2025年07月29日
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- 2025年07月09日 統計・グラフ集
- 「金融関連指標グラフ」を更新しました
- 2025年07月09日 統計・グラフ集
- 「マクロ経済指標統計表」を更新しました
- 2025年05月27日 統計・グラフ集
- 「ランキング集(主要新興国一覧表)」を更新しました
デイリーアップデート (2025年07月29日)
- [EU/米国]フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長とドナルド・トランプ米国大統領は、米国がEUのほとんどの輸入品に15%の関税を課すことで合意したと発表した。化学製品、航空宇宙用部品、半導体など一部の製品については関税ゼロが合意されたが、EUからの鉄鋼に対する米国の50%の関税は引き続き維持される。EUの自動車産業と医薬品産業が最も打撃を受ける見込みで、ドイツ、イタリア、アイルランドなどが特に影響を受ける。
医薬品については、15%の関税が適用されるが、フォン・デア・ライエン委員長は、ジェネリック医薬品は関税を免除されることを示唆した。これは今後の協議事項であり、医薬品の税率がEUの最終的な実効関税率に最も大きな影響を与えるとみられる。医薬品の欧州から米国への輸出額は約1,500億ドルで、輸出全体の約4分の1を占めている。そのうち、約300億ドル相当がジェネリック医薬品の輸出となっている。
また、EUは今後3年間で7,500億ユーロ相当の米国のエネルギー関連製品を購入し、6,000億ユーロを米国に投資することについても合意した。この合意が有効になるには、EUと米国のさらなる詳細協議が必要である。
医薬品のほかにも主要な問題が未解決であり、トランプ大統領は、技術規制、付加価値税(VAT)、農業食品に関する妥協を迫るため、EUへの圧力を再強化する可能性がある。貿易協定の成立により、EUの輸出に対する米国の実効平均関税率が10%から14%になるとみられているが、免除と割当に関する交渉は進行中となっている。
一部のEU加盟国はEUの目標である10%よりも高い課税を受け入れたことを服従であると批判したが、8月1日、短期的には、米国の対EU相互税率が10%から30%へ3倍に増えることは回避できた。また、この協定は企業に確実性をもたらし、欧州委員会がEUの雇用500万人を失うと推定する大西洋横断貿易戦争を回避し、ウクライナをめぐる安全保障上の観点も含めて米欧関係のマイナスの影響を防げることもできた。
しかし、まだ多くのリスクが残っている。米国のグリーンランドへの「介入」の可能性や、極右ポピュリストが権力を勝ち取る可能性がある国々における米国の選挙干渉や、EUがX(米SNSプラットフォーム)に対して罰金を課した場合に米国が反撃する可能性などもある。
- [ブラジル/米国]米国とブラジルの紛争がエスカレートしている。ブラジルでは、連邦最高裁判所(STF)がボルソナロ元大統領とその家族に対して移動の制限や、SNSの投稿規制などのけん制を強めている。7月21日には、裁判所はボルソナロ元大統領の三男エドゥアルド・ボルソナロ氏の資産を凍結し、ボルソナロ元大統領がSNSでインタビューに応じたことが裁判所命令に違反していると主張した。
一方、米国は裁判所の措置に対抗して、新たな懲罰的措置を準備していると報じられている。ルーラ政権は報復措置を控える姿勢を示しているが、米国の制裁は、グローバル・マグニツキー法に基づくSTF判事への制裁が含まれる可能性が高く、これにより判事の資産の凍結と米国資本市場での取引の制限が課せられるとみられる。また、政府関係者のビザを取り消す可能性も報じられている。
米国がSTF判事に制裁を科し、関税が導入されても、民間部門は亀裂のエスカレートを避けるよう政権に大きな圧力をかけており、ルーラ政権は報復を控えるとみられてはいるが、トランプ大統領が制裁をエスカレートさせれば(エドゥアルド・ボルソナロ氏が提案したような、ブラジルのSWIFTの禁止とGPSの制限までには至らないと思われるが)、ブラジル側も報復に出る可能性がある。しかし、米国政府はブラジルが報復すれば、駐米ブラジル大使の追放を検討しているとされ、さらにブラジルが製薬会社に対する知的特許法を破って報復すれば、さらなる対立もあり得る。
交渉の短期的な見通しは悲観的だが、時間の経過とともに交渉の余地は出てきている。関税が米国のインフレ率に影響を与え、最終的に消費者が打撃を感じるようになれば、米国がオレンジジュース、コーヒー、航空などについて50%の関税から除外する可能性や、ブラジルへの米国のFDI(海外直接投資)880億ドル相当に影響がでてくれば、関税の緩和を求める声が高まってくる。
しかし、ブラジルは米国との対立により、中国を含めた他国との貿易関係を強化することになり、EUとメルコスールの貿易協定の締結にさらなる緊急性を与え、中東諸国やメキシコや東南アジアとの関係強化につながる可能性が高い。
