デイリー・アップデート

2026年6月19日 (金)

[OPEC長期予測公表、石油需要ピーク論をけん制] 

6月18日、OPECは石油需給の長期予測『World Oil Outlook 2026』を公表した。OPECは世界のエネルギー需要増大に対応するには、すべてのエネルギー源が必要だとして、これまでと同様、あるいはこれまで以上に、国際エネルギー機関(IEA)の需要ピーク論をけん制している。

 

ハイサム・アルガイス(Haitham Al Ghais)事務局長が冒頭で列挙したポイントは6点。

①エネルギー安全保障と近年の政策アプローチ(特にネットゼロ目標関連)との不整合への懸念が高まり、エネルギー安全保障・排出削減・持続可能な開発のバランスをとる必要性が再認識され、政策の枠組みが再評価されている。

②世界の一次エネルギー需要は2050年までに23%増加し、その伸びの大半は新興・途上国が担う。

③需要増に対応するには利用可能なあらゆるエネルギー源が必要で、石油需要は2050年までに日量1億2,400万バレルへ増加し続ける。

④炭素回収・利用・貯留(CCUS)や大気直接回収(DAC)など排出削減技術への投資が重要。

⑤あらゆるエネルギー源・技術への大規模投資が必要で、石油部門だけでも2026~50年に17.7兆ドルの投資が必要。

⑥同報告書はエネルギー市場の将来を巡る議論の基盤として包括的な見通しを提供する。

 

石油需要は2025年の日量1億510万バレルから2030年に日量1億1,330万バレル、2050年に日量1億2,400万バレルへ増加すると予測。中国では再エネシフトが進んでいるが、入手しやすさ(affordability)も重要となるなかで欧米におけるEVの伸びが鈍化、新興国需要は拡大しているとして、2050年予測は前年の日量1億2,290万バレルから上方修正された。また、非OPEC+の供給増加は2030年までに日量410万バレルと需要増の半分程度にとどまる見通しで、米国タイトオイル(シェール)生産は2025年にピークに達した可能性があると指摘した。さらに、2030年代には非OPEC+の供給増勢が鈍化する一方で需要拡大が続くため、OPEC+の役割は相対的に高まるとした。精製能力は2030年までに日量490万バレル増加するものの、市場は中期的に引き締まり、精製稼働率は2025年の80.8%から2030年に82.7%へ上昇すると見込んでいる。

[EU/航空規制] 

2026年6月、EUにおける航空旅客の権利の全面的な見直しが、欧州理事会と欧州議会において最終合意に達した。これは、2013年から停滞していた改正案件であり、乗客の保護と航空会社の運営状況のバランスを取ることを目的としている。法的修正を経て2027年に発効する見込みとされる。

 

今回の改正の最大の焦点は、機内持ち込み手荷物に関する価格の透明性の向上が図られる点である。新規則では、航空会社が提示するすべての基本運賃に、身の回り品1点と標準的な機内持ち込み手荷物1点の持ち込み権利を含めることが義務付けられる。一部の格安航空会社はこれまで手荷物を別料金としてきたが、今後は手荷物込みの料金を提示しなければならないとされている。

 

また、フライト遅延やキャンセル時の補償制度も明確化された。3時間以上の遅延の際、距離に応じて250~600ユーロの補償を受け取ることができる既存の権利は維持され、フライトの混乱発生時の食事提供義務なども明確化された。さらに、補償対象となる遅延発生時には、航空会社は到着後96時間以内に乗客へ電子的に権利を通知し、請求に対しては30日以内に回答することが義務付けられる。代替便の提供が3時間以内に行われない場合、乗客は自身で手配した費用について、元のチケット代の最大400%の払い戻しを請求可能となる。

 

このほか、障害を持つ乗客や妊婦、単独で旅行する子どもなどの支援を要する人々に対する保護が強化され、追加料金なしで家族と隣の席に座る権利などが保障される。また、航空会社が補償を免除される場合の定義や立証責任も明確化されるなど、旅客の権利が包括的に強化される内容となっている。

[米国・イラン/両大統領が暫定合意に署名] 

6月17日、トランプ米大統領とイランのペゼシュキアン大統領は暫定合意の覚書に署名し、停戦延長とホルムズ海峡の再開で正式に合意した。当初は6月19日にスイスで正式な署名式が開催される予定だったが、すでに両大統領による署名が完了したことを受け、イラン外務省報道官は、スイスでの署名式について再検討する可能性を示唆している。スイス外務省は、協議は予定通り行われる見通しとしている。今回の合意は即時発効しており、今後60日間にわたり、核問題や対イラン制裁の解除などを巡る最終合意に向けた交渉が進められる。

