デイリー・アップデート

2026年7月7日 (火)

[世銀/アンデス部門設置] 

世界銀行は7月1日、世界銀行はアンデス諸国を対象とする新たな地域部門を設置した。この部門は、ボリビア、チリ、コロンビア、エクアドル、ペルー、ベネズエラの6か国における世界銀行の戦略と融資業務を一元的に担うとされる。対象国に対する現在の融資残高は合計で約93億ドルに達しており、道路や電力網といったインフラ投資から、財政が厳しい局面での各国政府への資金提供など幅広い分野をカバーしている。

 

今回の組織再編は単なる内部構造の見直しではなく、世界銀行の運営方針の変化を示しており、従来のように国ごとに個別対応する体制から、複数国をまとめた地域単位で専門知識や資金を柔軟に配分する体制へ移行する。この変更により、資金やノウハウをより迅速に必要な国へ振り向けることが可能になると期待されている。

 

ただし、これら6か国は経済構造や安定性の面で大きく異なる。チリは銅やリチウムといった資源を背景に投資適格の信用力を持ち、資本市場も発達している。一方、ベネズエラは長期的な経済混乱からの回復途上にあり、ボリビアやエクアドルも外貨や財政の制約に直面している。コロンビアやペルーも政治的な不透明感と資源依存という課題を抱えており、それぞれ事情は大きく異なる。それでも、世界銀行が部門を一つにまとめた背景は、アンデス地域に共通する課題として、インフラ不足、資源依存、制度面の未整備といった構造的問題を重視していることが挙げられる。また、地域全体では低成長が課題となっており、多くの国が成長の加速を必要としているものの、長期資金を安定して供給できる主体は限られているという事情もあった。

 

世界銀行の融資は単なる資金供給にとどまらず、制度改革や政策の方向性を伴うことが多い。今回の新体制により各国への支援はより迅速かつ的確になる可能性があるが、経済の成熟度や政治状況が大きく異なる国々を一括管理する難しさも伴う。特に、安定したチリと脆弱な国々との間で、どのように資源配分や政策対応を調整するかが重要な課題となる。今後、どの国や分野に優先的に融資が行われるのか、どのような改革が条件として求められるのかといった点が注目され、アンデス地域を注視する投資家にとっては、初期の投融資判断が、世界銀行の中長期的な戦略と市場の方向性を示す重要なシグナルとなるとみられる。

[米国/人口動態] 

ニュースレター「USAFacts」より米国の人口動態の話題。独立宣言署名と建国250周年を迎えた米国の2025年の人口は3億4,180万人。中国、インドとはだいぶ差があるのであまり意識されて語られることはないけれど、世界で3番目に人口が多い。1900年と比べると4.5倍になっている。

 

人口増は続いているものの、出生率の低下、高齢化、移民パターンの変化で最近では増加ペースが鈍化している。パンデミック前は自然増が人口の増加をけん引してきたが、2020年以降は移民がそれを主導している。2024~25年は移民で126万人増加した。

 

出生率は鈍化している。一般出生率(15~44歳女性の1,000人あたりの出生数)は1924年に110.9人だったが、2024年は53.8人と半分以下に低下。世代別では30~34歳で93.7人となっているように、社会進出が進んでから出産する傾向が強まっている様子。

 

国内で最も多い年齢層は65歳以上で全人口の18.9%を占めている。つまりほぼ5人に1人。当然のことながらこの層は増加し、2025年の6,500万人から2035年には7,700万人まで増加していく。次に多い年齢層は25~34歳、35~44歳と続いており、やや歪な構成となっている様子もわかる。

 

人種では1990年には75.6%が白人かつ非ヒスパニックということだったが、その比率が低下して、57.5%まで低下している。他方でヒスパニックの割合が同様に9.0%から20.0%へと増加しており、米国内では2番目に大きな人種・民族グループとなっている。ほかでは黒人12.6%、アジア系6.7%、先住民を含むその他が3.2%という構成となっており、米国内では分断が進んでいるとの主張の一方で人種では多様化が進んでいる。

 

州別に多い順ではカリフォルニアが3,940万人、テキサス3,170万人、フロリダ2,350万人。逆に少ない順ではワイオミング58.8万人、バーモント64.4万人、アラスカ73.7万人。ちなみに、テキサスが首都圏、ワイオミングが鳥取、バーモントが島根、アラスカは福井くらいの人口イメージ。

 

