デイリー・アップデート

2025年6月19日 (木)

[米国/コンゴ民主共和国(DRC)/ルワンダ] 

6月18日、米国務省は米国、DRC、ルワンダとの共同声明において、DRCとルワンダの技術チームが両国間の和平協定文書に仮調印したと発表した。同調印は6月27日にマルコ・ルビオ米国務長官の立会いの下で行われる両国閣僚級による調印に備えたものであるとのこと。

 

DRC東部で続く両国間の紛争解決に向け、現在、米国とカタールが仲介を続けている。4月25日にルビオ国務長官の仲介により、DRC・ルワンダ両国外相は和平に向けた「原則宣言(Declaration of Principals)」に署名。5月2日までに両国は個別に和平協定の草案を提出した。その後、米国がまとめた統一草案をもとに技術チームによる3日間の対話が行われ、協定の策定・仮調印に至ったもの。同協定には「領土の完全性の尊重」、「敵対行為の禁止」、「武装解除」などが盛り込まれた。今回の対話にはカタールも立ち会ったと米国側は発表している。

 

4月時点で米国が定めていたスケジュールでは、5月21日頃に両国外相による調印、6月15日の週にトランプ米大統領出席の下、DRCのチセケディ大統領とルワンダのカガメ大統領が和平協定に署名する予定だったことから、当初より1か月程度遅れていることとなる。

 

DRCは、今回の米国の仲介による紛争解決と引き換えに、米国企業に対してリチウム、コバルト、コルタン等の重要鉱物の採掘を認める鉱物協定を米国側と並行して調整している。5月25日の英FT紙の報道では、6月末までに鉱物協定の合意が可能との見通しが示されたが、6月27日の和平協定の調印のタイミングに合わせて鉱物協定の合意の発表が行われるか、現時点で明らかになっていない。

 

また、6月10日の英ロイター紙の報道によると、米国はルワンダに対して、DRC東部に越境してDRCの反政府勢力「M23」を支援しているルワンダ国防軍(RDF)の撤退を和平協定の締結条件として求めているとのこと。ルワンダ側は一貫してRDFの越境派遣やM23への支援を否定しているが、現在もM23らによるDRC東部主要都市の実効支配は続いており、RDFのDRCからの撤退も進んでいないとみられる。したがって、仮に和平協定が締結されたとしても紛争解決に実質的な進展をもたらさない可能性もある。

[EU/米国] 

G7サミットでロシアに対する制裁措置をめぐり、米国と欧州の意見の相違が明らかになった。トランプ米大統領は、ロシアに対するさらなる制裁措置に反対の立場を表明し、制裁措置は米国にとって財政的な負担が大きいことから、欧州が「まず先に行動すべき」と述べた。一方、欧州委員会は先だってロシアの石油・ガス部門を対象とする18回目の制裁措置を発表し、G7によるロシア産原油の輸入価格上限を1バレル60ドルから45ドルに引き下げることを提案した。トランプ大統領がこの提案を拒否した場合でも、EUと英国はこの措置を実施する意向を示している。

 

EUは、ロシアへの制裁体制を強化する意向を示しており、トランプ大統領の「まず先に欧州が行動すべきだ」という発言も、EUの最新の制裁パッケージに対する暗黙の承認と捉えているようだ。

 

また、欧州委員会はEUに流入している大量のロシア産ガスを2027年末までに段階的に廃止する法案を提出した。2024年、ロシアはEUに天然ガスの約5分の1を供給していた。

 

欧州委員会は、ロシア産ガスの新規契約を2026年から禁止し、短期のスポット市場購入を同年6月17日から禁止する方向で、2028年1月1日までに、すべてのロシア産ガスの長期契約を終了させる計画だ。ただし、ハンガリーやスロバキアなど、ロシアからのエネルギー輸入停止に反対している国もあり、欧州も一枚岩ではない。それでも、欧州委員会は、ロシアのガスが気づかれずにヨーロッパの流通ネットワークに入ることがないように、供給の安全保障に関するEUの法律の改正も視野に入れる。ロシア産ガスの輸入業者は、契約条件や取引量などの詳細を報告する義務がある。

 

また、ロシアの脅威を睨み欧州委員会は、軍事防衛の強化の方向性も打ち出している。防衛産業については、官僚的な手続きを減らすための簡素化パッケージを発表した。「防衛オムニバス」と呼ばれるこのパッケージの目標は、軍需品の生産を増やすために防衛製造業者の規制負担を軽減し、投資と資金調達の拡大を図る。欧州委員会は、EUの共同軍事調達プロジェクトに対する1,500億ユーロのSAFEプログラムなどの資金調達プログラムについても、産業界の活用を促す方向だ。EU諸国は軍事費を増やし、長期的には国防予算を増やすことに前向きだが、ボトルネックとなっている官僚的なハードルを減らし、財政についても、工場や生産ラインへの大規模な投資を正当化するための長期的な財政的なコミットメントを与える。また委員会は、EU諸国に対し、環境法の免除規定を活用することも奨励している。

[ブラジル] 