 

今回公表された合意によれば、第一段階として、レバノンを含む全戦線での戦闘終結、米国による海上封鎖の解除、ホルムズ海峡の再開、イラン産原油輸出に対する制裁免除、凍結資産の解放などが盛り込まれている。一方、核問題については、「イランは核兵器を保有しない」との原則を再確認するにとどまり、濃縮ウランの処分方法や今後の核活動のあり方については、今後60日間の交渉に委ねられた。注目されていたイランの弾道ミサイル計画や、地域の親イラン武装勢力への支援については、今回の覚書には盛り込まれていない。

 

また、合意には少なくとも3,000億ドル規模のイラン復興・経済開発計画も含まれている。これは戦争賠償ではなく民間投資基金として構想されており、エネルギー、物流、製造業、輸送インフラなどへの投資が想定されている。さらに、将来的な最終合意が成立した場合には、米国による対イラン制裁の全面解除や凍結資産の解放も視野に入る。

 

しかし、この暫定合意を巡っては米国内外で批判も強い。トランプ政権は当初、「イランの完全降伏」「核計画の全面解体」「弾道ミサイル能力の排除」「代理勢力への支援停止」などを目標に掲げていたが、今回の覚書にはそれらがほとんど反映されていない。このため、共和党内の強硬派やイスラエルからは、「イランへの譲歩が大きすぎる」との不満が出ている。特にイスラエルは、イランが60日間の交渉期間を利用して軍備を立て直したり、核開発を進展させたりする可能性を警戒している。

 

さらに、ホルムズ海峡の通航無料化は60日間に限定されており、その後については「イランがオマーンと協議し、ホルムズ海峡の将来的な管理および海上サービスの枠組みを定める」と規定されている。このため、将来的に何らかの形で通航料が導入される可能性も否定できない。イラン側交渉責任者のガリバフ国会議長は、今回の合意を「米国の失敗」と位置付け、自国の主権と地域的影響力を維持したまま経済的利益を獲得したと主張している。

 

総じて今回の合意は、戦争再燃を回避し海上交通とエネルギー市場の安定化を図るための暫定的な枠組みと位置づけられる。原油価格は合意を受けて大幅に下落したものの、核問題や制裁解除、ホルムズ海峡の将来的な管理体制など、多くの重要課題は未解決のままである。今後60日間の交渉が、中東情勢の行方を左右する最大の焦点となろう。

[ジンバブエ/大統領任期延長] 

6月18日、ジンバブエ国民議会(下院)は大統領の任期を5年から7年に延長する法案を2/3以上の賛成で可決した。現在、エマーソン・ムナンガグワ大統領が2023年から2期目の大統領職を務めているが、上院で可決されれば、同氏の任期が2030年まで延長されることとなる。上院80議席のうち、ムナンガグワ氏が率いる与党「ジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線(ZANU-PF)」の保有議席は33議席と過半数に届かないが、15議席を有する「伝統的指導者」がZANU-PF支持に回るため、上院での可決は濃厚とみられている(6月18日付、ロイター通信)。現在83歳のムナンガグワ氏は、この憲法改正を口実として自身の任期を「リセット」し、2030年以降も最長でさらに2期・計14年にわたり権力に居留まり続けようとしているとの見方が強い(6月18日付、FT紙)。

 

ムナンガグワ氏は、ジンバブエの白人少数支配に対する独立闘争を故・ロバート・ムガベ前大統領と共に戦った人物で、1980年の独立以降、37年にわたり大統領を務めたムガベ氏の最側近の一人だった。しかし、2017年に晩年を迎えたムガベ氏(当時93歳)との関係が悪化。ムガベ氏が自身の後継として国民から不人気な妻・グレース氏の支持を鮮明にし、当時副大統領だったムナンガグワ氏を解任。これに対して軍部のムナンガグワ氏支持派がムガベ氏に対する事実上のクーデターを起こし、ムガベ氏を辞任に追いやった。2018年の大統領選に出馬したムナンガグワ氏は得票率50.8%の僅差で勝利し、2023年の大統領選でも再選を果たした。しかし、ジンバブエは2013年の憲法改正で大統領の任期を最大2期計10年としていたことから、ムナンガグワ氏の任期は2028年で終了することが決まっていた。そうした自身の退任時期を見据えての今回の大統領選の任期に関する憲法改正は、カメルーンのビヤ大統領(92歳、8期目)、ウガンダのムセベニ大統領(81歳、7期目)、赤道ギニアのンゲマ大統領(84歳、6期目)、コートジボワールのワタラ大統領(84歳、事実上の4期目)の動きに追随するものとみられている。今回の法案では、大統領の選出方法をこれまでの直接国民投票ではなく、議会が選出する提案も盛り込まれていることから、与党の議席占有状況を踏まえると、ムナンガグワ氏の勝利はさらに容易になる見込みだ。