米国でも例外なく、おひとり様が増えていて10人中3人が該当する。もちろん、若者だけでもない。最大の労働分野は教育・医療サービスで、約2,790万人が従事しており、雇用統計は昔よりもずっと景気との関係が薄いのではないかという私の疑念はこのあたりを起点にしている。

[ウクライナ侵攻、ロシア軍は再びキーウに大規模攻撃] 

ロシア軍は7月5日夜から7月6日未明にかけて、ウクライナ全土に対し弾道ミサイルや攻撃型無人機による大規模攻撃を実施した。ウクライナ側によれば、ロシアはミサイル68発、無人機351機を発射し、主な標的となった首都キーウでは集合住宅など10か所以上が被害を受け、13人が死亡、50人超が負傷した。さらに、周辺のキーウ州でも6人が死亡し、両地域の死者は計19人に達した。キーウでは7月1~2日にも大規模攻撃が発生しており、死者31人、負傷者102人を出している。

 

ゼレンスキー大統領は、無人機や巡航ミサイルの迎撃には一定の成果がある一方、弾道ミサイルへの対応力不足を認め、7日から開催されるNATO首脳会議に向けて米国製「パトリオット」(地対空ミサイル防空システム)を含む防空システムの追加供与を強く求めた。ロシアが近年、弾道ミサイルを多用する傾向が強まる中、ウクライナの防空能力強化が西側支援の重要課題として再浮上している。

 

一方、ロシア国防省は、今回の攻撃はウクライナによるロシア国内インフラへの攻撃に対する報復措置と説明し、キーウ周辺の軍需・エネルギー施設やドニプロペトロウスク州の軍用飛行場などを攻撃したと主張した。また同省は、ロシア各地でウクライナ軍の無人機519機を撃墜したと発表。ロシア石油大手ガスプロムネフチ傘下で西シベリア・オムスク州に位置する同国最大のオムスク製油所もドローンで攻撃を受け、火災が発生した。同製油所はウクライナ支配地域から約2,700km離れており、今回の攻撃はウクライナによる対露攻撃として最長クラスの一つとみられる。また、ロシア側も攻撃を受けたことを認めている。双方が軍事・エネルギー関連施設への越境攻撃を拡大しており、戦争の長距離化・消耗戦化が一段と進展していることを示している。

[ドイツ/予算案] 

ドイツ政府は、2027年の連邦予算案と2030年までの財政計画を閣議決定した。2027年の総支出は5,554億ユーロで、2026年の5,245億ユーロから増加。一方、新たな債務は1,187億ユーロに増加し、これにインフラや気候中立、防衛のための特別基金も含めると、2027年の新規債務総額は約2,000億ユーロとなり、経済界から懸念の声も上がっている。予算案は今後、議会審議にかけられることになり、通常であれば連邦議会は11月末に予算案を可決する予定。

 

主要な支出分野としては防衛費が大幅に増額され、2027年の中核予算における国防費は約1,097億ユーロと前年比で約33%増加し、2030年までに1,837億ユーロに拡大する予定。また、ウクライナへの軍事支援として2027年に116億ユーロが計上されている。さらに、老朽化した橋梁、道路、鉄道網などの修復に充てられる特別インフラ基金として、2027年に1,175億ユーロを投じる計画となっている。

 

財源確保と支出削減として、2019年までに形成された準備金から68億ユーロを取り崩すほか、コロナ借入金の返済を2033年から2060年に先送りするとしている。欧州の排出権取引から得られる27億ユーロの収入は、気候・変革基金(KTF)から予算に振り替えられる。社会保障分野では、年金保険で30億ユーロ、医療保険で18億ユーロ、住宅・両親手当の改革で9億ユーロの削減を見込んでいる。増収策として、プラスチック税の導入(10億ユーロ)やアルコール・タバコ税の増税(12億ユーロ)が計画されているほか、連邦各省の効率化により12億ユーロを節減し、行政機関の人員削減も進められる。

[マクロン大統領のシリア訪問とNATOサミット] 

マクロン仏大統領は、トルコで開催されるNATO首脳会議に先立ち7月6日にシリアを訪問し、シャラア大統領との会談を実施する。2024年のアサド政権崩壊後、西側の国家元首によるシリア訪問は初めてであり、フランス大統領としても2009年のサルコジ氏以来となる。

 

今回の訪問は、シリア新政権の国際社会への復帰を後押しする動きと位置付けられる。マクロン氏は、少数派を含む多様な共同体を尊重する「自由で多元的なシリア」への支持を表明し、シャラア政権に対して女性や少数派の保護、民主的統治への移行を求める見通しである。一方、シャラア氏には、旧アルカイダ系組織との関係を持つ過去があり、西側諸国には依然として警戒感も残る。

