2026年6月2日 (火)
[EU・ハンガリー関係]
欧州連合(EU)のフォン・デア・ライエン欧州委員長は、ハンガリーの新政権に対し、総額164億ユーロの補助金の凍結解除を発表。
このEU資金は、オルバン前政権下でみられた民主主義の後退や汚職のまん延、法の支配の欠如、性的少数者の権利制限などを理由に凍結されていたが、4月の総選挙で圧勝したマジャル新首相がEUとの信頼関係を再構築し、汚職防止や公共調達の法改正、公益信託の改革といった重要な対策を受け入れることを約束したため、凍結解除の合意に至った。
今回解除される資金は、ハンガリーの国家予算総額の13%にも相当する規模であり、この大規模な資金注入が、現在低迷しているハンガリー経済を活性化させるための強力な後押しになると期待される。
解除される164億ユーロは、主に以下の枠組みと分野で活用される予定。
①新型コロナウイルス復興基金(100億ユーロ):8月末の期限までに改革の「マイルストーン」を実現することを条件に、助成金や融資として拠出される。
②EU結束基金(64億ユーロ):地域の不平等解消と、経済・社会インフラの強化を目的として提供。インフラ等への直接投資:資金は保健、運輸、教育の各分野に充てられる。具体的には、15億ユーロが太陽光や風力発電を中心とした電力網の開発に、さらに20億ユーロが新しい都市間鉄道の整備のために使われる計画。
これらに加え、前政権下で停止されていた大学への支援も実質的に再開し、ハンガリーの学生が他のEU諸国との「エラスムス交換プログラム」に再び参加できるようになることも明らかになっている。
[米国・イスラエル/トランプ大統領、イスラエルのレバノン強硬攻撃を批判]
イラン側は、イスラエルがレバノンへの攻撃を拡大し、ガザでの軍事作戦も継続していることを理由に、米国との協議を中断したと報じられた。イランのガリバフ国会議長やアラグチ外相は、「米イラン間の停戦はレバノンを含む全ての戦線に適用される」と主張し、イスラエルの攻撃継続は停戦違反であり、その責任は米国とイスラエルが負うべきだと警告した。さらにイランは、レバノンとガザでの軍事作戦停止や占領地域からの撤退を協議再開の条件として提示し、状況次第ではホルムズ海峡封鎖や、紛争のさらなる拡大も辞さない姿勢を示している。
一方、イスラエル軍はレバノン南部およびベイルート南郊への攻勢を強め、ヒズボラ拠点への大規模攻撃を計画していた。しかし、トランプ米大統領は事態のさらなるエスカレーションを懸念し、イスラエルのネタニヤフ首相に直接電話して攻撃中止を強く要求したと報じられている。米メディアAxiosによれば、トランプ氏はネタニヤフ氏の強硬姿勢を厳しく批判し、レバノン首都への攻撃が国際的なイスラエル孤立を深めると警告した。
その後トランプ氏は、イスラエルとヒズボラ双方が相互攻撃停止に同意したと発表し、ベイルートへの大規模攻撃は回避されたと説明した。また、イランとの協議についても「急速なペースで継続している」と強調し、交渉継続への意欲を示した。ただし、イスラエル・ヒズボラ双方は停戦受け入れを公式には確認しておらず、現地情勢は依然として不安定である。
米国は、イランとの協議を前進させるため、レバノン情勢の悪化を食い止めようとしており、ルビオ国務長官らがレバノン政府やイスラエルとの調整を進めている。協議案では、イスラエルがベイルート攻撃を停止する代わりにヒズボラが対イスラエル攻撃を停止することが柱となっている。欧州諸国もイスラエルに自制を求めており、英国やドイツはレバノンでの軍事作戦拡大に懸念を表明した。
レバノン情勢は、イスラエルとヒズボラの軍事衝突にとどまらず、米国とイランの交渉、ガザ情勢、ホルムズ海峡問題とも連動している。イランはレバノンでの停戦を米イラン協議の重要条件と位置付けており、イスラエルの軍事行動次第では協議が頓挫する可能性がある。一方で、トランプ政権はイランとの合意実現を重視し、イスラエルに対して軍事行動の自制を求める姿勢を強めている。現時点では緊張緩和に向けた外交努力が続いているものの、停戦の実効性や当事者間の信頼は十分とは言えず、中東情勢は依然として流動的な状態にある。