[中国/データ安全評価弁法] 

6月18日、中国国家インターネット情報弁公室(CAC)は「ネットワークデータ安全リスク評価弁法(方法)」を発表した。同弁法は8月20日から施行される。データ安全法や個人情報保護法の下で求められてきたリスク評価制度の運用ルールを具体化している。中国当局は、企業の負担軽減と制度の透明化を目的とすると説明しており、実際に企業にとってはコンプライアンス対応の予見可能性が高まる側面がある一方、従来からのリスクを改めて認識させる内容ともなっている。

 

新たに発表された方法において、「重要データ」を扱う事業者に対するリスク評価の手続きは統一された。企業は原則として自社で評価を実施でき、必要に応じて第三者機関へ委託することも認められる。また、既存のサイバーセキュリティや等級保護制度との重複を減らす方針も示されており、従来よりも当局の要求を満たすために必要な対応が明確になった。このため、企業にとっては、手続き面での負担軽減につながるとの評価もみられる。

 

一方で、この規則は企業が従来から認識していた中国特有のデータリスクを改めて浮き彫りにした。規則では、CACだけでなく公安機関や国家安全部なども、企業が提出したリスク評価報告の内容を検証できる。さらに、当局が国家安全や公共利益に関わる重大なリスクがあると判断した場合には、政府が認定した第三者機関による再評価を命じることができる。その際、企業は評価担当者に対してシステム、データ、設備、ログ記録などへのアクセスを提供する義務を負う。

 

もっとも、これは国家安全機関に新たな権限を与えたというより、既存の権限を制度上明文化した側面が強いとみられる。中国では既にデータ安全法や反スパイ法などに基づき、国家安全上の理由があれば企業に対して情報提供や調査協力を求めることが可能とされている。今回の規則は、その枠組みをデータ安全評価制度の中にも組み込み、手続きを明確化したものといえる。

 

外資企業にとって最大の論点は、「重要データ」の範囲が依然として広く曖昧な点と、中国事業とグローバル事業のデータ連携である。中国法人が本社と研究開発データや顧客情報を共有している場合、当該データが中国当局による評価や調査の対象となる可能性がある。そのため、多国籍企業の間では近年進められてきた「China for China」、すなわち中国事業のデータやシステムを本社から分離する動きがさらに加速するとみられる。

[メキシコ・ブラジル/競争力ランキングの下落] 

IMDビジネススクールが公表した2026年の世界競争力ランキングによると、メキシコは70か国中62位となり、前年から7順位下落した。過去4年間は55位前後で安定していたため、今回の低下は一時的な変動ではなく、構造的な悪化を示している。ランキング上位にはシンガポール、香港、スイスが並び、続いて台湾やアラブ首長国連邦が位置している。この指標は統計データと企業経営者への調査を組み合わせて算出されており、経済の実態とビジネス環境の両面を反映している。

 

メキシコの特徴は、民間経済の強さと政府・制度面の弱さが対照的に現れている点にある。労働市場は世界12位と高評価で、失業率は2.5%未満と低く、長期失業もほとんど見られない。貿易面でも輸出額は約6,650億ドルに達し、世界11位の規模を誇る。さらに、外国直接投資(FDI)の流入も引き続き活発であり、北米市場、とりわけ米国との強固なサプライチェーンに支えられている。

 

