希土類/中国が米企業に対抗措置

2026年06月25日

国際部

ブラジル中部のゴイアス州に位置するセラ・ヴェルデは、希土類産業において極めて重要かつ稀有な存在であり、アジア以外では唯一、電気自動車や風力発電、軍事用途に不可欠な「磁性希土類4元素(ネオジム、プラセオジム、ジスプロシウム、テルビウム)」を商業規模で生産している。とりわけジスプロシウムやテルビウムといった重希土類は供給が限られており、次世代エネルギーや防衛分野において不可欠であるため、その戦略的価値は極めて高い。

 

このような背景から、米国政府は数億ドル規模の資金支援を通じて米国企業であるUSAレアアースによる買収を後押しし、2026年4月に約28億ドルで買収が成立していた。ブラジルの鉱山と米国内で建設中の加工・磁石製造拠点を結び付けることで、中国に依存しない希土類サプライチェーンの構築が目的となっている。

 

これに対し、中国は強い対抗措置を取った。具体的には、買収主体であるUSAレアアースをブラックリストに追加し、中国企業が同社に対してデュアルユース(軍民両用)の製品を輸出することを禁止した。また、中国製品を他国経由で同社に供給することも禁じ、すでに輸送中の貨物についても停止を命じるなど、極めて厳格な措置を講じた。この対応の背景には、アメリカがBYDやアリババ、バイドゥなどの中国企業を自国の規制リストに追加したことや、G7が2030年までに中国産レアアースへの依存度を60%以下に引き下げると合意したことへの対抗措置とみられる。

 

この措置はセラ・ヴェルデの操業自体を直ちに停止させるものではないと考えられる。同鉱山は買収前から中国企業との販売契約の解消を進めており、短期的な収益への影響は限定的である可能性が高い。しかし、中長期的には問題が残る。というのも、希土類の精製の約90%を中国が担っている現状では、中国製の設備や素材への依存が依然として大きく、それらの調達が困難になることで、米国主導の新たなサプライチェーン構築に支障が生じる恐れがある。

 

また、米中による資源支配競争の一環という文脈において、セラ・ヴェルデが中国サプライチェーンの外にあるということは、戦略的競争力の源泉である一方で、政治的な標的となるリスクを改めて示した形だ。

 

ブラジルにでは、中国に次ぐ規模の希土類埋蔵量を有しながら、これまで十分に開発されてこなかった。その資源は経済的には大きな武器となる一方で、国際政治の駆け引きの中で重要な位置を占める存在となっている。今後、ブラジルがどの国と連携し、どのように資源開発を進めていくのかは、世界の供給網にも大きな影響を与えることになる。

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