- [エリトリア/エチオピア]「アフリカの角」地域にあるエリトリアとエチオピア間の緊張が再び高まっている。7月19日、エリトリアのイサイアス・アフウェルキ大統領は、「エチオピアと戦争をするつもりはないが、それを強制されれば自らを守る方法を知っている」と敵対心を露わにした。これは7月3日、エチオピアのアビィ・アフメド首相が国会演説で「平和的に海へのアクセスを確保する」との決意を表し、また「いかなる形の紛争にも関与する意図はないが、自国を守るための十分な能力を有している」とエリトリアとの紛争も辞さない発言に端を発するものとみられる。
内陸国のエチオピアのアビィ首相は紅海へのアクセスは経済発展にとって不可欠であるとの主張を続ける一方で、エチオピアと1998~2000年に領土紛争を経験したエリトリアは、エチオピアによる強硬的な軍事介入の可能性に強い警戒感を示している。両国はアビィ首相の就任直後の2018年に「戦争終結宣言」を行うなど一時関係が修復したが、2022年に終結したエチオピア北部のティグライ紛争終結後に再び関係が悪化していた。
その後、2025年3月にティグライ州を拠点とする「ティグライ人民解放戦線(TPLF)」急進派と、TPLF穏健派および連邦政府との対立が起こった際に、エリトリア軍がTPLF急進派を支援しているとして緊張が高まった。TPLF内の権力闘争は一旦落ち着きを見せたが、7月に入り、両国間の緊張関係が再燃。その背景には、2024年12月にトルコのエルドアン大統領が仲介したエチオピアとソマリアの和平合意「アンカラ宣言」が決裂したことがあるとみられる(Africa Intelligence紙)。同宣言ではエチオピアによるソマリア領内のソマリランドの港湾の商業的使用が定められていたが、この見通しが不透明となったことで、エチオピアは代替先となりうる港湾を持つエリトリアへの圧力を強めているとの見方がある。
両国間の緊張の背後にはさまざまな外国勢力の関与もある。ナイル川上流に「グランドルネッサンスダム(GERD)」を建設したエチオピアに対して下流のエジプトは完成を迎えた現在も猛反発している。エジプトはエリトリアやソマリアとの関係を強化することで、エチオピアを孤立させ、紅海へのアクセスを阻もうとする外交戦略を展開している。さらにGERD問題をめぐってエジプトのシシ大統領は、トランプ米大統領も自陣に引き込もうと秋波を送っている。
トルコはエチオピアに武器支援を行うなど良好な関係を築いているが、ソマリアとは軍事・エネルギー協定を結ぶなどより経済的な便益が大きいとみられ、7月12日にエルドアン大統領はソマリアのハッサン・シェイク・モハムッド大統領と会談を行っている。そのほかにも、アフリカの地域にはアラブ首長国連邦(UAE)、カタール、サウジアラビアなどの湾岸諸国がそれぞれの思惑で各国に関与・協力を行っており、複雑性を増大させている。
- [台湾/米国/中国]台湾総統が国交を有する中南米諸国を訪問する際、米国に立ち寄ることは半ば慣例化している。しかし、トランプ米政権は、頼清徳総統がパラグアイ、グアテマラ、ベリーズを訪問する途上でニューヨークに立ち寄ることを拒否したと、フィナンシャル・タイムズ紙(7月29日付)が報じている。
台湾総統府は7月28日、最近の台風被害からの復旧作業が続いていること、ならびに米国との関税交渉が現在進行中であることを理由に、近い将来の海外渡航予定はないと発表した。一方、同紙は関係者の証言として、米国側がニューヨーク訪問を拒否したため、頼氏が訪問を断念したと伝えている。
ホワイトハウスの決定の背景には、トランプ大統領が習近平国家主席との首脳会談を強く望んでいること、加えて米中貿易協議の進展を妨げる要因を排除したいとの意図があると推測されている。フィナンシャル・タイムズ紙は7月28日付の記事において、トランプ大統領が会談実現のため、中国への技術輸出規制を一時凍結したと報じている。
輸出規制を所管する米商務省産業安全保障局は、最近、中国に対する強硬姿勢を控えるよう指示されていると、現職および元政府高官を含む8人が同紙に証言している。なお、トランプ政権は4月にエヌビディア製半導体チップ「H20」の対中輸出を禁止したが、その後方針を転換。これに対し、米国の安全保障専門家および元政府高官20人が、ラトニック商務長官宛に懸念を表明する書簡を送付した。
頼清徳総統の米国立ち寄り拒否に関しては、米国の安全保障専門家から、米国の抑止力が弱まり、中国が台湾問題に関して米国との交渉の余地があると認識するようになる可能性があるとの懸念が示されている。
- [米国]7月24日より、連邦下院は実質的に夏季休会に入り、8月4日より上院も休会予定となっている。トランプ大統領の求めに応じて可決した、減税・歳出法が7月4日に成立しており、議会共和党は政治的責務を果たした形となった。財政調整プロセスに基づき、共和党票のみで可決された同法には、連邦債務上限の5兆ドル引き上げも含まれており、財政上の懸念も回避されたとされる。また、7月24日には、一度は承認された海外援助や公共放送の予算撤回を可決している。次の焦点は、2026年度歳出法案の処理だが、12本の法案のうち、7月段階で可決されているものは、国防と退役軍人関連歳出法案の2本のみ(いずれも下院通過)。連邦議会は9月に審議を再開し、新年度の開始前に、つなぎ予算などの措置を講じる必要がある。
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