中央銀行は、予想通り政策金利を25bp引き上げて15.00%とした。これにより、引き締めサイクルは終了したとの見方が強いが、中央銀行は一部市場でささやかれていた早期に金利引き下げへ転換するとの見方を明確に否定した。

 

今回の決定は全会一致であり、中央銀行は2024年9月に利上げを開始して以来、累計で政策金利を450bp引き上げた。最近の経済指標を見ると、第1四半期の経済成長率は堅調な国内需要を背景に前期比1.4%と底堅く、労働市場も依然として非常に緊迫した状態が続いている。また、5月の消費者物価指数は前年同期比5.3%と低下傾向にはあるものの、依然として中央銀行の目標である3%を大幅に上回っていた。さらに、サービス価格の上昇率は前年同期比6.8%と2023年半ば以来の高水準を記録しており、コア指数が強いことも懸念材料となっていた。

 

中央銀行は声明で引き締めサイクルが終了した可能性を示唆した。「予想されるシナリオが実現した場合、委員会は利上げサイクルの中断を想定している」と述べている。しかし、依然としてタカ派的な文言が続き、「現在の金利水準が非常に長期にわたって安定した場合、物価目標への収束を確保するのに十分かどうかを評価する」とし、「適切と判断すれば、利上げサイクルを再開することを躊躇(ちゅうちょ)しない」と述べている。当局者は、引き締めサイクルを終了することが投資家に利下げを早期に織り込み、現地の金融情勢の早期かつ望ましくない緩和を招くことを明確に懸念している。

 

ただし、インフレがピークアウトすれば、利下げを開始する条件が整うとみられる。選挙前の大規模な財政刺激策が回避されれば、金融政策は緩和に転ずる可能性が残る。

[ロシア/北朝鮮] 

ロシアのショイグ安全保障会議書記は6月に2回北朝鮮を訪問し、金正恩総書記と会談した。会談では、複雑な国際・地域情勢など両国指導部が互いに関心を寄せる問題について見解を広く交換し、共通認識を確認した。ショイグ安全保障会議書記はプーチン大統領からの親書を金正恩総書記に手渡し、彼によると、ロシアと北朝鮮は、ロシアのクルスク州の復興のため北朝鮮から工兵と作業員合わせて6,000人を派遣することで合意したという。奪還作戦で戦死した北朝鮮兵をたたえる記念施設の建設計画も議論し、ロ朝間の航空便の再開にも期待を示した。

[タイ] 

6月18日、タイ連立政権の第2党「タイ誇り党」が現在の連立枠組みから離脱すると発表した。所属する閣僚は19日付で全員が辞任する。ペートンタン首相は15日にカンボジアのフン・セン前首相と電話会談を行ったが、その内容がリークされ、同首相が国軍を批判しているかのような発言をしていたことが明らかになった。タイ誇り党は、国家の主権や軍、国民の尊厳を損なったと非難し、首相は責任をとるべきと主張した。また、タイ誇り党は、タイ貢献党から内閣改造をめぐる協議で内相ポストを放棄するよう求められていたが、アヌティン党首はこれを拒否し、連立離脱を示唆していた。与党連合の議席は324議席、タイ誇り党の議席は69議席で、連立から離脱しても下院(定数500)の過半数を維持するが、その政権基盤は不安定になるとみられる。

[米国] 

連邦準備制度理事会(FRB)は6月18日まで連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、政策金利(FF金利)の誘導目標レンジを4.25~4.50%に据え置くことを決定した。据え置きは2025年1月以降、4会合連続で、市場予想どおり。

 

声明文では、米国経済が堅調なペースで拡大する中で、失業率は低水準にとどまり、物価上昇率はやや高止まりしていると評価された。それらを踏まえてFOMCで、雇用の最大化と物価の安定のために、入手するデータ、進展する見通し、リスクバランスを注意深く評価して、政策金利の調整幅とタイミングが検討され、据え置きと決定された。

 

また、今回の会合に合わせてFOMC参加者の経済見通しが発表された。その見通し(中央値)によると、実質GDP成長率は2025年末に+1.4%(前回3月時点から▲0.3pt)、2026年末に+1.6%(▲0.2pt)へ下方修正され、失業率はそれぞれ4.5%(+0.1pt)、4.5%(+0.2pt)、PCE物価指数は+3.0%(+0.3pt)、+2.4%(+0.2pt)へ上方修正された。つまり、経済成長率は3月時点の想定よりも低くなった一方で、失業率と物価上昇率は高くなる見通しに変更された。ただし、かつてのようなスタグフレーションに比べると、失業率と物価上昇率はともに低水準にとどまる姿が想定されている。

 

なお、政策金利の見通しは2025年末に3.9%と前回から変わらなかったのに対して、2026年に3.6%(+0.2pt)と利下げペースが鈍化すると予想されている。ただし、2025年内利下げ回数をゼロ回と予想したのは7人と、前回3月時点の4人から増えた一方、2回の利下げを予想したのは8人で、前回から1人減った。もちろん、パウエル議長が、経済の不確実性の高さから、「誰もこうした金利の道筋に強い確信を持っていない」と指摘したほどであるため、今後の状況次第であることに変わりない。

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