しかし、こうした強みを打ち消しているのが政府部門と制度の弱体化である。政府効率は67位に低下し、財政赤字はGDP比で約5%に達した。法の支配は69位、汚職関連も68位と極めて低い。これらの要素は企業の長期投資判断に直結するため、競争力全体を押し下げる要因となっている。さらに、生産性も1年間で20位下落し、設備投資の伸びも鈍化した。加えて、インフラやデジタル技術の整備も遅れており、特にAI分野の人材準備は最下位評価であった。低コストの労働力や米国との近接性といった基礎条件は依然として魅力的だが、司法制度や規制の不透明さ、財政の不安定さは、長期投資を行う際の大きなリスクとなっている。

 

一方、ブラジルも同ランキングで65位と低迷し、前年から7順位下落した。こちらも4つの評価軸すべてで悪化している。ブラジルの問題は、教育の質、資本コスト、企業負債といった基礎条件が極めて弱い点にある。実質金利が高く、資金調達コストが世界でも最も高い水準にあるため、企業の投資意欲を抑制している。

 

ただしブラジルは、雇用創出では世界5位、再生可能エネルギー比率も5位、FDI流入は7位、起業活動も上位と一定の強さも維持している。構造的な問題を抱えながらも、需要や資源などが投資を引き寄せている。

 

グローバル経済が分断の方向に進む中、安定した制度や政策の一貫性はこれまで以上に重要になっているが、メキシコとブラジルは両国とも、投資先としての潜在力は高いものの、持続的な成長に結び付ける法制度の強化、教育改革、財政規律、投資環境の改善といった改革が求められている。

 

中南米内での位置づけも変化している。チリは43位で依然として地域首位に立つ一方、メキシコはアルゼンチン(58位)、コロンビア(59位)、ペルー(60位)にも後れを取る形となった。経済規模では地域第1、2位であるにもかかわらず、この順位は相対的な競争力の低下を示している。規模の優位性よりも制度の質が評価を左右していることが明確になったといえる。

[日本/貿易統計(5月速報値)] 

6月17日、財務省は5月の貿易統計(速報値)を公表した。輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は▲3,786億円と、2026年1月以来4か月ぶりに赤字に転じた。前年同月(▲6,625億円)と比べて、赤字幅は42.8%縮小した。輸出額と輸入額はともに、比較可能な1979年以降の5月として過去最高額となった。

 

輸出額は9兆5,116億円で前年同月比+17.0%と、9か月連続の増加。半導体等電子部品で+61.2%、自動車で+13.7%、非鉄金属で+46.8%。

 

輸入額は9兆8,902億円で+12.5%と、4か月連続の増加。半導体等電子部品で+55.0%、通信機で+48.0%、非鉄金属で+49.7%。一方、原粗油で▲28.5%と減少した。

 

原粗油の輸入量は473万キロリットル(▲57.3%)、輸入額は5,392億円(▲28.5%)で、輸入量の減少幅に対して輸入額の減少幅が小さく、単価が上昇している。輸入額を輸入量で割った輸入単価は1キロリットルあたり11.4万円。

 

また、輸入元として中東が減少する一方、米国・アジアが増加するなど代替調達の動きが見られる。地域別で見ると、中東からの輸入量は396万キロリットル(▲61.9%)、輸入額は4,458億円(▲37.3%)。米国からの輸入量は58万キロリットル(+24.0%)、輸入額は704億円(+128.8%)、ASEANからの輸入量は8万キロリットル(+66.2%)、輸入額は109億円(+250.9%)。

 

液化天然ガスの輸入量は396万トン(▲15.1%)、液化石油ガスは68万トン(▲16.4%)と減少した。

 

今後、高い仕入価格を販売価格に転嫁する動きや、価格転嫁が難しい場合には企業の利益幅が圧縮されることにより収益の下押し圧力となる可能性がある。

記事のご利用について:当記事は、住友商事グローバルリサーチ株式会社(以下、「当社」)が信頼できると判断した情報に基づいて作成しており、作成にあたっては細心の注意を払っておりますが、当社及び住友商事グループは、その情報の正確性、完全性、信頼性、安全性等において、いかなる保証もいたしません。当記事は、情報提供を目的として作成されたものであり、投資その他何らかの行動を勧誘するものではありません。また、当記事は筆者の見解に基づき作成されたものであり、当社及び住友商事グループの統一された見解ではありません。当記事の全部または一部を著作権法で認められる範囲を超えて無断で利用することはご遠慮ください。なお、当社は、予告なしに当記事の変更・削除等を行うことがあります。当サイト内の記事のご利用についての詳細は「サイトのご利用について」をご確認ください。

30人が「いいね!」と言っています。