上海/中国 ~ハイテクとアナログの共存する都市~
国際都市上海
コロナ禍での厳しいロックダウンの状況や経済の低迷について話題になりましたが、上海は依然として中国を代表する国際都市です。不動産市場の不調や就職難なども事実ですが、市民の生活水準は非常に高く、上海にいらした出張者からは「久しぶりに来たけど、さらに街が発展していてびっくりした」という声も多く聞かれ、コロナ禍の間もその後も成長の只中であると感じます。
近未来的な摩天楼がそびえたつ風景が印象的な上海ですが、実際に住んでみると、緑豊かな公園が多かったり、フランス租界時代の西洋建築をリノベーションしたおしゃれなカフェエリアがあったりするなど、文化的・歴史的な魅力も多い都市です。中国では"City Walk (街歩き)"という言葉がよく使われますが、上海中の街角に隠れた魅力が散らばっていて、街歩き好きにはたまらない都市です。
デジタルによる生活面の豊かさ
上海の市民生活は、国内企業が自社開発したデジタル技術によって、ますます便利になっています。食事の出前だけでなく、30分以内にデリバリーされる生活必需品の購入サービス(盒马/フーマー:中国アリババグループが展開するオンラインとオフラインを融合したニューリテールスーパーマーケット)、5~10分以内に乗車可能なライドシェアサービス(DiDi)など、アプリを通じて上海の生活は非常に充実しています。また、自転車シェアリングシステムも整備が進んでいて、市民の移動を便利にしています。アプリを利用することにより、AIによる情報の管理が非常に進んでいる面もあり、治安の改善にも役立っています。さらに、販売された新車のうち5割以上がEV(電気自動車)であることや、自動運転技術の進歩、ドローンの活用による無人デリバリーの活用事例が見られることなどからも、これらの先進技術が日常生活に溶け込んでいることがわかります。
変わらない古き良き上海
急速なテクノロジーの発展により変貌を遂げた生活の中にも、変わらない昔ながらの風景が残っています。フランス租界の名残が見られる街並みや早朝に公園で太極拳をする市民、公園で親のイニシアティブによって年頃の子ども同士が「お見合いマッチング」をする風景、電車・バスなどで高齢者や子どもに席を譲る光景も当たり前のように見かけます。知らない人にもすぐに話しかけたりする大らかな雰囲気も、街全体に残っています。電車に乗っていると、かつてと比べると騒がしさが落ち着き、とても静かになったなと思う瞬間もありますが、そうかと思うと大声で電話しながら入ってくる人もいて、洗練されていく部分と昔ながらの懐かしい雰囲気やアグレッシブな勢いがまだまだ共存する街だと思います。
急速な発展の中、ハイテクとアナログの共存する都市
このように、上海は急速な発展を遂げる中で、ハイテクとアナログが共存する都市として魅力を維持しているのは、新しいものを柔軟に受け入れる国民性が技術の進化を支えているからです。街を歩けば、ほとんどの人がスマートフォンを手にしており、デジタル技術が生活の一部になっています。進化するデジタル技術を従来の生活スタイルに柔軟に取り入れることで、上海の急速な発展と多様な文化の共存を可能にしているように思います。未来と伝統、デジタルとアナログがうまく共存しながらお互いを支えあっている上海に、一言では言い表せない不思議さと魅力を感じます。皆さん、ぜひ上海を訪れてみてください!
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