 

今回の訪問には、トタルエナジーズやCMA、CGMなど仏企業幹部も同行しており、シリア復興や投資機会も主要議題となる。ただし、治安や制度面の不透明さから、フランス企業は本格的な復帰には慎重な姿勢を崩していない。シリア国内では治安が改善したものの、宗派間衝突、クルド勢力との緊張、IS関連のテロが続いている。マクロン氏は、対IS協力やフランス人ジハーディスト問題についても協議するとみられる。

 

一方、7月7、8日にトルコの首都アンカラで開かれるNATO首脳会議では、ウクライナ支援、防衛費増額、イラン戦争後の中東安定、米欧関係が焦点となる。トランプ政権は加盟国にGDP比5%の防衛支出を求めており、欧州との摩擦が強まっている。開催国トルコは、NATO内での存在感を高めると同時に、シリア、黒海、東地中海をめぐる地域大国としての立場を固めようとしている。さらに、米国によるトルコへのF-35関連供与をめぐっては、イスラエルやギリシャが反発しており、NATO内部の力学にも影を落としている。

 

今回のマクロン大統領によるシリア訪問とトルコでのNATO首脳会議は、アサド後のシリアの国際復帰、トルコの地域的台頭、米欧同盟の再調整、そしてイラン戦争後の中東秩序をめぐる重要な節目となる。

[ソマリランド・UAE/軍事基地] 

7月6日、仏ル・モンド紙は独自の衛星画像解析により、ソマリランドのベルベラ空港の軍事向け拡張が本格化していると報じた。同紙によると、1970年代にソ連によって建設された同空港の滑走路は2017年にアラブ首長国連邦(UAE)がソマリランドと軍事協定を締結したのちに改修が行われたが、特に2025年10月以降に拡張が進められているとのこと。滑走路の南側少なくとも3か所で大規模な掘削工事が進行中であり、それらは弾薬や燃料を貯蔵する地下格納庫であるとの検証結果を示している。また、衛星画像から確認できる複数の盛り土は防空システムの設置を計画しているものだと指摘している。

 

国連未承認国家であるソマリランドは、1991年以降、ソマリア連邦共和国からの独立を求めている。アフリカ連合(AU)の主要原則である「領土保全の保証」の観点から長く独立の支持を得られない状況が続いてきたが、紅海とアデン湾を結ぶ「チョークポイント」に位置する戦略的重要性から、UAEは過去10年にわたりソマリランドへのアプローチを強化してきた。UAEの大手港湾運営会社・DPワールドは2016年にベルベラ港の30年間のコンセッション契約をソマリランド政府と締結。大型のコンテナ船が着岸可能な深水港を整備し、ベルベラ経済特区を併設するなど近代化を進めてきた。同港には軍艦や空母を受け入れ可能な海軍ふ頭が建設されたことから、ベルベラ空港の軍事拡張をあわせUAEはソマリランドでの空・海の軍事能力を増強させている形だ。

 

また、ル・モンド紙はUAEがベルベラ港の拡張を進めた時期は、まさにイスラエルが2025年12月にソマリランドを国連承認国家として初めて国家承認した時期を符合していると指摘。イスラエルは、イランとの協力関係を示すイエメンの武装勢力フーシ派対策の観点から、イエメンの対岸にあるソマリランドの戦略的重要性を認識しているとみられている。また、UAEおよびイスラエルとの同盟関係を有する米国はジブチに大規模な米軍基地「キャンプ・レモニエ」を有しているが、2017年に中国が初の国外軍事施設をジブチに設置して以降、中国の基地が近すぎることを倦厭(けんえん)。代替拠点を模索する中で米アフリカ軍司令部(AFRICOM)もソマリランドのベルベラを頻繁に訪れている点もル・モンド紙は指摘している。

[フィリピン/ドゥテルテ副大統領の弾劾裁判] 