[ブラジル/対米関係悪化]
ブラジルのルーラ大統領は、米国がブラジルの主要な犯罪組織2団体をテロ組織に指定したことについて強く反発した。指定されたのは、コマンド・ヴェルメーリョ(CV)とプリメイロ・コマンド・ダ・キャピタル(PCC)という、ブラジル最大規模の犯罪組織で、もともと麻薬取引を中心に活動していたが、現在では経済活動の広い分野に影響力を持っているとされる。
米国のマルコ・ルビオ国務長官が2026年6月5日付でこれらの組織を外国テロ組織(FTO)に指定する方針を発表したが、この動きの背景には、元大統領ジャイル・ボルソナロの息子であるフラビオ・ボルソナロやエドゥアルド・ボルソナロがワシントンで行ったロビー活動があるとされる。この指定により、米国は制裁や法的措置を通じて、より直接的にこれらの組織へ圧力をかけることが可能になる。
ブラジル政府は、この措置はブラジルの主権を侵害する内政干渉であると批判し、米国による追加的な制裁や、軍事的関与の可能性を懸念している。また、犯罪組織と直接関係がない企業であっても、影響力のある地域で事業を行うだけで間接的なリスクを負う可能性がある点が問題視されている。
実際、法律専門家は、農業、エネルギー、鉱業、通信など幅広い分野で、企業や金融機関に対する監視が強化される可能性を指摘している。特に金融機関については、国際的な金融システムから排除されるリスクもあるとされる。こうした懸念から、企業活動全体に波及する影響が警戒されている。
市場では、一部の銀行株は小幅に下落し、ブラジルの代表的な株価指数であるボヴェスパ指数も約0.7%下落した。投資家は、今後の規制強化や経済への波及リスクを慎重に見極めている。
政治面では、ルーラ大統領とボルソナロ陣営の対立がさらに激化している。ルーラは再選を目指す中で、米国に対しこうした指定を働きかけたボルソナロ陣営に対し、国を貶めると非難し、ボルソナロ側は、治安改善のために必要な措置であり、国民の安全を優先した結果だと主張している。
ルーラ政権は今後も、国内の治安対策としてこれら犯罪組織への取り締まりを続ける方針であるが、今回の米国の決定によって、外交・経済・治安の各面で複雑な影響が広がる可能性がある。対米国との関係についても、5月にようやくトランプ大統領と直接会談が実現し、テロ指定のリスクも低減したとみられていただけに、6月に発表される関税措置に加えて再び緊張が高まる事態となっている。
[ユーロ圏/期待インフレ率]
欧州中央銀行(ECB)の4月の「消費者期待調査」によると、ユーロ圏の1年先の期待インフレ率は4.0%であり、3月と同じだった。中東紛争前の2月(2.5%)に比べて高止まりしている。これは、足元のエネルギー価格の高騰などから、消費者物価指数が上昇率を拡大させていることを反映している。実際、4月の消費者物価指数は前年同月比+3.0%と、2月(+1.9%)から上昇率を拡大させていた。中東紛争前のECBの中期目標2%前後で推移していた状況から大きく変わった。
また、3年先の期待インフレ率は2.9%となり、3月(3.0%)から小幅に低下した。ただし、これも2月(2.5%)から上昇したままだった。その一方で、5年先の期待インフレ率は2.4%であり、3月から横ばい。2月(2.3%)と比べてもおおむね横ばい圏にある。
これらを踏まえると、短期的な期待インフレ率は高まっている。直近の物価高騰局面では、1年先の期待インフレ率が2022年10月に5.8%まで高まったことに比べると、足元はまだ抑制されている。ただし、当時の5年先の期待インフレ率は2%にとどまっていた。現在の物価高騰が長期化するとは予想されていないものの、物価上昇率自体は2%に比べてやや高めで推移する可能性が意識されているようだ。もっとも、先行き不透明感が強いので、中東情勢の進展次第であり、引き続き物価と期待インフレ率の動きを注視する必要がある。
