エチオピア/首相再選

2026年10月06日


髙橋 史

10月5日、エチオピア人民代表議会(下院)が招集され、現職のアビィ・アハメド首相の再選が決定した。2018年から与党「繁栄党(PP)」の党首を務める同氏は、2031年まで首相職を継続する見込みだ。6月1日に実施された下院総選挙では、PPが547議席中438議席を獲得して圧勝しており、アビィ氏の再選は確実視されていた。


アビィ氏は再選後の議会演説で、「エチオピアの近代化は海へのアクセスなしには完全には成功しない。アクセスはエチオピア文明にとって重要だ」と述べ、内陸国であるエチオピアの紅海アクセス確保への強い意欲を改めて示した。一方で、隣国エリトリアなどとの緊張の高まりを意識し、「平和的な手段でそれを獲得する決意だ」とも強調した(10月5日、Le Monde)。また、北部ティグライ州で反政府勢力「ティグライ人民解放戦線(TPLF)」との軍事衝突が継続する中、「国内の反逆者と国外の敵が結託している」と非難しつつ、「森」から出て和平プロセスに参加するよう呼びかけた。


北部ティグライ州では、エチオピア国防軍(ENDF)の支援を受ける親政府派民兵組織「ティグライ平和軍(TPF)」が州都メケレをTPLFから奪還した。TPLFおよび「ティグライ防衛軍(TDF)」は、エリトリア国境に近い主要都市アディグラート方面へ撤退したとみられる(10月5日、ACLED)。これに前後して、ティグライ州北部のアドワやシラロではドローン攻撃が発生し、民間人の死傷が報告されている(10月5日、ロイター通信)。TPLFを支援しているとされるエリトリアは既に国境地帯へ部隊を展開しており、今後ENDF・TPFがさらに北進した場合、エチオピアとエリトリアの国家間衝突へ発展するリスクが高まっている。


アビィ政権による紅海アクセス確保やナイル川水資源利用権を巡る強硬姿勢に対し、周辺国の警戒感も強まっている。10月4日には、エジプトのシシ大統領、エリトリアのイサイアス大統領、スーダン国軍(SAF)のブルハン将軍、ソマリアのハッサン大統領による4か国首脳会合がエジプトのエル・アラメインで開催された。同会合では、国家主権と領土保全の尊重、およびナイル川を含む越境水資源管理に関する協力をうたう「エル・アラメイン宣言」が採択され、エチオピアをけん制する姿勢が鮮明となった(10月5日、New Arabなど)。


エチオピアは欧米諸国、中国、UAE、トルコなど域外国との関係を維持している一方、紅海アクセスやナイル川問題を巡って周辺国との関係は悪化している。今回の4か国首脳会合は正式な軍事・政治同盟の形成には至っていないものの、エチオピアをけん制する地域的な連携強化の動きを示すものであり、アビィ政権は今後、ティグライ情勢への対応と並行して、地域外交上の圧力にも直面することになりそうだ。(国際部 髙橋史)

 

記事のご利用について:当記事は、住友商事グローバルリサーチ株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報に基づいて作成しており、作成にあたっては細心の注意を払っておりますが、当社及び住友商事グループは、その情報の正確性、完全性、信頼性、安全性等において、いかなる保証もいたしません。当記事は、情報提供を目的として作成されたものであり、投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。また、当記事は筆者の見解に基づき作成されたものであり、当社及び住友商事グループの統一された見解ではありません。当記事の全部または一部を著作権法で認められる範囲を超えて無断で利用することはご遠慮ください。なお、当社は、予告なしに当記事の変更・削除等を行うことがあります。当サイト内の記事のご利用についての詳細は「サイトのご利用について」をご確認ください。