大連/中国 ~小さくて個性的な町「大連」~

アジア・オセアニア

2015年12月11日

住友商事(中国)有限公司大連分公司
崔 骁、呉 萍

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• 中国東北地域の玄関 「大連」

大連のCBD―人民路 (筆者撮影)
大連のCBD―人民路 (筆者撮影)

 大連は中国東北地域の玄関として、国際貿易港を持つ港湾都市として栄えてきました。政治の北京、商業の上海に対して、大連は中国有数の国際文化都市として、アカシア祭、国際ファッション祭、国際ビール祭、国際マラソン大会、国際オートショー、国際ソフトウェア・情報サービス交易会などを開催し、積極的に世界各国と交流を図っています。

 

 また、世界経済フォーラムが主催するスイスのダボスで開かれる国際会議の中国版、夏季ダボス会議は2007年から毎年夏に大連と天津で交互に行われており、2015年は大連で開催されました。現在さらなる発展に向けて北東アジアの国際航運センター、国際物流センター、及び地域金融センターの建設が進められています。

       

 

• 異文化融合の町 「大連」

 大連は伝統的文化と現代的文化が共存しています。モダンな高層ビルが立ち並ぶ中、異国情緒を醸し出す日本とロシア風建築物が町を飾るように点々と存在しています。特に日本統治時代(1905~45年)が色濃く残る旧市街の町並み、そしてロシア統治時代(1899~1905年、1945~55年)に建設された放射線状に広がる中山広場・友好広場は趣が深く、市民の大切な憩いの場でもあります。

 

 

• 大連の魅力・特徴

①包容力

大連賓館 (筆者撮影)
大連賓館 (筆者撮影)

 大連は1899年に漁村から市に移り、1999年に大連市として100年を迎え、比較的若い都市とも言えます。地元出身者は少なく、外国人の割合が高く、東北地域や山東半島から大勢の人が同地に移り住み、現在の大連を作り上げています。

このような歴史の背景もあり、大連人は外国人に対してとても包容力があり、他民族を受け入れやすいのが特徴です。このため、外国人にはとても住みやすい場所と評判も良く、現在では町中で日本人、韓国人、ロシア人、欧米人などをよく目にします。

 また、ここ数年、中国各都市で大規模なジャパンバッシングが起きる中、大連は穏やかで友好的に在留邦人と接している都市でもあります。

 

②日本語ができる人材が多い

 1984年に沿岸開放都市に指定され、多くの外資系企業がいち早く進出してきました。それに伴い、多くの現地雇用が生み出されました。日本に近いこともあり、日本への旅行や留学経験を持ち、日本人の考えをよく理解し、日本語が話せる人材も豊富で、日本語の学習人口は約20万人と中国の他都市とは比較にならないほどの人数を誇ります。通訳はもちろん、日本語の使用が可能な会計税務事務所、弁護士事務所やコンサルティング会社も多く、日本企業向けの企業設立・運営のコンサルティングなどビジネス展開をサポートする環境も整っており、中国の他都市と比べて言語面でのハードルが低いのが、大連の特徴です。

 

 大連の大学を卒業した人材の優位性は、沿海都市の中で第2位を誇ります。同地には24の大学があり、就学生の規模は約30万人に達します。研究開発、人材育成、土地提供などの資金的な優遇施策も多く、特に人材育成支援には毎年2億人民元を投入し、市、学校、企業が一体になって人材育成に取り組んでいます。

 

 

日系企業が活躍中の大連

南山日本風情街 (筆者撮影)
南山日本風情街 (筆者撮影)

 上記のように親日的で日本企業からの信頼感も高く、以前から日本企業のオフショアリングの拠点として発展してきた大連は、大連経済技術開発区、大連高新技術産業園区(高新園区)を中心に、約1万3,000社もの外資企業が進出しています、そのうち、日本企業が約1,730社進出していると言われており、在留邦人も6,000人を超えているとも言われています。

 

 1984年に開放されて以来、日本企業はソフトウェア・情報サービスや、電子情報製品製造業を中心に進出していましたが、近年は自動車、医療機器及びサービス産業に加え高齢者産業の進出が目ざましく、中国の内需拡大への取り組みが盛んです。

 

 この他、大連は自動車メーカーのサプライヤー向けに自動車部品産業園を建設、自動車産業の基盤整備を市政府主導で進めており、すでに中国国内自動車メーカーの奇瑞汽車、曙光汽車、華晨汽車、BYD汽車が進出し、商用車と関連部品の生産を開始しています。外資系企業では、フォルクスワーゲンが中国の第一汽車と合弁でエンジン工場を、アメリカの自動車部品メーカー、ボルグワーナーは自動車変速機工場を、東風日産(東風汽車集団と日産自動車の合弁会社)は完成車工場を設立し、大連にこの1年間で自動車関連企業が100社以上進出しました。自動車産業は裾野が広く、さまざまな業種に影響を及ぼしており、特に、同地が得意なITや物流にも大きな恩恵をもたらし、今後の発展が大きく期待されています。

 

 中国内需拡大の取り組みが日本企業のキーワードで、大連は、中国内需攻略に向けた戦略拠点に大きく変貌しようとしています。人件費などのコストが上昇している現在、従来のオフショアリング及び加工貿易型産業はコスト競争力を失い、川上から川下まで一貫したSCMサービスによるモデルに変貌を遂げることで、生産性を高めつつあります。

 

 こうした展開を進めるのは製造業ばかりではありません。今後規制が緩和されるとみられる金融・保険関連市場を取り込むために、ビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)によって保険業務そのものを移植する動きも出てきました。中央政府の規制緩和と同時に、一気に保険業務で中国市場に打って出る戦略が垣間見られます。

 

 

• 将来を展望する大連

 美しい景色に囲まれ、おいしい新鮮な海産物が味わえる大連は、習近平政権の新常態の中で安定を保ちながら、経済、政治、文化などの各方面でさらなる発展を目指し、2016年から始動する第13次5か年計画ではさらに一歩進んだ国際都市への成長が期待されています。ぜひ大連に来て、皆様自身で大連を感じ取ってください、皆様のご来連を心からお待ちしております。

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