上海/中国 ~近代と現代が調和する国際都市「上海」~

アジア・オセアニア

2015年10月13日

上海住友商事有限公司
西脇 孝博

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• 中国一の経済大都市 「上海」

バンドから眺める上海摩天楼(浦東陸家嘴「ぷーとんるーじゃーつい」地区) (筆者撮影)
バンドから眺める上海摩天楼(浦東陸家嘴「ぷーとんるーじゃーつい」地区) (筆者撮影)

  上海は言わずと知れた中国最大の都市で、人口は2,400万人を超えており、うち約1,000万人が上海に戸籍を持たない流入人口です。

 

 また、同地は在留邦人数もアジアの都市の中で最も多く、現在約4万8,000人の日本人が生活しています(外務省「海外在留邦人数調査統計平成26年度版」)。

 

 経済成長の急減速が心配される昨今の中国、特に上海株式市場の急落が世界同時株安を引き起こすなど、中国の景気の行方に多くの注目が集まっていますが、上海の街頭はいまだ消費力が旺盛な人々の活気にあふれている印象です。

 

 バンド(外灘「わいたん」)から見る摩天楼は、みなさんがよく映像や写真などで目にする上海の典型的な景色で、急速に発展した中国経済の象徴のように見えます。実際、上海の街を歩いていても多くの高級外車が走り、高級ブランドショップが軒を連ねるショッピングモールがいくつもできており、中国都市部の購買力がかなり高いことを肌で感じることができます(最近では、日本でも"爆買い"という行動で中国人の購買力の高さを実感されていると思います)。

 

 

• 上海の歴史から

バンドの石造り西洋建築群 (筆者撮影)
バンドの石造り西洋建築群 (筆者撮影)

 中国何千年の歴史とよく言いますが、中国の悠久の歴史からみると上海の発展はごくごく最近の出来事です。もともと長江デルタの小さな漁村で、宋代に上海という名前が使われるようになり、大きく発展するのは1842年に清がアヘン戦争に敗れて同地を開港し、英国やフランスの租界が作られるようになってからです。その後、租界には多くの国々から居留民が流入し、現在の国際都市・上海の基礎が形作られました。

 

 租界時代の建築物は、バンドにみられる石造りの西洋建築群の重厚さと、プラタナス並木に見え隠れするフランス租界の名残である洋館(中国語では老房子「らぉふぁんず」という)のモダンさがあり、これに浦東地区に林立する超高層ビル群が加わり、うまく近代と現代が調和したおしゃれな上海の街並みを形成しています。

 

 

旧フランス租界の風情を伝えるプラタナス並木 (筆者撮影)
旧フランス租界の風情を伝えるプラタナス並木 (筆者撮影)

• 上海における日本人

開港以降の上海には、NHK大河ドラマ『花燃ゆ』にも出てきたように1862年に高杉晋作が訪れ、1873年に岩倉使節団が日本への帰路途上で立ち寄るなど、この時期の同地は日本人が西洋文明を目の当たりにすることができる身近なアジアの都市でした。

 

上海租界に最初に正式な居留登録をした日本人は1870年の7人でしたが、その後日本国領事館が建てられた虹口(ほんこう)地区を中心に日本人の居留民がどんどん増えていき、ピーク時(1943~44年頃)には10万人を超えました。今でも虹口地区に赤レンガ造りの旧上海日本総領事館の建物を見ることができます。

 

 

• これからの中国、上海

習近平政権は今、新常態(ニューノーマル政策)を掲げ安定成長に向けたかじ取りを行っています。日本との関係で言えば、2012年の反日デモ以降、上海の在留邦人の減少が続いていましたが、2015年5月の中日友好交流大会で習近平国家主席が日中関係に対する前向きな発言をして以来、今後の日中関係の改善に期待する声が高まっています。

 

上海は今まさに上海蟹(大閘蟹:だーじゃーしえ)のシーズンに入りました。ぜひ、多くの方に上海を訪れ、上海の今を肌で感じるとともに、大国・中国の変化を引き続き注視してほしいと思います。

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