ソマリア/国内対立
10月15日、ソマリア選挙管理委員会は、議会選挙を2027年4月、大統領選を同年5月に実施すると発表した。野党連合らはこれに強く反発しており、国内でのさらなる対立・紛争を招く恐れがあるとの見方が多い(10月15日、Al Jazeeraなど)。
もともと、現職のハッサン・シェイク・モハムッド大統領は、2026年5月に2期目の任期満了を迎える予定だった。しかし、その直前の同年3月、連邦議会は大統領任期を4年から5年に延長し、選挙を2027年に延期する憲法改正案に署名した。モハムッド大統領は、主要4氏族とその他氏族に下院議席を配分する間接選挙「4.5フォーミュラ(注)」から、国民が直接投票する「一人一票」制へ移行するための期間が必要だと説明した。一方、野党連合「ソマリア未来評議会」などは、大統領が憲法改正によって任期を事実上リセットし、2027年以降も権力にとどまろうとしているとみて、改正案を拒否し続けている。
ソマリア連邦政府(FGS)は6つの連邦構成州(FMS)からなり、各州は広範な自治権限を持つ。なお、FGSとの対立を背景に1991年に独立を宣言した北部ソマリランドは、FMSに含まれない。主要氏族の一つであるダロッド氏族は、FMSのうち北東部のプントランドと南西部のジュバランドを統治している。一方、モハムッド大統領が属するハウィエ氏族は、首都モガディシュ周辺の南西州や中部ガルムドゥグ州などを統治している。4.5フォーミュラの下では、FGSの下院議席が氏族ごとに配分され、歴代のFGS大統領と首相も主にダロッド氏族とハウィエ氏族の間で選ばれてきた。しかし、「一人一票」制が導入されれば、人口の多いハウィエ氏族出身のモハムッド大統領が有利になるとみられる。この点も、ダロッド氏族を中心とする野党連合が制度変更に強く反発する理由とされる。
対立はすでに武力衝突に発展している。8月には中部の主要都市ガルカイヨでプントランド州政府軍とFGS軍が衝突した。さらに9月以降、南西州の州都バイドアでは、FGS軍とラフタガリーン前州知事が率いる武装組織との間で、数千人規模の衝突が発生している。同地域ではイスラム系過激派組織アルシャバブが活発に活動しており、FGSとFMSの対立激化は同組織を利する可能性がある。治安悪化によって、直接投票の実施が一段と困難になるとの見方も出ている(10月16日、英国王立研究所)。
ソマリアをめぐる域外国の思惑も、国内問題を複雑にしている。トルコがエネルギー・軍事面でFGSを支援する一方、アラブ首長国連邦(UAE)は港湾権益を背景に、プントランド、ソマリランド、ジュバランドなどを支援している。ソマリアは2025年にUAEとのすべての協定を破棄し、サウジアラビアやカタールとの関係強化を進めている。また、イラン情勢やフーシ派の動きを背景に、ソマリランドのベルベラ港への関心が高まっている。イスラエルがソマリランドを国家承認したほか、米国やエチオピアも同地域に関心を示している。エチオピアとエリトリアの軍事衝突が懸念されるなか、ソマリア国内の不安定化は「アフリカの角」地域全体のさらなる不安定化につながる恐れがある。(国際部 髙橋史)
(注)ダロッド氏族(1)、ハウィエ氏族(1)、ディル氏族(1)、ディギル・ミリフレ氏族(1)、少数氏族連合(0.5)の割合で分配する仕組み
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