イラン/ホルムズ協議進展

2026年08月06日


広瀬 真司

イランとオマーンは、ホルムズ海峡を通る新たな航路の地理座標について合意し、共同声明の最終調整に入った。提案では、入港船はイラン沿岸の北側航路、出港船は主にオマーン側の南側航路を利用することとされており、事実上、両国が海峡を共同で管理する仕組みとなる。ただし、イラン側は、米国がイラン港湾に対する海上封鎖を解除しない限り、航行の安全は確保できないと主張している。米国では中間選挙を控えて燃料価格が高騰しており、トランプ大統領は海峡の再開を最優先課題と位置付け、早期合意への期待を繰り返し表明している。

 

一方、イランは海峡における船舶管理権や通行料の徴収を求めている。貨物価格の5~7%に相当する料金を要求しているとの情報もあるが、オマーンは約3%、米国は無償通航を主張しており、料金問題は暫定合意の対象から外されている。現在の通航量は、戦前の1日約130隻から10隻未満にまで減少している。また、海峡には機雷が残存しているとみられるため、合意が成立したとしても、通航の完全な正常化には数か月を要する見通しである。米ユーラシア・グループは、暫定航路が2~4か月間運用される可能性があり、年末までに通航量が戦前の30~50%程度まで回復することを基本シナリオとしている。

 

交渉の進展を支えているのは、オマーン、サウジアラビア、カタールなど湾岸諸国による仲介である。イランは、米国が再び攻撃に踏み切れば、湾岸のエネルギー施設や米軍拠点に報復すると警告し、地域諸国に対してトランプ政権への働きかけを求めている。湾岸諸国も、紛争拡大によってエネルギー施設や水道インフラが被害を受けることを懸念しており、実際に米国に対して外交的解決を促している。

 

もっとも、合意の行方はなお不透明である。イラン最高指導部による最終承認、米国による封鎖解除、凍結資産の解除や制裁免除を巡るイラン側の追加要求、米議会による審査、さらにはトランプ大統領の予測困難な意思決定などが、合意成立や履行の障害となり得る。核問題も未解決のままであり、フーシ派による紅海での攻撃も継続する可能性が高い。したがって、今後想定されるのは恒久的な安定ではなく、限定的な緊張緩和と再激化を繰り返す「不安定な休戦」である。(国際部 広瀬真司)

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