コモディティ・レポート 2019年3月号 ~相場は上昇トレンド継続も、リスクは減らず~

コモディティ・レポート

2019年03月06日

住友商事グローバルリサーチ 経済部
小橋 啓

 

 

 先月に引き続き、金融市場では2018年後半の下落の揺り戻しが継続。株式市場では2018年10月の高値からの下落分の8割値を回復。商品市場においてはGSCIベースではまだ半値戻しだが、米ドルが再び強くなってきていることを考慮すると、見た目以上の回復と捉えることができる。

 

 

S&P500株価指数とGSCI商品指数(出所:Bloombergより住友商事グローバルリサーチ作成)

 

 

 VIX指数が大きく低下するなど株価指数のボラティリティが低下しているが、商品においても、価格の緩やかな上昇トレンドが継続しているようにボラティリティは低下傾向にある。しかし、市場参加者に安心感は戻っておらず、積極的なポジション構築が行われたようにはみえない。米FRBは金融引き締めペースを緩め、保有資産の縮小の早期停止姿勢をみせている。また、中国においても景気刺激策がとられたことなどから価格は戻してはいるものの、不確実性も高まっており単純にリスクオンへは移行できていないとみられる。

 

 

ボラティリティ推移(出所:Bloombergより住友商事グローバルリサーチ作成)

 

米国10年金利と2年5年スプレッド(出所:Bloombergより住友商事グローバルリサーチ作成)

 

 

 米中貿易戦争については、通商協議が進み、合意も間近との報道を目にする。両国が追加で課していた関税が撤廃となれば、市場は好意的に受けとるだろうが、直接影響を受けていた大豆や原油などの商品において、関連報道が出ても価格の反応は鈍く、感応度が低下しているように、この材料に対しては食傷気味のように感じられる。

 

 

 落としどころがいまだ見えてこないBrexitや、米国によるイランやベネズエラへの制裁、日米・米欧の通商協議の行方に加え、30年ぶりの低成長が見込まれる中国経済の動向など、いくつもの爆弾を抱えながら、気が緩められない相場展開が続きそうだ。

 

主要市場騰落率(出所:Bloombergより住友商事グローバルリサーチ作成)

 

 

以上

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