デイリー・アップデート

2026年5月26日 (火)

[アルゼンチン/輸出税引き下げ] 

アルゼンチンは、2026年7月から始まる12か月間で、特定の工業部門に課している輸出税を段階的にゼロまで引き下げる方針を発表した。対象となるのは自動車、石油化学、化学、ゴム、機械などの分野であり、現在4.5%の税率が適用されている。これを毎月0.375ポイントずつ引き下げ、1年後に完全撤廃する計画となっている。

 

また、主要な農産物についても段階的な減税を実施する方針を示している。 アルゼンチンの輸出構造を見ると農業部門が6割以上と大きいものの、自動車産業も重要な位置を占めている。公式統計によれば、昨年の自動車輸出額は87億8,000万ドルで、全輸出の1割強を占めた。ただし、前年比では2.5%の減少となっており、成長の鈍化がみられる。一方、石油および石油化学部門は117億7,000万ドル相当を輸出し、全体の13.5%を占めた。こちらは前年比で12.8%増と大きく伸びており、エネルギー関連分野の拡大が目立っている。

 

今回の減税措置は、とくに成長分野であるエネルギー・化学関連の輸出拡大をさらに後押しするとともに、自動車などの既存産業にもコスト面でのメリットをもたらし、国際市場での価格競争力を高める効果が期待される。

 

ミレイ大統領は、かねてより輸出税の削減・撤廃にこだわる背景には、国家による課税を泥棒行為と激しく批判してきた経緯がある。輸出税は、短期的には政府の財政収入になるものの、長期的には輸出企業の国際競争力を奪い、外貨獲得の機会を損なったというのがミレイ大統領の主張であり、税率を下げることで、生産者が穀物や工業品を売り惜しみするのを防ぎ、早期に輸出させて市場に米ドルを流入させることが狙いとなる。これは、最終目標として掲げる「経済のドル化」や「外貨統制(セポ)の完全撤廃」を見越したものになる。しかし、短期的には、2027年再選へ向けた政治的布石の側面も大きい。2025年10月の中間選挙においても、政府が選挙直前の2025年7月?9月にかけて主要穀物の輸出税を恒久・一時的に引き下げ、地方の農業セクターからの支持を取り付けることに成功していた。減税により、持続的な支持基盤の構築と、野党による法案提出(財政均衡を揺るがすポピュリズム法案)をけん制する狙いもある。

[ロシア/中銀総裁交代問題] 

2027年6月に任期満了を迎えるロシア中央銀行(中銀)のナビウリナ総裁の後任問題が、単なる人事を超えた構造的リスクとして注目されている。ロシアでは後継候補は事前に公開されず、最終決定はプーチン大統領の裁量に依存するため、市場は中銀政策の継続性を織り込めない状況にある。

 

ナビウリナは、銀行セクターの整理や外貨準備の脱ドル化、決済基盤整備などを通じて「金融要塞ロシア」を構築し、制裁下でも経済の安定を維持してきた中核的存在であるが、その独立性は制度による裏付けというよりも、大統領との信頼関係に支えられてきた側面が強い。

 

現時点で有力な後任は不透明で、オレシキン大統領府副長官や、ロシアの軍事産業を中心に融資を行うPSB銀行の総裁であるフラトコフ氏らの名が取り沙汰されるのみで、実質的な選定プロセスは見えない。加えて、高金利下での景気減速や財政赤字の拡大、戦争による外部不確実性の高まりの中で、中銀に対する政治的圧力は強まっている。

 

最大の懸念は中銀総裁交代に伴う人材流出であり、専門人材の離脱は政策運営能力の低下につながり得る。後任がテクノクラートであれば現行路線の維持は可能だが、政治的な支えに欠ける恐れがある。逆に、政権寄りの人事となれば、中銀の独立性低下とマクロ経済の安定性を失う懸念がある。制度改正による続投も選択肢としては存在するが、問題の先送りに過ぎない。

 

総じて、2027年の中銀総裁交代は、ロシアの金融安定にとって重要な分岐点となる。

[欧州連合(EU)/保護主義] 

5月24日、英紙フィナンシャル・タイムズなどの報道によると、EUにおいて、保護主義的な通商政策への転換が顕著になっている。

 

スペイン、フランス、イタリア、オランダ、リトアニアの5か国は、中国の輸出急増と構造的な生産能力過剰など「不公正な貿易慣行」から欧州産業を守るため、より強力な貿易対策を求める共同文書を提出した。こうした他国の過剰生産の影響により、欧州では2019年から2025年の間に100万人もの雇用が失われているとされている。

 

現行の防衛措置は対応に時間がかかり、迂回されやすいという課題があることを背景に、今回の文書では、関税適用の迅速化や、第三国やEU域内拠点を経由する抜け道を防ぐための原産地規則の厳格化を提案している。さらに、国や製品ではなく「企業」を対象とした追加関税の検討や、輸入急増時に発動できる強力な「セーフガード」の積極的な活用を求めている。また、特定国への供給依存度が一定の基準を超えた際に発動し、割り当てや追加関税を課す新たな「レジリエンス・ツール」の導入も提唱された。

 

こうした動きは、欧州全体における保護主義強化の潮流を象徴するもの。米国・中国の対立の激化に伴い、米国市場から締め出された中国などの安価な製品がEU市場へ大量流入し、欧州の製造業は深刻な産業空洞化の危機に直面している。その結果、従来の自由貿易路線から、公共調達での域内製品優遇など、環境や経済安全保障を名目とした実質的な貿易障壁を築く「管理された保護主義」へと舵を切っている。

 

この政策転換は、日本企業に対してリスクと機会の両面で重大な影響をもたらす一方で、EUが「フレンドショアリング」を推進する中、価値観を共有する日本は信頼できるパートナーとして再評価されている。欧州企業が特定国への過度な依存からの脱却(デリスキング)を図る過程で、高品質で安定した供給網を持つ日本企業には、代替サプライヤーとしての期待も寄せられており、新たな商機や共同開発の機会が拡大する見込み。

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