[日本/鉱工業指数(4月)]
経済産業省が公表した4月の鉱工業指数は、前月比で生産・出荷で上昇し、在庫で低下した。
生産指数(2020年=100/季節調整値)は102.8と、前月比+0.8%と3か月ぶりに上昇し、事前の市場予測を上回る結果となった。4月の生産の基調判断は、前月の「一進一退」を据え置いた。 出荷指数(同)は前月比+1.5%と3ヵ月ぶりの上昇、在庫指数(同)は前月比▲0.2%と2ヵ月連続の低下となった。 4月の生産を業種別でみると、全15業種のうち7業種が上昇し、8業種が低下した。上昇したのは汎用・業務用機械工業(コンベヤ、運搬用クレーンなど)で+5.3%、電気・情報通信機械工業(半導体、IC測定器など)で+3.5%。
一方、低下した8業種は、自動車工業(普通乗用車など)が▲2.4%、無機・有機化学工業で▲1.8%、無機・有機化学工業・衣料品を除く化学工業で▲1.2%。
また、先行き2か月について、主要企業の生産計画から算出した生産予測指数は、5月は前月比+5.1%と増産を見込んでいる一方、6月は▲0.4%と減産。ただし、大幅な上昇を見込んでいる5月も、企業の生産計画に含まれる傾向的な誤差(強気・弱気の偏りなど)を統計的に修正した数値である補正値は+2.1%と予測を下回り、6月の▲0.4%の減産も勘案すると、中東情勢による先行きの不透明感もあり、生産は当面一進一退の状態が続きそうだ。
[米国/鉄鋼・アルミ・銅に対する輸入関税の調整]
6月1日、米ホワイトハウスはアルミニウム・鉄鋼・銅の輸入に対する追加関税措置の更なる調整を発表した。今回の措置は、2026年4月に実施された関税体系見直し(製品全体価値ベース課税への変更や税率区分の整理)を前提とした追加的な修正となる。
現行制度では、コモディティグレードが50%、多くの派生製品が25%、一部製品が15%の軽減税率、さらに米国産金属のみ使用する製品には10%の優遇税率が適用されるなど、用途や原産に応じて段階的な関税構造が採用されている。
今回の調整は、関税政策の基本的な枠組みを維持しつつも、国内産業への影響緩和を意識した内容が中心である。具体的には、農業機械および住宅用空調設備(HVAC)の一部について、従来25%とされていた区分から15%の軽減税率へ一時的に引き下げられた。これらは農業生産や建設、物流など実体経済に不可欠な分野で使用されるため、コスト負担の抑制を図る狙いとみられる。
一方で、アルミ製リソグラフィプレートや鉄製ラックなど、従来対象外だった製品が新たに関税対象に追加されており、制度の抜け穴を防ぐ意図も示されている。また、米国産素材使用の認定基準については、従来の95%以上から85%以上へと引き下げられ、国内素材の利用促進を図る形となった。
このほか、一部の産業機械については企業活動への影響を踏まえた一時的な調整措置が講じられている。なお、本措置は2026年6月8日に発効し、一部の軽減措置は2027年末までの時限措置とされている。
[ロシア/石油製品の統制を強化]
6月1日から11月30日まで、ロシア政府は航空燃料(ジェット燃料)の輸出を全面的に禁止する措置を決定した。本措置は国内市場の安定確保を目的とするが、その背景にはウクライナによるドローン攻撃等に伴う製油所被害があり、国内の精製能力低下が主因とみられる。結果として輸出余力が縮小し、内需優先の政策転換が進行している。ロシアはこれに先立ちガソリンやディーゼル燃料でも輸出規制を実施しており、石油製品全体で統制が強まっている点が特徴である。もっとも、航空燃料の世界市場におけるロシアのシェアは限定的であるため、単独での供給影響は小さい。ただし、中東・アジアにおける需給逼迫(ひっぱく)と重なり、価格上昇圧力を補強する要因となる。一方、ロシア側では外貨収入減とエネルギーインフラの脆弱性が顕在化しており、中期的な供給リスクとして注視が必要である。
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