重要鉱物をめぐる覚書では、ブラジルはこれまで特定国との関係に依存する形で資源戦略を進めてきたが、今後は複数国と、より協調的で安定した戦略を確立しようとしている。覚書では、特にリチウムやレアアースなど、EVやハイテク産業、そしてAIインフラ(データセンターなど)に不可欠な資源のサプライチェーンを構築するため探査・採掘・加工の共同推進をおこなうこと、単にブラジルから未加工の鉱物を輸出するだけでなく、現地での加工技術も共同開発し自国産業の高度化を目指すこと、特定の国に偏った資源供給網を多角化し、グローバル・サウス諸国間での自律的な経済圏を強化することなどが合意された。とくに中国依存度の引き下げは、両国の長期的な政策目標の一つだった。
一方、AIについては、「AIの民主化」を目指して、両国が協力することが確認された。 欧米(欧州の規制や米国の民間主導)とは異なる、発展途上国の現実に即したAIガバナンスを確立することを目指し、AI技術が先進国に独占され、歴史的な不平が拡大することを防ぎ、一部の企業だけでなく、社会全体に利益が行き渡る「AI for All」の実現を目指す姿勢が示された。農業(収穫予測や気候変動対策)、医療(遠隔診療など)、教育など両国に共通する社会的な課題を、AIを活用して効率的に解決することを目指す。
また、2月21日には鉱業および鉱物分野での協力拡大を目指す協定にも署名した。ブラジルは世界有数の鉄鉱石生産国であり、インド政府は、ブラジルとの協力を強化することで、インド鉄鋼業の長期的な成長に必要な原材料や技術へのアクセスが改善すると説明している。
インドは、インフラ整備や工業化の進展により国内需要が増加し、企業は生産拡大を続けている。こうした背景のなか、両国は貿易パートナーシップを一段と強化し、現在約150億米ドルの二国間貿易額を、今後5年間で200億米ドルを大幅に超える水準に引き上げるとした。
[米国/物価上昇率の拡大]
商務省によると、2025年12月の個人消費支出(PCE物価指数)は前年同月比+2.9%だった。上昇率は11月(+2.8%)から2か月連続で拡大した。
物価の基調を表す食品とエネルギーを除くコア指数は+3.0%であり、これも11月(+2.8%)から拡大し、2月以来の大きさになった。物価の基調を捉える上で注目されているその他の指標を見ると、市場ベースのPCE物価指数は+2.7%と、11月(+2.5%)から拡大し、2023年11月(+2.7%)以来の大きさになった。市場べースのコア指数も+2.7%で11月(+2.5%)から拡大、2024年3月以来の高い伸び率だった。また、エネルギーと家賃を除くサービス(スーパーコア)は+3.3%で、11月(+3.4%)から小幅に縮小したものの、2025年3月以降、3%前半で推移しており、大きな変化はなかった。
内訳をみると、食品は+2.1%、11月(+2.0%)から拡大した。2025年後半に2%台前半までに上昇してきた。エネルギーは+2.2%で、11月(+4.4%)から縮小したものの、4か月連続のプラスだった。財は+1.7%、3~4月(▲0.3%)を直近ボトムに上昇傾向が続いている一方で、サービスは+3.4%と9月から同じ上昇率で高止まりしている。
また、財のうち、非耐久財(+1.6%)に比べて耐久財(+2.1%)の上昇が目立った。その耐久財では、家具・家庭用耐久財は8か月連続のプラスで、上昇率を11月(+2.2%)から+4.0%へ拡大させた。その他では、娯楽財・乗り物が+1.8%となり、6か月ぶりのプラスに転じた。また、自動車・同部品は+1.2%で、11月(+1.8%)から縮小した。
関税の影響などもあって、物価上昇率は足元にかけてやや拡大している。関税コストの転嫁が一段落すれば、物価上昇率は2%に向かって縮小すると予想されているものの、そうした軌道に乗っているという確信を金融政策当局は持てていない。
[ロシア/ウクライナ侵攻]
2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻は開始から4年を迎える。両軍の死傷者・行方不明者は推計で約200万人に接近している。民間人についても、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)によると、ウクライナはこれまでに少なくとも1万5,172人が死亡した。
また、世界銀行の最新の発表では、ウクライナの直接的な被害額は合計約1,950億ドル(約30兆円以上)に達し、再建費用は今後10年間で5,880億ドル(約91兆円)必要になるとの試算が示されている。さらに、2025年12月現在、600万人以上のウクライナ人が国外で、460万人が国内で避難生活を送っていると指摘されている。
一方、侵攻の日数は2026年1月で、第2次大戦でソ連が約2,700万人の犠牲者を出したとされる独ソ戦の1,418日間を超えた。長期化する侵攻は、ソ連のアフガニスタン侵攻(1979~89年)のように泥沼化の一途をたどっている。
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