FRBと政治(その4)
連邦最高裁判所は6月29日、トランプ大統領が2025年8月にクック連邦準備理事会(FRB)理事を即時解任したことを認めない判決を下した。これを受けて、FRBと政治の問題が再び意識されるようになっている。
今回の発端は、トランプ氏が2025年8月に、クック氏が住宅ローンを不正に契約したとして、FRB理事の解任を発表したことだった。クック氏は解任を差し止めるために提訴し、これまで連邦地裁と控訴裁は係争中の留任を認めた。そのため、クック氏は連邦公開市場委員会(FOMC)に引き続き参加するなど、業務をこなしてきた。一方、トランプ政権は最高裁に訴え、判断を仰いでいた。
今回の判決は、解任の正当性について裁判が続いている間は解任できないというものだった。FRBの独立性を守るために、必要な措置だという認識だった。仮に即時解任、係争中の解任が可能になれば、連邦準備法が求める正当な理由なしに大統領が自由にFRB理事を解任できるようになってしまうためと、説明された。
ただし、今回の判決は、いわば手続き上の話であり、トランプ氏がクック氏の解任を公表した理由について判断したものではない。そのため、今後裁判が継続することになり、クック氏が今後解任される可能性は残されている。実際、今回の判断に不服があるトランプ政権は、クック氏解任のために別に手立てを講じるとみられている。
トランプ政権はこれまでクック氏やパウエル前議長などを標的に、利下げを実行するよう政治的な圧力を加えてきた。それに対して、FRBの金融政策の独立性の下で、経済・物価動向を踏まえて、利下げを実行してこなかった。
こうした中で、5月にウォーシュ氏がFRB議長に就任した。就任直後のFOMCでは、声明文からフォワードガイダンスを削除したり、文の量をほぼ半減させたりするなど、独自カラーを見せた。しかし、利下げを求める大統領の意向とは異なり、政策金利は据え置かれた。
トランプ氏は6月のFOMCの決定について容認する構えを見せたものの、実際のところは、利下げを求めていることに変わりないだろう。そうであれば、ウォーシュ議長はいつまでも金利据え置きという政策を主導しているわけにはいかない。しかし、現在の経済・物価動向や見通しを踏まえれば、FOMC内では利上げ支持という姿勢がより強まっている。実際、ウォーシュ氏が疑問視するFOMC参加者の経済見通し(中央値)では、前回3月時点の2026年内利下げから利上げへ、FOMC参加者の見通しは変化したため、利下げへのハードルは一層高まったように見える。
これまで金利を据え置いてきたパウエル前議長には刑事訴追など圧力を強めていただけに、ウォーシュ氏も同様の立場に追い込まれるのだろうか。「遅すぎる男」とパウエル氏を批判してきたトランプ氏は、同じようにウォーシュ氏を批判するのだろうか。それとも支援者との関係が深ければ、批判は控えられるのだろうか。仮に、FRBが利上げに踏み切ったときに、トランプ氏はどのように対応するのだろうか。
トランプ氏が求めるように、物価上昇率が高い中で、利下げを実施すれば、これまでのトルコリラのように暴落する可能性も否めない。歴史的な円安・ドル高水準にある対ドルの円相場にとって、そのトレンドが修正されるきっかけになるかもしれない。しかし、仮にそうなった場合、円相場が妥当な水準で落ち着ける保証はなく、むしろもっとひどい状態に陥る恐れもある。ウォーシュ氏は、大統領から求められる政策と採るべき政策が逆方向にある中で、どのように妥協点を見出していくのか。FRBと政治の問題は継続しており、それが金融市場の波乱要因になることが懸念される。
以上
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