7月6日、フィリピン上院は、ドゥテルテ副大統領の弾劾裁判を開始した。フィリピンの憲法上、上院議員24人のうち3分の2(16人)の賛成がないと、弾劾を成立させることができない。24人のうち、マルコス大統領を支持するマルコス陣営に所属する議員は11名、ドゥテルテ元大統領及び副大統領を支持するドゥテルテ陣営の議員は11人、残り2人はどちらの陣営にも所属していない。ドゥテルテ派の上院議員のうち、デラロサ氏・エストラーダ氏及びマルコレタ氏が各々国内逃亡・汚職疑惑を受けて逮捕されており、実質的に裁判に参加できない形である。ドゥテルテ副大統領を弾劾したいマルコス陣営としては、弾劾成立に必要な賛成数を14人もしくは15人に引き下げることを狙っていた。他方で裁判初日にエスクデロ裁判長が、弾劾成立には16人の賛成が必要であると明確に示した。仮にマルコス陣営の議員全員に加え、いずれの陣営にも属さない2名が弾劾に賛成した場合も賛成数は13名に留まり、16人には達しない。そのため、弾劾成立は困難との見立てが多い。ドゥテルテ副大統領は2028年の大統領選挙への出馬を希望している。直近の世論調査でも同氏の支持率は35.9%と、他の候補者(レニ・ロブレド、18.5%)を大きく離している。弾劾が不成立となった場合には、同氏が大統領に選出される可能性が一層高くなる。

 

他方で仮に弾劾が成立しない場合も、裁判の過程で同氏による汚職の深刻さが明らかとなった際には支持率が低迷することが考えられる。国民の一部は、インフレによる生活苦が続く中でも汚職により摘発されたり、政治闘争を行ったりしいるドゥテルテ・マルコス両陣営の政治家に対して失望感を抱いているとの指摘もある。今回の弾劾裁判では、ドゥテルテ副大統領がマルコス大統領の暗殺を示唆したことに加えて、機密費不正使用や贈収賄の有無も争点となる。裁判の過程で副大統領による贈収賄が発覚した場合には支持率が低下し、ひいては2028年の大統領で敗北する可能性もでてくる。

[中国/太平洋でSLBM発射] 

7月6日、中国人民解放軍海軍は、戦略原子力潜水艦から太平洋の公海上に向けて潜水艦発射型弾道ミサイル(SLBM)1発を発射した。中国の発表によれば、ミサイルは訓練用模擬弾頭を搭載し、予定海域に着弾した。中国側は、通常の軍事訓練の一環として実施したものであり、特定の国や目標を対象としたものではなく、関係国にも事前通知を行ったと説明している。発射されたミサイルの種類は公表されていないが、新型SLBM「巨浪3(JL-3)」である可能性が指摘されている。JL-3は射程1万km以上とされ、中国近海や西太平洋からでも米本土を攻撃可能とされる。

 

中国は、陸上発射型ミサイル、戦略爆撃機、潜水艦発射型ミサイルから成る「核の三本柱(核の三位一体)」の整備を進めており、2024年にも陸上発射型大陸間弾道ミサイル(ICBM)を太平洋に向けて発射した。今回のSLBM発射は、とりわけ生存性の高い海洋核戦力による「第二撃能力」、すなわち核攻撃を受けた後でも報復攻撃を実施できる能力を誇示する狙いがあったとみられる。

 

戦略的には、米国をけん制する意味合いが大きい。台湾海峡や南シナ海をめぐる対立が続くなか、中国は米国に対し、中国との軍事衝突には核エスカレーションのリスクが伴うことを認識させることで、米軍の介入を抑止しようとしているとみられる。また、米国主導の多国間軍事演習「リムパック」がハワイ周辺で実施され、30か国以上が参加していたことや、豪州が同日フィジーと防衛協定を締結したことに対する対抗的なメッセージという側面も指摘されている。中国メディアはリムパックを「挑発的」と批判しており、豪州による太平洋島しょ国への安全保障関与の強化についても、中国の影響力拡大を抑制する動きと受け止めている。

 

国内向けには、習近平指導部による軍近代化の成果を示す狙いもある。人民解放軍では近年、汚職摘発や幹部粛清が相次いでおり、戦略部隊の能力と信頼性を内外に示す意図があるとみられる。

 

一方、日本は中国の軍事活動の活発化に対して「重大な懸念」を表明し、再考を求めた。豪州も、中国の軍拡は透明性や意図に関する説明を欠き、地域の不安定化を招くとして批判したほか、ニュージーランドも懸念を示した。NATOのルッテ事務総長も、中国の軍事力増強への警戒を促し、インド太平洋と欧州の安全保障は相互に密接に結び付いていると述べた。これに対し、中国側は「過度な解釈は避けるべきだ」と反論しているが、今回のSLBM発射は、中国の核抑止力強化と米中間の戦略的競争の深まりを象徴する出来事として受け止められている。

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